現地レポート:マレーシア・サワラク州、羽田就航いかし新素材開発を
キーワードはボルネオ島、新デスティネーションのサワラク州
羽田/コタキナバル便の就航にともない新素材商品開発を
11月16日からマレーシア航空(MH)の羽田/コタキナバル便が就航、さらに2011年1月18日から同便はサワラク州のクチンまで飛ぶ。これにより、これまでは世界遺産のキナバル山が主であったボルネオ島にさまざまな素材が加わり、ターゲット層や企画テーマの拡大に期待が持てそうだ。ボルネオ島の新デスティネーション、サラワク州の魅力を探った。
知る人ぞ知るサラワク州、独特な文化に注目
世界で3番目に大きく、その広大な面積は日本をもしのぐボルネオ島。マレーシア、ブルネイ、インドネシアの3国と領地を分かち、熱帯雨林に覆われた自然豊かな島だ。
日本からはサバ州コタキナバルまで直行便があることもあり、日本でよく知られているボルネオ島の観光素材は、サバ州にある世界自然遺産キナバル山でのトレッキングやリゾートステイが中心だ。しかし、それ以外のエリアはいまだ「人類未踏のジャングル」というイメージを持っている人が多く、同じボルネオ島に位置するサラワク州もその実態をあまり知られていない場所のひとつだ。
しかし、羽田/コタキナバル線の就航と来年からの同路線のクチン延伸で、これまでクアラルンプール経由が一般的だったサラワク州に、コタキナバル経由という最短距離で行けるようになる。ここはぜひ新デスティネーションとして企画造成に役立てたいところだ。
サラワク州はかつて英国人探検家のジェームズ・ブルックが藩主となり、サラワク王国として1841年から約100年に渡って“白人王”によって治められていたという稀有な歴史をもつ。現在も強い自治権を持っており、マレーシア国内でも異質な存在だ。“白人王”の影響で原住民の多くがキリスト教徒であることもあり、イスラム圏のマレーシアには珍しく「トゥア」などの地酒がある。宗教色が薄いかわりに地元文化が色濃く残っており、ほかにもボルネオ島の固有種である食材を使った料理や、世界の料理家に注目されるサラワクペッパー(胡椒)など、サラワク州特有のものを見つけるのは容易だ。
「猫の町」クチン、サラワク州の入り口
州都クチンは日系企業の工場などがあり、ビジネスマンも訪れるがのんびりした雰囲気である。国内外の大学の分校も数校あり、学府としても発展。海外から患者が訪れる大病院もある。近年ではおしゃれなバーやレストラン、ショッピングモールが次々とオープンし、小規模ながらも機能的で洗練された都市へと変化しつつある。治安がよく、英語がよく通じるので教育旅行にもよさそうだ。ここではまずサラワク博物館へでかけ、サラワク州の文化と伝統工芸、自然を学びたい。
2代目の白人王チャールズ・ブルックによって建設されたこの博物館は、小規模ながらガイドとともにじっくり見て回ると1時間以上はかかる。サラワク州に生息する動物の剥製や伝統工芸品などのほか、州内の原油事業についての展示もあり、テクニカルビジットでも訪れる価値があるだろう。ヨーロッパ建築の美しい建物も見どころのひとつである。
クチンはマレー語で「猫」の意味があるといい、この町も「猫の町」として知られている。町に猫がたくさんいるわけではないのだが、中心地には猫の銅像があったり、猫関連のお土産が売られていたり、猫好きな人には町歩きしながらの猫探しが楽しいだろう。市庁舎の中には猫博物館があり、世界から集められた猫を描いたポスターや人形、珍しいものではエジプト政府から贈られた猫のミイラもある。日本のものでは『ハローキティ』や昔懐かしい『なめねこ』グッズが展示されている。入場は無料だがカメラの持ち込みが有料で、携帯電話のカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラなど種類によって値段が違う。収益の一部はサラワク動物愛護協会に寄付されるとのこと。
このほか、草木染めのイカット(織物)の制作を実演してくれるトゥン・ジュガ・プア・ギャラリーや、先住民の刺青のような模様が個性的な焼き物「サラワク焼き」の工場など、伝統工芸品製作を見学・体験させてくれる施設もクチン市内にある。
町にも近く便利、セメンゴ野生動物センター
ボルネオ島での自然体験といえば、野生動物のリハビリセンター見学が有名だ。サラワク州にも野生動物保護施設があり、森林伐採によって住処を追われたり、密猟者によって親を殺されたり怪我をしたオランウータンを保護、自然に戻すためのリハビリをしている。
