羽田特集:24時間国際化空港としての課題−本格稼動後の発展に期待

まずは17路線が決定、欧州便はパリとロンドンのみ
10月31日からはじまる冬スケジュールで、羽田空港から発着する国際線は17路線。アジア近距離では、ソウル(金浦)、上海(虹橋)、北京、香港、台北(松山)。深夜早朝の東南アジア路線は、バンコク、シンガポール、コタキナバル、クアラルンプール。深夜早朝の北米路線は、ホノルル、サンフランシスコ、ロサンゼルス、デトロイト、ニューヨーク(JFK)、バンクーバー。深夜早朝の欧州路線はパリとロンドンだ。
最近になってブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が来年2月からのロンドン線の開設を発表。また、LCCのエア・アジアX(D7)が今年12月からクアラルンプール線に破格の運賃で参入するニュースは大きな話題となった。
とはいえ、欧米を含む主要都市路線への発着枠は深夜早朝時間帯にしか認められておらず、羽田空港での駐機時間、現地到着時間における空港発着枠の問題、羽田空港の早朝深夜時間帯における滑走路使用制限などの理由から、欧米路線への参入はまだ限定的。羽田就航に消極的な欧米キャリアも多く、例えばエールフランス航空(AF)などは日本航空(JL)との共同運航という形で、羽田のメリットをいかそうとしている。

地方需要の取り込みは限定的

また、アジア便についても、関空や中部も含め主要な地方空港からソウル、上海、台北などへはダイレクトで結ばれているため、わざわざ羽田空港を経由するメリットはあまりない。特に地方発ソウルについては、大韓航空(KE)が14都市、アシアナ航空(OZ)が16都市に直行便を運航しているため(2010年夏スケジュール)、「羽田に勝ち目なし」といい切る旅行会社も多い。さらに、そうした地方空港から仁川国際空港を経由して世界各地に飛ぶ需要も羽田にとっては依然として驚異だ。
空港へのアクセス拡大も課題多く

しかし、早朝便の出発時間は6時25分から6時55分の間。各鉄道の始発便を利用しても、出発2時間前に到着することは不可能だ。東京空港交通のリムジンバスはダイヤ改正後も朝5時以前に羽田空港に到着する便は予定しておらず、京浜急行のバスは5時前に到着する便を設定するが、出発地は大森駅と蒲田駅に限定される。ただし、全日空(NH)とJLは羽田発着の自社運航便について、国際線の搭乗手続きと手荷物預かりを出発時刻の40分前とする対応を開始する。

今後、発着枠が段階的に増え、本格的な24時間国際空港化をめざしていくうえでは、包括的な交通インフラの向上が求められてくる。旅行者の利便性を考えた場合、公共交通機関の運行時間によって発着時間も制限されかねず、24時間運用が無力化してしまう恐れさえある。国内および国際航空ネットワークの拡大とともに、地上交通インフラも含めたグランド・デザインがどこまで描けるか。羽田空港の24時間国際空港化に残された課題は多い。
課題多くも大きい業界の期待
しかし、課題が多いながらも、羽田の国際化が航空・旅行業界を活性化させる起爆剤になることは確かだ。「成田に加えて、国際線の選択肢が増えることは利用者にとって大きなメリット」と業界関係者は声をそろえる。深夜早朝便はビジネス客だけでなく、新たなレジャーマーケットを生み出す可能性もある。また、成田と羽田両方を利用するフライトの選択、あるいいは両空港を利用した商品造成など、これまでにはなかったビジネスチャンスが生まれてくることも考えられる。「飛びはじめたら、また違った展開が見えてくるかもしれない」。羽田国際化に対する業界の期待は大きい。
取材:山田友樹