グローバル人材を育てるオーストラリアの教育旅行-日豪ツーリズム学会

  • 2011年11月8日

映画で学ぶオーストラリア、教育旅行に高い動機付け

相模女子大学准教授の渡辺幸倫氏  相模女子大学准教授の渡辺幸倫氏は「フィルム・ツーリズムと教育旅行」と題した研究を発表。学習素材としてのオーストラリア映画の可能性について議論を展開した。渡辺氏はまず、オーストラリアは教育旅行のデスティネーションとして根強い人気があるものの、オーストラリアが高校の歴史教科書で登場するのはわずか4ヶ所だけだと指摘。そのため、オーストラリアの魅力が伝わっておらず、文化、歴史に対する理解も不足。さらに、学習教材の種類も極めて限られていると教育現場における現場を報告した。

 そのうえで、フィルム・ツーリズムをメディア誘発型観光と位置づけ、その潜在性の高さを主張。オーストラリアに関する映画を見ることで期待できる成果をあげた。学生に対しては、オーストラリアの具体的なイメージをつかみやすく、ホームステイ先などでもコミュニケーションのきっかけとして利用することが可能。教師に対しては、事前事後の学習指針を立てることができ、知識も発展していくとし、引いては日豪の観光産業の活性化につながると議論を進めた。

 さらに、学習素材として適切な映画を選択する必要があると指摘。社会的歴史的側面が描かれていること、内容に重層的な発展性があること、日本で入手しやすいこと、ロケ地が原則オーストラリアであることが大切だとした。その例として、『オーストラリア』『クロコダイル・ダンディ』『裸足の1500マイル』『ファイティング・ニモ』『誓い』などを列挙。特にメル・ギブソン主演の『誓い』では、オーストラリア国家のアイデンティティの形成やANZAC伝説のはじまりなどが学べると推奨した。

 「渡航前に映画を見れば、目的地としてのオーストラリアを再発見し、教育旅行の意義もさらに深まるはず」と渡辺氏。親しみやすく利用しやすい教材である映画を活用することで、オーストラリア教育旅行の活性化を訴えた。