観光白書、日本人海外旅行者数は7.7%増
-23年度は震災復興に重点
政府は6月14日、「平成22年度観光の状況・平成23年度観光施策」(平成23年版「観光白書」)を閣議決定した。白書によると、2010年の日本人海外旅行者数は前年比7.7%増の1663万7000人と増加したが、観光立国推進基本計画で2010年までの目標とした2000万人は下回った。増加の要因としては、円高基調、オリンピックや万博などの世界的なイベントの開催、羽田空港の再国際化などを挙げた。
2010年の訪日外国人旅行者数も基本計画の1000万人には届かなかったが、26.8%増の861万1000人と過去最高値を記録。特に韓国が53.8%増の244万人、中国が40.5%増の141万人と大幅に増加した。また、2010年度の国民1人あたりの国内宿泊観光旅行回数と宿泊数は暫定値でそれぞれ1.3%減の1.56回と6.6%減の2.39泊となり、こちらも基本計画の目標には届かなかった。
今後の目標値については、東日本大震災の影響を踏まえて目標の見直しを進めていく方針。観光庁総務課企画室によると、夏の状況を踏まえ、秋頃から目標の具体的な検討に入り、2011年度中には次の5年の長期的な目標値を設定する考え。1年の短期的目標の設定も視野に入れ、検討していくという。
なお、2009年の国際会議開催件数は37件減の538件。このほか、2009年度の国内旅行消費額は6.4%減の22.1兆円、間接的な効果を含めた生産波及効果は48兆円、付加価値誘発効果は国内総生産(名目GDP)の5.2%の24.9兆円、雇用誘発効果は全就業者数の6.3%にあたる406万人と推計した。
▽2011年度の施策、震災復興にむけた取り組みを実施
2011年度の施策は、震災による観光需要の冷え込みに対し、国内観光旅行振興のための施策をスピード感を持って推進していく。観光は幅広い経済、雇用効果をもたらし、比較的早期に事業が再開できるという観点から、被災地域の早期復興に向けて、積極的に取り組んでいく考えだ。引き続きロゴを活用した観光振興キャンペーンを展開し、海外に対し正確な情報を発信することで訪日外国人の誘致をはかる。白書でも第1部に「東日本大震災の被害と復興に向けて」のテーマを追加で設定し、被害状況や国内旅行振興策について記述した。
2011年度の施策としては、観光地の国際競争力の向上と、そのための人材育成を挙げた。訪日需要取り込みのための施策としては、最重点市場である東アジア諸国への海外プロモーションの実施、受入環境水準の向上、日中韓三国間の観光交流と協力の強化などの取り組みの推進を列挙。また、観光旅行推進のための環境整備として、外航クルーズ船への日本寄港誘致も促進する。このほか、観光産業の事業者数や就業実態を明らかにするため、「観光地域経済調査(仮称)」の本格実施に向けた準備も進めていくとした。
なお、例年観光白書で設定しているテーマには、「観光に関わる地域産業の構造」を設定。今まで把握が難しかった地域における観光産業の量や売上、雇用などの規模、地域への波及効果を定量的に把握するため、北海道富良野市、三重県志摩市、長野県飯田市の3市で試験調査を実施。さらに、地域住民と地域への訪問者に観光に対する意識調査をおこない、両者のギャップを比較することで、当該地域で今後必要となる観光施策を分析した。