小笠原村観光局、環境とホスピタリティ維持で誘客へ、世界遺産効果に期待
小笠原村観光局は7月下旬、旅行会社を対象にした小笠原諸島セミナーを、全国6都市で開催した。セミナーでは小笠原諸島の観光素材である自然の魅力とともに、小笠原ならではの特徴や片道25時間の航路によるアクセスを含めた送客のポイント、注意点を説明。小笠原専門のオペレーター2社を紹介しつつ、自社のビジネスに適うかどうか精査が必要な観光地であるとし、検討段階での相談を推奨した。
同観光局主任の根岸康弘氏によると、小笠原諸島の年間訪問客数は1万3000人から1万5000人。ダイビング客によって観光開発がはじまり、近年ではシニアのトレッキング客も増え、小笠原の良さを知ったリピーターが多い。また、教育旅行先としての注目も高まっており、先日は都内の私立高校200名規模を受け入れ、今後は都立高で初めての実施も予定されているという。
世界自然遺産登録を受け、今回のセミナーには従来の約4倍となる350社の問い合わせがあり、旅行会社の需要を感じるという。観光客増加に期待するも、自然環境とリピーターの支持が高いホスピタリティへの影響を考慮し、これまでどおりの規制を厳守して質を維持した誘客活動をしていく方針だ。一部の研究者によると環境保護との適正利用として年間5万人位の受け入れが可能という話もあるが、小笠原村では年間2万6500人を中長期的な目標としていく。
このほかセミナーでは世界自然遺産について、固有種率の高さと生物進化の歴史が見やすいことがその主な理由であると紹介。登録要件のコアな部分は陸の部分であるとし、必ずしも人気の観光素材と世界遺産がリンクしているわけではないことを強調した。また、アクセスが週1回の航路のため5泊6日・島内3泊の旅程が多く、実質の観光稼動が3日間という特殊な事情を説明。主な観光地は父島と母島だが、バストイレ共同の小規模民宿が主流であることや、母島の入島制限、島内移動手段などを説明し、添乗員付きツアーの場合は10名から15名程度で募集していることが多いとアドバイスした。
また、インバウンドは問い合わせがあるものの、言語表記など受入整備は万全ではない。ただし、歴史的に欧米やハワイからの移住者が住み、英語を話せる人もいることから前向きに対応していくとし、欧米系のバックパッカーや時間に余裕のある熟年夫婦などを対象に、日本在住者などからのクチコミ効果を期待している。
なお、空港建設については具体的な計画はなく、5年、10年先は現行どおり週1回程度の航路利用が続く見通しだという。