震災後の訪日旅行市場、来訪者や予約動向から探る-JNTO講演会
日本政府観光局(JNTO)は先ごろ、大阪と東京で賛助団体や会員企業を対象とした個別相談会を開催した。東京の個別相談会では講演会も催し、各方面から東日本大震災後の市場動向と今後の回復に向けた展望が語られた。このうち、北京大学研究員・英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニストの加藤嘉一氏や、エクスペディアホールディングス北アジア・ミクロネシア地区担当本部長のピーター・リー氏、JNTO理事の神保憲二氏の講演から、現在の状況と今後の見通しを探った。
事例から考える回復のタイミング
検索数では早期回復の兆候も
JNTO理事の神保憲二氏によると、震災直前の2011年1月と2月は、訪日旅行者数が861万人と過去最高を記録した2011年をしのぐペースで推移してきた。しかし、東日本大震災が発生した3月11日後は極めて厳しい状況となり、4月は対前年比62.5%減。1月から7月までの累計値は33.2%減の約340万人と、前年のおよそ3分の2にとどまっている。
回復の時期はいつ頃を見込んでいるのだろうか。神保氏は「地震、津波の被害に原発の問題が重なり合ったのは世界的にも例のない話。予測は難しいというのが本音」としながらも、今回の原発問題と同様に、健康被害が懸念された2003年のSARS発生時の事例を例に出した。香港、シンガポールではSARS発生時、外国人旅行者数が約7割減少。その後、ある程度の早期回復が見られたが、全面的に戻るまでは1年ほどかかったという。
同様に、エクスペディアホールディングス北アジア・ミクロネシア地区担当本部長のピーター・リー氏も、過去に世界で起こったテロや天災などを鑑み、完全回復には12ヶ月から18ヶ月を要するとみる。
ただし、エクスペディアの予約実績を元にしたデータによると、2011年1月と2月の実績を100%とし、4月から7月の実績と比較すると、北米は4月が34%、7月が60%、アジア太平洋地域は4月が27%、7月が79%、欧州は4月が22%、7月が53%と回復傾向にあることがわかる。さらに、月間7300万人の閲覧者を有するエクスペディアのサイトの検索データから消費者行動を分析すると、「宿泊施設や航空券予約の検索パターンを見てみると、日本の検索数はほぼ震災前の水準に戻ってきており、良い傾向も見られる」という。