ITソリューション特集:コラム<ITソリューションの有効活用>(4)

  • 2010年12月8日
ITソリューションの有効活用で旅行ビジネスが変わる
コラム第4回:フラッシュマーケティングがもたらす新たなビジネスチャンス


 第3回でも触れたSNSの台頭や、「フラッシュマーケティング」と呼ばれるマーケティング手法の盛り上がりなどにより、オンライン販売における「売り方」や「売れるタイミング」に変化の兆しが出てきている。第4回では、この変化が旅行業界にもたらす販売チャンスの拡大についてお伝えしたい。


注目のフラッシュマーケティングとは

 最近、急激に増えているフラッシュマーケティングサイト。そこで販売される商品の限定性や割引率の高さなどで注目を集めている。フラッシュマーケティングとは、インターネット上で割引価格や特典がついたクーポンを24時間から72時間という期間限定の短時間で集客・販売する手法である。一見、安い価格での販売に目が行きがちであるが、単なる安売り以外の効果を産む新しいビジネスモデルなのだ。

 フラッシュマーケティングを用いたサービスで現在人気の高い「グルーポン」と「ポンパレ」は、短期間での、時間を限定した共同購入型のビジネスモデルを採用することで高い割引率を実現し、買う側のみならず売る側からも支持を広げている。サプライヤーは販売する目的でこのサイトに商品を提供するのであるが、宣伝効果や話題性の高いことを利用して他の自社商品にも目を向ける機会を作るといった、企業ブランドや商品認知の観点で実施されることも多い。

 旅行業界においては、ホテルや宿、移動手段のように在庫を持てないものを商品として持つ場合には、出来る限り適正な価格で売り切るのが理想だ。そのため、直前のタイミングでも価格を下げるなどしても商品に目を向けさせて、時間を限定して販売を促すことのできるこの手法は、旅行商品や旅行素材の販売と親和性が高い。間際まで販促をかけることで旅行の催行率や集客人数を増やし、在庫の損失機会を減らすことにつながるのだ。


フラッシュマーケティングを活用した新たな攻め方

 旅行業界では宿やホテルのみならず、パッケージツアーの販売にも徐々に活用されはじめてきている。

 近畿日本ツーリスト(KNT)はこの11月に共同購入型クーポンサイトの「GOTi(ゴーチ)」と組んで、パッケージツアーの期間限定割引販売を開始した。フラッシュマーケティングの特徴を取り込んで、豊富な品揃えの旅行商品を期間限定で、価格訴求を前面に出しながらマーケットの注目を集めていくことがねらいだ。自社のホームページとは別のサイトでフラッシュマーケティングを使い、販売チャンスを拡大していくのは今後の流れのひとつになっていくのではないだろうか。

 また、日本旅行は自社サイトに共同購入による割引販売の特集コーナーを設け、販売拡大をねらうとともに話題性を提供し、新たな試みを実施しはじめている。高級宿泊施設予約サイトの一休も「一休マーケット」というクーポンの共同購入サイトを展開し、効果を出しはじめている。

 商品の特性上、在庫を持てない旅行業界にとって、購入期間を限定し、価格訴求しながら直前まで販売していくフラッシュマーケティングは、「販売効果」「宣伝効果」において、可能性を感じさせるものであり、商品稼働率を上げる可能性を大いに持っている。まだまだ取り組み途上であるが、今後も各社の動きに注目していきたい。

 ただし、フラッシュマーケティング手法をとれば必ずしも販売拡大につながるということではない。販売する商品の内容や質、品揃えが十分であることが、成功のポイントになることも留意していきたい。


拡大の背景にSNSとモバイルの進化あり

 フラッシュマーケティングが拡大する背景には、前回までのコラムでお伝えしたSNSの拡大やモバイルの進化が欠かせない要素となっている。フラッシュマーケティングにおいて最大のポイントは、短期間にどうやって集客・販売につなげられるかという点だ。いいかえれば、どれだけスピード感をもってユーザーに認知させられるか、ということでもある。

 このモデル実現を強力に推し進めたのが、ツイッターなどのSNSの台頭、そして常時携帯して移動中にも利用できるモバイル機器、及びインフラ環境の進化だ。現に、現在のサービスの多くはツイッターやSNS上で紹介され、また、共同購入サイトにはツイッターボタンを設定して、ユーザーがユーザーを呼ぶように申込みが増えることで共同購入が成立していることが多い。ユーザーとしては購入条件が成立しなければ割引にならないので、少しでも多くの人に申し込んでもらいたい。それには、ツイッターで広く情報を伝播させることやフェイスブックやミクシィで同じ趣向を持つ人に知らせるなどSNSを利用するのが最も手っ取り早いのだ。

 従来にはなかったスピード感と、ユーザーがユーザーを呼び込むような情報が伝わることで実現したフラッシュマーケティング。新たな需要喚起も期待できるこの手法を、オンライン販売における新たなオプションとして活用していきたい。



執筆:森田亘(株式会社山敷広告制作所 ディレクター)
http://www.yamako.jp/index.shtml

 旅行検索・比較サイト「AB-ROAD」での制作業務を経て、
山敷広告制作所に入社。ディレクターとして旅行業界関連の
広告制作のみならず、ウェブ上のサービスやコンテンツの企
画を担当し、旅行商品の販促強化を目的としたサービスの企
画・提案から運用まで幅広く携わる。