アクセスランキング、1位は9月出国者数-訪日回復に向けて

  • 2011年10月28日

[総評] 今週は、日本政府観光局(JNTO)が取りまとめた9月の出国者数の速報値に関する記事が1位になりました。通常はそこまで多数のアクセスが集まる記事ではなく、LCCやタイの続報など注目度の高い記事を上回っていることから考えますと、どちらかのウェブサイトなどでご紹介いただいたのかもしれません。

 しかし、記事の内容を見ると9月の出国者数が6.7%増の164万5000人で、3ヶ月連続のプラス成長となったという喜ばしいニュースでした。1月からの累計でも0.3%増の1253万1000人で震災後初めて前年を上回っており、円高などの要因によって海外旅行需要が好調に推移していることが窺えます。

 一方、訪日旅行者数については、タイがプラスに転じるなど明るい話題もありますが、24.9%減と苦しい数字が続いています。JNTOによると、諸外国では依然として放射能への懸念が強いといいます。

 私は、今の日本が本当に安全なのかどうかについて、判断したり人に説明したりする力を持っていません。海外の方にも、一般メディアなどで見聞きしたことを「誰かがこう言っていた」と伝えることくらいしかできないでしょう。

 ですから本音としては、訪日旅行者数がこのまま順調に回復して大丈夫なのか、と心配に思う時もあります。自分でも安全かわからないものを人に勧めて良いものか、と思うわけです。自分で放射線量を計測してその数値の持つ意味を理解し、他人に説明できる方はそうはいないはずですから、世の中の多くの方が同じような状況なのではないでしょうか。

 とはいえ、観光はサービスの輸出産業であり日本経済にもたらす恩恵は非常に大きいですから、震災復興のためにも観光の回復は歓迎すべきものです。そして、国策としてインバウンド振興に取り組む場合にできることは、「○○だから来てください」という以外になく、今はこの○○が「安全」という言葉であるわけで、私は「安全」であることが本当かどうかわかりませんので、その是非を判断することはできません。

 危険かどうかについて分からないのであれば、観光の回復に取り組むべきではないという考え方もありえるでしょう。しかし、結局はいつ危険性が低くなるのか、その判断は誰がどのようにするのか、その根拠は、といった今と同じ課題が持ち上がってくる時にどう対処するのかを考えなくてはなりません。

 仮に政策としてインバウンド振興を続けることを前提とすれば、日本を信じてくださる方に来ていただくことになります。そしてその際には、安全であると「信じられる」情報に加えて「信じたくなる」情報が重要になるはずです。

 個人的な考えですが、人間というものはおそらく、結局のところ「信じたいものを信じる」ものだと思います。例えば、タイで洪水の被害が出ていますが、「バンコク市内の中心部は平穏」という報告と外務省の「渡航延期勧告」と、誰がどちらを信じるでしょうか。

 同じように、日本の安全性に関する情報の発信元が政府であっても何であっても、信じない方は絶対に信じず、日本に来ることもないでしょう。逆に、日本に来たいと思ってくださる方は、多少のリスクは理解した上で来てくださるはずです。

 安全性に関する情報とあわせて、私たち日本人の多くが(多少の不安感は抱きつつも)従来と変わらない生活を続けていること、観光の魅力は失われていないことなどを、具体的かつ丁寧にお伝えしていくことが必要なのではないかと思います。(松本)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2011年10月第5週:10月23日0時~10月28日18時)
第1位
9月の出国者数、3ヶ月連続増-訪日は24.9%減、減少幅縮小(11/10/23)

第2位
日本版LCCの可能性と課題、「空飛ぶ電車」の実現へ(11/10/24)

第3位
バンコク、渡航情報引き上げ-24日現在、市内への影響限定的(11/10/24)
タイ洪水で各社対応進む-バンコクツアー振替や11月以降の催行中止も(11/10/23)
バンコクツアー、洪水の影響で催行中止延長も-HISは通常通り催行(11/10/25)
航空各社のタイ洪水対応、払い戻しや変更など無料受付(11/10/25)

第4位
日本航空、チャーター好調、下期は100往復へ-個札販売開始(11/10/26)

第5位
HIS澤田会長、世界市場で競争力向上へ、HTBとオンライン強化(11/10/26)

第6位
約款に「柔軟性」を、取消料や旅程保証など議論-JATAシンポ(11/10/27)

第7位
HIS、業績予想を上方修正-経常利益は100億円達成の見込み、創業以来初(11/10/23)

第8位
関空、冬スケ便数が過去最高に-週620便、CZなど増便で(11/10/25)

第9位
エアアジア・ジャパン、成田/ソウルなど就航へ、事業許可を申請(11/10/27)

第10位
エア・カナダ、人気投票で旅行プレゼント-石田親子が冬の東部の魅力を紹介(11/10/26)