2010年の出国者数予測、1690万人に上方改定−伸び抑えるのは航空座席数

  • 2010年7月26日
 財団法人日本交通公社(JTBF)主任研究員の黒須宏志氏は、7月23日のJTBF海外旅行動向シンポジウムで2010年の日本人海外旅行者数予測を、2009年末に発表した1660万人(前年比7.4%増)から1690万人(同9.4%増)に改定した。これは、2009年以降の出国者数の推移と、今後の日本発着国際線の航空座席数の見通しといった短期的な数字を勘案して導き出したもの。

 09年以降の、四半期ごとの過去1年間の出国者数をみると、09年第2四半期の年間1522万人で下げ止まり、2010年第2四半期には年間1630万人まで回復。一方、航空座席数は回復のペースが遅く、09年第2四半期の9.5%減から2010年第2四半期に前年並みに戻った。第3四半期に3.6%増となるものの、第4四半期には減少し、0.4%増とほぼ前年並みになる予想。黒須氏は「市場自体は回復していくはずだが、座席供給量が伸びを抑える具体的な要素になる」と語った。

 このうち第4四半期以降の減少については、10月末以降の羽田拡張などで首都圏空港の便数が約8%増に拡大するとするものの、便あたりの席数は減少傾向にあるとし、下期では3、4%減少と予測。さらに第4四半期以降、日本航空(JL)がグループ全体で供給座席数を約30%減少する計画で、これが日本全体の供給総量の6%にあたり、これらの要素が供給座席数の伸びを減殺すると説明した。


▽中長期的には上昇軌道へ

 黒須氏は5年から15年後の海外旅行市場の動向として、上昇軌道に転換するとの見通しを述べた。減少傾向にあった若者層のうち、特に20代女性がリーマンショック以降、どの年齢層よりも早く増加に転化し、下げ止まりを見せたこと。さらに、現在の主要市場であるシニア層が、パスポートの発行数の伸びや他の年代と比較した出国率の低さなどから、成長余地があることをその理由にあげる。

 そのカギとするのが、海外旅行市場の4割を占める「不活性層」(過去旅行した経験はあるが5年以上出かけていない)の活性化だ。その可能性として、特にショートホールの変化をあげる。行きたいデスティネーションの希望率は依然としてロングホールが高いものの、伸び率でみると中国が3.4%増、香港・マカオが3.2%増など、ヨーロッパ(2.7%減)、ハワイ(5.1%減)といったロングホールよりも上回っている。

 黒須氏はショートホールの商品が、担当者が年に数回現地を訪れて商品を造成するなど、幅を広げて実力をつけている動きがあるとし、「市場回復のなかで重要なこと。ショートホールが伸びることで不活性層が戻れば純増分になる」と語った。

 また、LCCについても「欧米、アジアでの動きをみれば、遠からず日本にもプラス、マイナスの両面で影響がある」としたうえで、「伸びるとしたらショートホール。インバウンドを増やす意味でも欠かせない手段」とし、「海外旅行の総量が増えなくてはどうにもならない。今はいい面を増やしていけるようにしていくべき」との考えを述べた。


▽関連記事
09年の海外旅行者数は1545万人予想、来年は1660万人−旅行マインド上向きに(2009/12/17)