訪日旅行、各国市場の現状-回復の見込みを探る-VJトラベルマートより
原発問題より深刻なのは円高
セラーの積極的なプロモーションに期待の声
しかし、原発以上に回復を阻害する要因となっているのが、円高だ。今回話を聞いたセラー、バイヤーともに「震災というより円高の影響が大きい」という声が圧倒的に多い。
米国ハワイ州にあるE.S. インターナショナルのツアーマネジャー、サミュエル・クォック氏は「円高だと、旅行者も為替の影響がない国内などに行く」という上に、「わざわざ、今のタイミングで日本に行こうとしない」というのだ。こうした状況では、早期回復にブレーキがかかってしまう。実際、韓国人旅行者を取り扱う日本CHANNEL代表取締役のチェ・インキュ氏は「円高なら、中国など他の近いデスティネーションを選択する」と、競合の中国に旅行者が流れてしまっている現状を明かした。
この事態に対処するために、「例えば、懐石料理のかわりにラーメンを食べてもらうなど、コストがよりかからない旅行商品を見つけたい」と工夫に努めるバイヤーがいる。また、プロモーションを求めるバイヤーも少なくはない。シンガポールのウェイン・パン氏は、「航空券やホテルのプロモーションがあれば、料金的な部分がカバーできるので渡航者が増える」というが、その一方で「積極的にプロモーションをかけないところもあるように思う」と指摘する。
VJTM開会式で、海外バイヤー代表挨拶としてサイゼン・ツアーズのヘリオット氏は、「ここに来たのは、日本を顧客に売るのに熱意を持っているから。震災が日本のツーリズムに打撃を与えたことに心を痛めているが、引き続き回復に期待している」と激励の言葉を送った。また、「来年の桜のシーズンを売ることで、回復につなげたい」と前向きな中国の旅行会社の担当者の声もある。こうした熱意や日本への期待に応え、回復の速度を速めていきたい。
開会式、各国の支援への感謝を強調-安全性と送客を訴え
今回のVJTMは、東日本大震災からのインバウンド復興が目的のひとつだ。開会式で挨拶した観光庁長官の溝畑宏氏は「温かな支援により、日本は震災前のように回復しつつある。10月単月では前年比15%減まで回復した。来年は皆様のご支援と日本人の力で驚異的な回復を見せるだろう」と明るい展望を力強く語った。その回復を促進するため、11月から開始された訪日外国人旅行者に対する割引・特典セールである「JAPAN Big Welcome Campaign」や、2012年4月に日本がグローバル・トラベル&ツーリズム・サミットのホスト国となることをピーアールした。
このほか、開会式ではJNTO理事長の松山良一氏や開催地である横浜市市長の林文子氏も、世界中からの支援に対して謝意を表すとともに、バイヤーや海外メディアに対して「日本で経験したことをみなさまの国の人々に伝えてほしい」と、日本が安全で魅力あるデスティネーションであると強調。ただし、松山氏は「日本はある意味まだ回復途上ともいえる。ツーリズムは回復を支える強力な武器である。この苦境を乗り越えるためにも、日本に来てほしいと顧客を説得してほしい」と呼びかけた。