旅行業は「崖っぷち」-JATA金井会長、危機感示し人材育成訴え

  • 2011年9月29日

JATA会長の金井耿氏 日本旅行業協会(JATA)会長の金井耿氏は9月29日、JATA国際観光フォーラム・旅博2011の基調講演で、多くの旅行会社が業界環境の変化に対応しきれていない現状について、「旅行業が“曲がり角”に差し掛かっているという議論があるが、角をまがってもそこに(完成した)道があるわけではなく、むしろ崖っぷち」と強い危機感を示した。金井氏は「崖っぷちはまっすぐに進めば海に落ちる。右か左かに新しい道を見つけていかなければならない」と語り、各社が問題に真摯に向き合い取り組んでいく必要性を訴えた。

 一連の訴えは金井氏が「まったくの私見」と断った上で、会場に集まった旅行業界関係者に語りかけたもの。顧客のニーズの変化やサプライヤーの直販化、コミッション問題、インターネット技術の発展など諸課題に対して、業界全体に共通する答えはないとしつつ、「(各社にとっての)答えが必ず存在することを信じて、皆で取り組んでいくべき」とした。

 金井氏はまた、インターネットの浸透などにより消費者の知識が増す中で、これまでの業者間競争だけでなく、「消費者と業者の間の“競争”も起きていることを認識しなければならない」と言及。「我々は旅行のプロであり、本来はプロとアマチュアが競争するなどありえないこと」とし、「我々が不十分だからこんな状況になっている」と分析した。

 その上で、新しい道の可能性として、「ただ旅を組み立てるのではなく、旅をプロデュースする」ことが重要であると説明。そのためには「人材育成、研修、実践」のサイクルを再構築することが重要との考えで、「回り道に思えるかもしれないが、答えのないときほど原点回帰」が有効と語った。


▽開会式に秋篠宮ご夫妻臨席

鏡割りの様子。右手が秋篠宮ご夫妻

 JATA国際観光フォーラム・旅博2011の開会式には、秋篠宮ご夫妻が出席。秋篠宮様は、「本日、アジア最大級の旅の祭典であるJATA国際観光フォーラム・旅博2011が国の内外から多くの関係者を得て開催され、皆様とともに出席できましたことを大変嬉しく思います」と挨拶。その上で、「旅は、私達にとっての日常を非日常へと転換することにより、日々の生活を豊かにするとともに活力をもたらします」「国際観光フォーラム・旅博がひとつの契機となり、多くの人々が旅の楽しさや大切さを理解するとともに、新たな旅文化が創造されることを祈念します」などと話され、イベントの成功に期待を示した。