ITソリューション特集:コラム<ITソリューションの有効活用>(1)
ITソリューションの有効活用で旅行ビジネスが変わる
コラム第1回:旅行業界が注視すべき2つの変化と「次の一手」
Twitter(ツイッター)やスマートフォンの流行など、次々と生まれる新しい技術やサービス。それらに対する消費者の興味や関心は日増しに高まっている。旅行会社にとっては新しいサービスの特性を理解し利用することで、今までには機会の少なかった渡航中のユーザーへのアプローチや、現状のオンライン販売にはない距離間でのユーザーとのコミュニケーションを得ることが可能となる。この特集コラムでは全7回を通して、これらのトレンドをどのように捉え、活用すべきかお伝えする。1回目は、オンライン販売における次の一手とそのポイントとなる2つの流れについて、お話したい。
オンライン販売の次に見えるもの
最近、旅行会社から「オンライン販売で必要な対策はとった。次の一手をどうすべきか」といった相談を数多く受けるようになった。
旅行業界におけるオンライン販売の市場規模が拡大する中、ウェブにおけるビジネス展開では検索上位表示が商品接触機会を得る最も効果的な方法であり、今後もそれは変わらないであろう。
さらに、ツイッターに代表される新しいウェブサービスも多く出現しており、各分野でビジネスに積極的に取り入れようとする動きがある。旅行業界においても、すでにジェイティービー(JTB)をはじめとして多くの企業がツイッターを導入し、公式アカウントを開設して様々な情報発信をしている。また楽天トラベルなどによるスマートフォンにおいてのサービス展開は、ユーザーとの新たな接点を生み出している。こういった旅行業界の試みは消費者の購買動向に変化をもたらし、その波は旅行業界にも大きなうねりとなって押し寄せている。
「ツイッターを販促に活用できないか?」
「土産物店への行き方を分かりやすく案内できるスマートフォン用のサイトを作れないか?」
「iPadに電子パンフレットを載せたい」
など、昨今、私どもにもこのような声が多く届くようになった。このような動きから見えてくるのは、多様化するITサービスをどのように旅行販促に取り入れ「次の一手」とするかを模索している旅行会社の姿だ。
ITの進化が旅行分野にもたらす2つの変化
具体的な手法を伝える前に、先進的な機能を持つスマートフォンや新しいウェブサービスが旅行分野にもたらしたものは何か。そこを考えてみたい。一番大きく変化したのは、ユーザーの行動である。ユーザーの視点で整理すると変化したポイントは2つだ。
ポイント1:新たなユーザー体験
第1のポイントは、これまでに体験したことのない方法でユーザーが情報を取得しているという点だ。
例えば、スマートフォンなど携帯端末の進化により、ユーザーは旅行中においても移動しながら多くの情報に触れられるようになった。またGPSを利用して現在地を取得することが可能となり、自分のいる位置を中心に情報を探すことができるようになってきている。
この機能を使えば、不慣れな旅先でも地図や写真、道案内など詳細な現地情報を得ることができる。近くのショッピングスポットや現地ツアーを探すことも容易だ。加えてツイッターやFacebook(フェイスブック)などソーシャルメディアの利用者が増えたことにより、旅行中に思ったことや周囲の状況などその場で情報を共有するのも珍しいことではなくなった。
旅行会社としては、これらの機能を利用し、ランドオペレーターと連携して現地でのショッピングクーポンやミールクーポンの情報を配信すれば、「新しい旅行商品の付加価値」を提供することも可能だ。
ポイント2:情報入手経路の変化
第2のポイントは、旅行情報の入手経路の変化だ。旅行を検討する際、友人などの信頼できるユーザーから得た情報で行動するケースが増えている。ユーザーは関心事を軸にネットワーク化されており、その中でやり取りされる情報には高い信頼が置かれ、リアルタイムで急速に広がる傾向がある。