セメンゴ野生動物センターでは午前9時と午後3時の1日2回、それぞれ1時間ずつオランウータンの給餌の様子を一般公開しており、誰でも見学することができる。駐車場から森までは徒歩で3分ほど。森の入り口でスタッフから「オランウータンを指差さない」「静かにする」「持ち物をとられないよう気をつける」などの注意点を聞き、5分ほど歩いて給餌場が見えるデッキへと移動する。
この日はセンターにいるオスで最も大きな“ボス”オランウータンがどどーんと給餌場を占領し、バナナを食していた。ボスを恐れてほかのオランウータンは遠巻きの状態だが、気がつくと見物客のすぐ近くまで降りてきて、ぼんやりしていると触られてしまいそうだ。大きな声を出してはいけないとはいえ、森に入ってすぐにオランウータンが見られるのでところどころで小さな歓声があがる。クチン市内から車で20分から30分ほどとアクセスがよく、クチン滞在でのアクティビティとして最適だ。
ダマイビーチに新素材、ボルネオ島満喫プランを
クチンから車で約1時間、南シナ海に面したダマイ地区にはサラワク・カルチャー・ビレッジがある。先住民族の伝統的な建築や生活の様子を実物大で展示してあり、先住民文化を見学することができる。伝統舞踊などをショー仕立てで紹介する舞台の演目のいくつかは見学者参加型で、コミカルな演出には大人も子どもも楽しめるだろう。
ダマイ地区は日本マーケットにはあまり知られていないが、リゾートがいくつか点在しており、ヨーロッパや地元のマーケットに人気が高い。静かで手付かずのビーチが魅力のエリアだ。このほどリノベーションを終えたばかりのダマイプリ・ビーチ・リゾートがダイビングの手配を近く受け付ける予定で、新たなアクティビティがお目見えすることになる。ダマイ地区はダイビング・デスティネーションとしてはほとんど注目されていなかったが、このあたりの海には日本郵船の船や戦闘機などが沈没しており、魚の種類よりも地形を楽しむスタイルのダイバーの興味を引きそうだという。日本人インストラクターもいるので、同ホテルでは日本マーケットにもアピールしていく構えだ。
今回はクチンやその近郊の観光素材やデスティネーションを視察したが、サラワク州にもサバ州のキナバル自然公園と並び、世界自然遺産のグヌン・ムル国立公園がある。羽田/コタキナバル/クチン線が就航すれば、「ボルネオ島」をテーマに新しいターゲット層開拓も可能だ。自然や伝統文化体験で子連れ旅行や教育旅行に、あるいはダイビング、クチンでのロングステイやテクニカルビジットなどさまざまな可能性があり、ボルネオ島そのものをじっくり楽しむ商品企画が期待される。
羽田/コタキナバル便の就航にともない新素材商品開発を
11月16日からマレーシア航空(MH)の羽田/コタキナバル便が就航、さらに2011年1月18日から同便はサワラク州のクチンまで飛ぶ。これにより、これまでは世界遺産のキナバル山が主であったボルネオ島にさまざまな素材が加わり、ターゲット層や企画テーマの拡大に期待が持てそうだ。ボルネオ島の新デスティネーション、サラワク州の魅力を探った。
知る人ぞ知るサラワク州、独特な文化に注目
世界で3番目に大きく、その広大な面積は日本をもしのぐボルネオ島。マレーシア、ブルネイ、インドネシアの3国と領地を分かち、熱帯雨林に覆われた自然豊かな島だ。
日本からはサバ州コタキナバルまで直行便があることもあり、日本でよく知られているボルネオ島の観光素材は、サバ州にある世界自然遺産キナバル山でのトレッキングやリゾートステイが中心だ。しかし、それ以外のエリアはいまだ「人類未踏のジャングル」というイメージを持っている人が多く、同じボルネオ島に位置するサラワク州もその実態をあまり知られていない場所のひとつだ。
しかし、羽田/コタキナバル線の就航と来年からの同路線のクチン延伸で、これまでクアラルンプール経由が一般的だったサラワク州に、コタキナバル経由という最短距離で行けるようになる。ここはぜひ新デスティネーションとして企画造成に役立てたいところだ。
サラワク州はかつて英国人探検家のジェームズ・ブルックが藩主となり、サラワク王国として1841年から約100年に渡って“白人王”によって治められていたという稀有な歴史をもつ。現在も強い自治権を持っており、マレーシア国内でも異質な存在だ。“白人王”の影響で原住民の多くがキリスト教徒であることもあり、イスラム圏のマレーシアには珍しく「トゥア」などの地酒がある。宗教色が薄いかわりに地元文化が色濃く残っており、ほかにもボルネオ島の固有種である食材を使った料理や、世界の料理家に注目されるサラワクペッパー(胡椒)など、サラワク州特有のものを見つけるのは容易だ。
「猫の町」クチン、サラワク州の入り口
