訪日旅行、各国市場の現状-回復の見込みを探る-VJトラベルマートより
原発の影響は一部で解消されず
不信感の払しょくを
しかし、一方で少人数グループを取り扱うイタリアのイル・ビアッジオのピエラ・トルチオ氏は「震災後、地震を理由にキャンセルする顧客はいなかったが、原発問題が浮上してからキャンセルが相次いだ」という。いまだにイタリアでは原発を恐れる人が多く、トルチオ氏自身も「なぜ日本に行くのか」と友人にいわれたそうだ。現在は訪日旅行の問い合わせ自体は増えているが、ブッキングには結びついていない。
原発の影響をほかのバイヤーにも聞いたところ、「原発の不安からいまだに関西以西にしか顧客が戻っていない」という中国のバイヤーもいた。BtoBで日本のホテルの客室を世界23ヶ国、80拠点で海外の旅行会社やツアーオペレーターに販売している、TUIのアコモデーション部門のHotelbeds Accommodation and Destination servicesのコントラクティング・マネージャーの嶋津尚希氏によると、現在は欧米を中心に、全体的に回復傾向にあるとしつつも「ドイツ、韓国など一部の国ではまだメディアで原発についてネガティブな報道があり、その影響を受けている」という。
トルチオ氏は「原発問題に関するメッセージがクリアではないように思う。日本政府からもっと明確なコミュニケーションがあれば」と感じている。バイヤーだけでなく、日本のセラー側からも「日本政府が安全宣言を出してくれれば」と同様の意見が聞かれた。米国の旅行会社担当者のなかには「国務省が(放射能について)何も発表しないのだから、安全だとみなしている」とポジティブな見方をしているバイヤーもある一方、他のバイヤーからは「日本政府が原発について何か隠しているのではないかという不信感を持つ顧客もいる」という声があることは無視できない。