例えば、ツイッターなどでは、情報伝達力をいかして在庫空席をさばくためのタイムセールが可能だ。これにより、ユーザーはリセールや間際予約など、ダイナミックできめの細かいサービスが受けられるようになった。また、ソーシャルメディア内で友人や旅慣れた人がすすめる宿、プランなどから旅の行き先や内容を決めることもできる。
このように、ソーシャルメディアは旅行会社にとっては新しい販促チャネルとして味方につければ強力な武器となるが、元来コマーシャリズムを毛嫌いする傾向が強いメディアでもある。商品やサービスに対するネガティブな評価も強い拡散性を持って広がるというリスクについて、同様に理解しなければならない。
ユーザーが求めるのは「CtoC」目線のコミュニケーション
ITの進化とともにユーザーの購買行動や情報の収集・発信を取り巻く環境は大きく変化した。かつてガイドブックにしかなかった旅先の情報は、誰もが無料で獲得できる時代となった。今や、旅行者自身がソーシャルネットワークで「旅行を評価する」という行為を通して、旅行販促の一翼を担う時代となった。
ユーザーの視点に立ちこの変化を見れば、旅行会社が「BtoC」という従来の感覚で販促アプローチをしていても駄目だという事に気づくはずだ。ユーザーが旅行会社に求めているのは「CtoC」目線でのコミュニケーションである。オンラインなのに人肌の温もりを感じるコミュニケーション、つまり売り手と買い手の関係性を超越した旅行のプロとして、旅の楽しみ方や優れた旅行商品や現地サービスの提案を求めているのだ。旅行会社の「次の一手」とは、ITを利用しこのような旅行者との関係深化をはかることである。
次回は、この「次の一手」を加速させているモバイル端末の進化や通信インフラの整備状況などについて、さらに詳しくお伝えしたい。
コラム第1回:旅行業界が注視すべき2つの変化と「次の一手」
Twitter(ツイッター)やスマートフォンの流行など、次々と生まれる新しい技術やサービス。それらに対する消費者の興味や関心は日増しに高まっている。旅行会社にとっては新しいサービスの特性を理解し利用することで、今までには機会の少なかった渡航中のユーザーへのアプローチや、現状のオンライン販売にはない距離間でのユーザーとのコミュニケーションを得ることが可能となる。この特集コラムでは全7回を通して、これらのトレンドをどのように捉え、活用すべきかお伝えする。1回目は、オンライン販売における次の一手とそのポイントとなる2つの流れについて、お話したい。
オンライン販売の次に見えるもの
最近、旅行会社から「オンライン販売で必要な対策はとった。次の一手をどうすべきか」といった相談を数多く受けるようになった。
旅行業界におけるオンライン販売の市場規模が拡大する中、ウェブにおけるビジネス展開では検索上位表示が商品接触機会を得る最も効果的な方法であり、今後もそれは変わらないであろう。
さらに、ツイッターに代表される新しいウェブサービスも多く出現しており、各分野でビジネスに積極的に取り入れようとする動きがある。旅行業界においても、すでにジェイティービー(JTB)をはじめとして多くの企業がツイッターを導入し、公式アカウントを開設して様々な情報発信をしている。また楽天トラベルなどによるスマートフォンにおいてのサービス展開は、ユーザーとの新たな接点を生み出している。こういった旅行業界の試みは消費者の購買動向に変化をもたらし、その波は旅行業界にも大きなうねりとなって押し寄せている。
「ツイッターを販促に活用できないか?」
「土産物店への行き方を分かりやすく案内できるスマートフォン用のサイトを作れないか?」
「iPadに電子パンフレットを載せたい」
など、昨今、私どもにもこのような声が多く届くようになった。このような動きから見えてくるのは、多様化するITサービスをどのように旅行販促に取り入れ「次の一手」とするかを模索している旅行会社の姿だ。
