ミキ・ツーリスト、海外事業に本腰、社長交代で-アジアを成長の基盤に
ミキ・ツーリストは6月21日、7月1日付で代表取締役社長の影嶋雅昭氏が会長に就任し、現取締役営業本部長の檀原徹典氏が後任に就く人事を発表した。21日の会見で影嶋氏は、中近東や北アフリカでの政情不安、東日本大震災と続いた現状が「非常にピンチだがチャンスにもなる」とし、そのためには檀原氏の48歳という若さや柔軟性が必要であったと説明。今後は檀原氏のもと、「日本から欧州」だけでなく、アジア発などの需要を取り込むことで成長をはかる。
ミキグループの市場別の取扱規模は、売上ベースで日本が2億5000万ユーロ、欧州が1億2500万ユーロ、アジアが7500万ユーロ程度で、合計は4億5000万ユーロ。これに対して、今後は合計1000万ユーロを目標とし、日本とアジアで3億から4億ユーロ、欧州で2億から4億ユーロをめざしている。
こうしたグローバル戦略について檀原氏は、これまでミキグループが創業以来、日本発の欧州旅行を中心に取り組んできたのに対し、近年は日本市場自体の大きな拡大が望めない中でアジア発の欧州や、欧州でのホテルのオンライン流通に力を入れてきたと説明。その上で、今後は「マルチデスティネーション、マルチマーケット」を主眼に、「(日本から欧州など)“線”のビジネスを“メッシュ型”に変えていく」方針だ。
▽アジア-影嶋氏が香港駐在で成長実現へ
最も大きな成長を見込むアジアは19年前から取り組んでいるが、特にこの2年は影嶋氏が営業活動を統括したことで、売上がそれ以前の倍になるなど急成長を遂げたところ。今後も、影嶋氏がミキ・ツーリスト会長およびミキグループ役員として香港に身を置き、さらなる拡大をめざす。
現在は香港、北京、上海、バンコク、クアラルンプール、ジャカルタ、台北に拠点を設置。今後は現地旅行会社との提携、フランチャイズなどによる販路拡大も視野に入れる。
アジア地域での受注増に向けては、これまでの日本市場での営業活動で培ったサービスの品質を武器にする考え。マドリッド支店長など海外赴任の長い檀原氏は、「携帯電話でもガラパゴスといわれるが、日本で求められるサービスの基準も高い」と語り、日本で求められるサービスは海外でも評価を受けると自信を示す。
また、アジア地域からの旅行者の手配をおこなうオペレーターが現状では小規模な会社であるケースが多いのに対して、ホテル側は直販化が進むにつれて取引先を絞る傾向にあるといい、結果的に「アジアでのミキグループの存在価値は上がる」と予測した。
▽日本-欧州以外も積極化、クルーズにも期待
日本市場での取り組みについて檀原氏は、「欧州だけでは数字を伸ばせない」とし、クルーズやアジア、ハワイ、インドなどに取り組む考えを説明。例えばハワイでは、日本人訪問者数が減る中で「中立なオペレーターの数が少なくなったため、旅行会社からの要望もあった」(影嶋氏)ことから、現地法人を設立して6月1日から営業を開始したところ。
また、クルーズについて影嶋氏は、航空座席数の減少が船旅にとって追い風になると分析。来年には約14万トンの「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」のアジア配船が決定しており、日本市場の活発化にもつながると期待した。