読者レポート:カンボジアはアンコールワットだけじゃない!
この10年間、SARS禍の2003年を除き、右肩上がりの入国者数を誇るカンボジア。2010年の海外からの訪問者数は、前年比16%増の250万8289人だ。そのうち、日本人数は15万1795人で、入国者全体の6%を占めている。日本人入国者数の12万7000人が観光目的で、その利用空港はシェムリアップが11万2000人とほとんどだ。ということは、日本人はアンコールワットにしか行っていない、と言える状況だろう。
カンボジア最大の観光スポットがアンコールワットであることには違いないが、他国のデータをみると、プノンペン空港の利用者数も入国者数の半数近くを示している。実際、プノンペン市内でもシアヌークビルでも、数多くの外国人ツーリストを見かける。日本の旅行会社の催行するカンボジアツアーでは、アンコールワット以外を紹介しているツアーを見かけないが、日本のカンボジア観光としては完全な片肺飛行と言え、あまりにももったいない。
筆者はカンボジア観光省の招聘を受け、今年2月13日から18日までの日程で、アンコールワット以外のカンボジアを見るチャンスを得た。プノンペンの訪問は12年ぶり。他のアジアの都市となんら変わらない治安の良さと、順調な経済成長ぶりに驚かされた。街はとにかく活気に溢れ、自信に満ちているようだ。もちろん、場所により、付き合う人により、安全とは言えないケースもあるがそれは世界中どこでも同じである。
今回、カンボジア観光省が紹介した場所は、メコン川を遡ったクラティアと南部シアヌークビルからカンポート、ケップに至る海沿いで、日本ではまだまだ知られていない観光エリア。今後のエコツーリズムやビーチリゾートとして日本人に今後プロモーションンされるべきところになる。4日間で1200キロメートルを走破しての旅ではあったが、思いのほかどこも道路が整備されており、快適なドライブであった。
●クラティエからカンピー
日本にゆかりのある希少な川イルカ
かつてメコン川には、川イルカが多数生息していた。イラワジイルカやカワゴンドウと呼ばれるこの川イルカは現在、絶滅危惧種に指定され、クラティエから15キロメートル上流のカンピー地区が保護区となっている。イルカはラオスとカンボジアの国境を挟んで双方に生息しているが、遭遇度からいうとカンボジア側のカンピーが確実だ。イルカは賢い。安全地帯を知っていて、このカンピーの周りに多くが生息している。そのため、世界中の自然愛好家、動物好き、イルカ好きのツーリストがやってくる。実は、メコン川のイルカ保護で大きな役割を果たしたのは日本のNGO組織で、その活動は内戦時代から始められていた。しかし、クラティエにやってくる日本人は少なく、ツアーは皆無のようだ。
プノンペンからクラティエは陸路340キロメートル。カンボジアの田園風景を眺めながらのドライブは我々日本人には珍しさもあり、飽きさせない。問題があるとすれば、クラティエでの宿泊施設がスタンダードクラスのホテルが1軒のみで、その他がゲストハウスレベルになってしまうことだろう。ツアーとして取り組む場合は早めのアクションが必要だ。
●カンボジアのビーチリゾート
昔から知られているシアヌークビル
プノンペンから陸路230キロメートル。快適なハイウェイが伸び、昔のイメージは払拭しなければならない。世界各国から多くの外国人旅行者が来ているのにも驚かされた。昔、ハイウェイのないパタヤへ大勢の日本人が来ていたことを思うと、シアヌークビルに来るのはさして苦ではないだろし、今のホアヒンよりは確実に楽だと思う。
問題があるとすれば、デラックスカテゴリーのホテルがまだ少ないことぐらいだ。しかし、キャパシティはピークを除けば不安はないようだ。ここに来る旅行者の多くは比較的スタンダードクラスのホテルをチョイスしている。デラックスホテルの「ソッカ・ビーチリゾート」があり、歴史に名を残す「インディペンデンス・ホテル」が復活しているのがうれしい。
シアヌークビルの郊外にリアム・ナショナルパークがあり、日帰りで本格的なエコツーアーを楽しむことができる。面積は2万1000ヘクタール。マングローブ地帯とジャングルが広がり、手つかずのビーチがある。ここは日本のJAICが自然保護と観光開発マネジメントを手助けしている。
●これからのカンポートとケップ
シアヌークビルからカンポートへは100キロメートルで、これも快適なドライブ。途中、フランス植民地時代から高原リゾートとして知られるボーコー国立公園の山並みが見える。
海に面したカンポートの街は、元々フランス統治時代からのリゾート地でもあったせいか、瀟洒な街並みを残し、ヨーロッパ人の旅行者を多く見かける。ローカルマーケットを覗き庶民の食生活を垣間見、のんびりと散策をするのも楽しそうだ。カンポート周辺は水産はもちろんだが、海岸地帯には塩田が広がり、内陸側には果物や胡椒などの豊かな農業地帯が広がる。カンポートの宿泊施設はゲストハウスになるが、この先にあるケップには外国人向けのリゾートやブティックホテルもオープンしてきている。
ケップはカンポートから25キロメートルほどの距離にあるビーチリゾート地区だ。ここはかつて富裕層向けの別荘やリゾート地帯だった。長年の内戦でそれらは廃墟と化してしまっていたが、最近の復興ブームでこのあたりもようやく本格的なリゾート地帯へと変貌を遂げようとしている。その中の一軒、ベルギー人オーナーが始めたクナイバンチャットを見学させてもらったが、カンボジアの60年代をコンセプトにした、ホテル好きにはたまらないブティックリゾートだ。
ただ一つ問題は、ここ一帯のビーチがあまりきれいではないということ。街側の海岸一帯の再開発工事が海を泥水のようにしているようで、開発が収まるまでこの状態が続くと思うと残念だ。カンボジアにも環境とのバランスを考えた開発ルールを求めたい。
今回、アンコールワット以外のカンボジアを見てきたが、旅行業界には日本の旅行者にも是非、紹介すべきと意見したい。旅行者にとっては身近なところにある興味津々のカンボジア。実際、旅行会社の手を離れたFITは、既にこのあたりの旅行をしている。
筆者:サンヨーインターナショナル 代表取締役 土橋告氏(文責)
メールアドレス:editor@travelvision.co.jp
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