州都クチンは日系企業の工場などがあり、ビジネスマンも訪れるがのんびりした雰囲気である。国内外の大学の分校も数校あり、学府としても発展。海外から患者が訪れる大病院もある。近年ではおしゃれなバーやレストラン、ショッピングモールが次々とオープンし、小規模ながらも機能的で洗練された都市へと変化しつつある。治安がよく、英語がよく通じるので教育旅行にもよさそうだ。ここではまずサラワク博物館へでかけ、サラワク州の文化と伝統工芸、自然を学びたい。
2代目の白人王チャールズ・ブルックによって建設されたこの博物館は、小規模ながらガイドとともにじっくり見て回ると1時間以上はかかる。サラワク州に生息する動物の剥製や伝統工芸品などのほか、州内の原油事業についての展示もあり、テクニカルビジットでも訪れる価値があるだろう。ヨーロッパ建築の美しい建物も見どころのひとつである。
クチンはマレー語で「猫」の意味があるといい、この町も「猫の町」として知られている。町に猫がたくさんいるわけではないのだが、中心地には猫の銅像があったり、猫関連のお土産が売られていたり、猫好きな人には町歩きしながらの猫探しが楽しいだろう。市庁舎の中には猫博物館があり、世界から集められた猫を描いたポスターや人形、珍しいものではエジプト政府から贈られた猫のミイラもある。日本のものでは『ハローキティ』や昔懐かしい『なめねこ』グッズが展示されている。入場は無料だがカメラの持ち込みが有料で、携帯電話のカメラ、フィルムカメラ、デジタルカメラなど種類によって値段が違う。収益の一部はサラワク動物愛護協会に寄付されるとのこと。
このほか、草木染めのイカット(織物)の制作を実演してくれるトゥン・ジュガ・プア・ギャラリーや、先住民の刺青のような模様が個性的な焼き物「サラワク焼き」の工場など、伝統工芸品製作を見学・体験させてくれる施設もクチン市内にある。
町にも近く便利、セメンゴ野生動物センター
ボルネオ島での自然体験といえば、野生動物のリハビリセンター見学が有名だ。サラワク州にも野生動物保護施設があり、森林伐採によって住処を追われたり、密猟者によって親を殺されたり怪我をしたオランウータンを保護、自然に戻すためのリハビリをしている。
セメンゴ野生動物センターでは午前9時と午後3時の1日2回、それぞれ1時間ずつオランウータンの給餌の様子を一般公開しており、誰でも見学することができる。駐車場から森までは徒歩で3分ほど。森の入り口でスタッフから「オランウータンを指差さない」「静かにする」「持ち物をとられないよう気をつける」などの注意点を聞き、5分ほど歩いて給餌場が見えるデッキへと移動する。
この日はセンターにいるオスで最も大きな“ボス”オランウータンがどどーんと給餌場を占領し、バナナを食していた。ボスを恐れてほかのオランウータンは遠巻きの状態だが、気がつくと見物客のすぐ近くまで降りてきて、ぼんやりしていると触られてしまいそうだ。大きな声を出してはいけないとはいえ、森に入ってすぐにオランウータンが見られるのでところどころで小さな歓声があがる。クチン市内から車で20分から30分ほどとアクセスがよく、クチン滞在でのアクティビティとして最適だ。
ダマイビーチに新素材、ボルネオ島満喫プランを
クチンから車で約1時間、南シナ海に面したダマイ地区にはサラワク・カルチャー・ビレッジがある。先住民族の伝統的な建築や生活の様子を実物大で展示してあり、先住民文化を見学することができる。伝統舞踊などをショー仕立てで紹介する舞台の演目のいくつかは見学者参加型で、コミカルな演出には大人も子どもも楽しめるだろう。
ダマイ地区は日本マーケットにはあまり知られていないが、リゾートがいくつか点在しており、ヨーロッパや地元のマーケットに人気が高い。静かで手付かずのビーチが魅力のエリアだ。このほどリノベーションを終えたばかりのダマイプリ・ビーチ・リゾートがダイビングの手配を近く受け付ける予定で、新たなアクティビティがお目見えすることになる。ダマイ地区はダイビング・デスティネーションとしてはほとんど注目されていなかったが、このあたりの海には日本郵船の船や戦闘機などが沈没しており、魚の種類よりも地形を楽しむスタイルのダイバーの興味を引きそうだという。日本人インストラクターもいるので、同ホテルでは日本マーケットにもアピールしていく構えだ。
今回はクチンやその近郊の観光素材やデスティネーションを視察したが、サラワク州にもサバ州のキナバル自然公園と並び、世界自然遺産のグヌン・ムル国立公園がある。羽田/コタキナバル/クチン線が就航すれば、「ボルネオ島」をテーマに新しいターゲット層開拓も可能だ。自然や伝統文化体験で子連れ旅行や教育旅行に、あるいはダイビング、クチンでのロングステイやテクニカルビジットなどさまざまな可能性があり、ボルネオ島そのものをじっくり楽しむ商品企画が期待される。
取材協力:マレーシア政府観光局
取材:岩佐史絵