ITの進化が旅行分野にもたらす2つの変化
具体的な手法を伝える前に、先進的な機能を持つスマートフォンや新しいウェブサービスが旅行分野にもたらしたものは何か。そこを考えてみたい。一番大きく変化したのは、ユーザーの行動である。ユーザーの視点で整理すると変化したポイントは2つだ。
ポイント1:新たなユーザー体験
第1のポイントは、これまでに体験したことのない方法でユーザーが情報を取得しているという点だ。
例えば、スマートフォンなど携帯端末の進化により、ユーザーは旅行中においても移動しながら多くの情報に触れられるようになった。またGPSを利用して現在地を取得することが可能となり、自分のいる位置を中心に情報を探すことができるようになってきている。
この機能を使えば、不慣れな旅先でも地図や写真、道案内など詳細な現地情報を得ることができる。近くのショッピングスポットや現地ツアーを探すことも容易だ。加えてツイッターやFacebook(フェイスブック)などソーシャルメディアの利用者が増えたことにより、旅行中に思ったことや周囲の状況などその場で情報を共有するのも珍しいことではなくなった。
旅行会社としては、これらの機能を利用し、ランドオペレーターと連携して現地でのショッピングクーポンやミールクーポンの情報を配信すれば、「新しい旅行商品の付加価値」を提供することも可能だ。
ポイント2:情報入手経路の変化
第2のポイントは、旅行情報の入手経路の変化だ。旅行を検討する際、友人などの信頼できるユーザーから得た情報で行動するケースが増えている。ユーザーは関心事を軸にネットワーク化されており、その中でやり取りされる情報には高い信頼が置かれ、リアルタイムで急速に広がる傾向がある。
例えば、ツイッターなどでは、情報伝達力をいかして在庫空席をさばくためのタイムセールが可能だ。これにより、ユーザーはリセールや間際予約など、ダイナミックできめの細かいサービスが受けられるようになった。また、ソーシャルメディア内で友人や旅慣れた人がすすめる宿、プランなどから旅の行き先や内容を決めることもできる。
このように、ソーシャルメディアは旅行会社にとっては新しい販促チャネルとして味方につければ強力な武器となるが、元来コマーシャリズムを毛嫌いする傾向が強いメディアでもある。商品やサービスに対するネガティブな評価も強い拡散性を持って広がるというリスクについて、同様に理解しなければならない。
ユーザーが求めるのは「CtoC」目線のコミュニケーション
ITの進化とともにユーザーの購買行動や情報の収集・発信を取り巻く環境は大きく変化した。かつてガイドブックにしかなかった旅先の情報は、誰もが無料で獲得できる時代となった。今や、旅行者自身がソーシャルネットワークで「旅行を評価する」という行為を通して、旅行販促の一翼を担う時代となった。
ユーザーの視点に立ちこの変化を見れば、旅行会社が「BtoC」という従来の感覚で販促アプローチをしていても駄目だという事に気づくはずだ。ユーザーが旅行会社に求めているのは「CtoC」目線でのコミュニケーションである。オンラインなのに人肌の温もりを感じるコミュニケーション、つまり売り手と買い手の関係性を超越した旅行のプロとして、旅の楽しみ方や優れた旅行商品や現地サービスの提案を求めているのだ。旅行会社の「次の一手」とは、ITを利用しこのような旅行者との関係深化をはかることである。
次回は、この「次の一手」を加速させているモバイル端末の進化や通信インフラの整備状況などについて、さらに詳しくお伝えしたい。
執筆:森田亘(株式会社山敷広告制作所 ディレクター)
http://www.yamako.jp/index.shtml
旅行検索・比較サイト「AB-ROAD」での制作業務を経て、
山敷広告制作所に入社。ディレクターとして旅行業界関連の
広告制作のみならず、ウェブ上のサービスやコンテンツの企
画を担当し、旅行商品の販促強化を目的としたサービスの企
画・提案から運用まで幅広く携わる。