アクセスランキング、1位は米系運休−「花見自粛」に異議あり

  • 2011年4月2日
 今週は、米系航空会社2社が羽田線を一時運休するという内容の記事が1位になりました。5、8、10位にも運休の記事が入っており、地震発生後、外国航空会社を中心に航空路線が大きく乱れ続けていることから、皆様の注目も高かったのだろうと考えています。原発事故が収束しない限り通常運航の回復は難しいかもしれませんが、一部では成田線の直行便再開の動きも出ており、1日も早く落ち着いて欲しいと願うばかりです。また、2位に入った記事では、地震発生後からの影響や対応状況をまとめていますので、ここまでの振り返りとしてご覧いただければと思います。

 さて、ランキングとは関係ありませんが、今週はどうしても触れておきたいことがあります。それは、東京都知事の石原慎太郎氏が花見の宴会自粛を求めたという報道です。たしかに今は非常事態ですし、節電が求められる中で明々と照明をつけての夜桜見物が不適切という指摘は理解できます。しかし、直接取材したわけではありませんので石原氏の発言の真意はわかりませんが、桜を見ながらお酒を飲んで賑やかにすることを控えるべきかどうかには疑問を覚えます。

 日本人は、社会生活の中で「この場面ではこう振る舞うべき」と自らを律するとともに、他者にも同様の自律を求めます。要するに「空気を読む」ことを求められ、また求めるわけですが、その相互的な無言の圧力こそがいわゆる「横並び意識」ともいえます。この横並び意識は、今回の震災では被災者の冷静さや被災地の秩序などにつながり、海外からの賞賛を得ていますが、一方で現在のような状況下では質素、堅実、倹約といったベクトルに進みがちで、石原氏の発言はまさにそれを声に出していったものと考えられます。

 質素や堅実が間違っていると主張しているわけではありません。しかし、楽しいこと、愉快なこと、嬉しいことの自粛――当然のことながら、旅行も対象に含まれるでしょう――が、日本全体に、そしてひいては被災地復興にとってプラスになるとは考えられません。すでに他のメディアでも指摘されていますが、消費マインドの冷え込みにつながるためです。

 もちろん、好き勝手に大騒ぎをするべき状況ではないと思いますし、花見をする気分になれない方が無理にするべきとも思いません。ただ、「したい」のに「しない」、それによる弊害を懸念しています。お金を使うことも復興をめざす日本経済において重要なことですから、復興の妨げにならないのであれば是非すべきではないでしょうか。また、そもそも石原氏は自粛によって「連帯感」が生まれると発言されたそうですが、それは自粛によってしか生まれないものでしょうか。

 個人的には、むしろパッケージツアーの旅行代金の一部を義援金にまわすのと同じ発想で、「チャリティ花見」や「チャリティ飲み会」があっても良いのではないかと思います。連帯感があっても、沈鬱なムードのみでは前を向いて復興をめざそうとする意欲は湧いてこないはずです。不謹慎とのご批判も覚悟の上で、空気を読まずにあえて書きます。「楽しいこと、も、しましょう!」

 なお、トラベルビジョンでは、本日から業界内外からのメッセージやご意見を掲載していくことを決めました。新聞の投書欄のようなイメージです。本日のメッセージ(リンク)も、是非読んでいただきたい内容です。皆様も是非、現在の状況や課題のレポート、支援・復興に向けての取り組みなどを文章や写真でお寄せください。詳細は本日のメッセージの最下部でご案内しておりますが、「お客様のこんな一言に勇気づけられた」「こんなアイディアはどうだろう?」などどんな内容でも結構ですので、気軽に捉えていただければと思います。旅行業界全体で力を合わせて前に進めるよう、皆様のお声をお待ちしております。(松本)

※掲載後、すぐに2名の方からメッセージをいただきました。感謝申し上げます。皆様のメッセージもお待ちしております!(2011年4月2日18時40分追記)


▽日刊トラベルビジョン、記事アクセスランキング
(2011年3月第5週、4月第1週:3月26日2時〜4月1日18時)
第1位
米系2社、羽田線の自社便を一時運休、成田線も減便−DLは補完用の増便も(11/04/01)

第2位
東日本大震災、旅行業界へのインパクト〜復興へのスタートは現状把握から(11/03/28)

第3位
「JTB京阪トラベル」設立へ−JTBが事業譲受、共同出資で仕入や販売強化(11/03/30)

第4位
エクスペディアとエア・アジアが合弁会社、航空券独占販売へ(11/03/31)

第5位
日本航空、国際線で一部減便、機材小型化も−地震で需要低下(11/03/30)

第6位
HIS、被災者支援で長期海外滞在プラン提供−成田、羽田発着海外8都市で(11/03/29)

第7位
全日空、組織改正実施へ、「チーム制」導入で役割・責任明確化(11/03/30)

第8位
ガルーダとマレーシア航空、成田路線一部運休、経路変更も(11/03/30)

第9位
関空、夏スケジュールは過去第2位の週604便−外国航空会社が増加(11/03/28)

第10位
大韓航空、4月の日本/仁川線を一部運休−関西/清州線、札幌/釜山線も(11/04/01)