「休暇分散化」に期待と不安(1) 観光庁、各地で施策説明会

 政府・観光立国推進本部が唱える「休暇分散化」。観光庁は各地で説明会を開くなど実現に向けた取り組みを本格化させているが、分散化の影響が大きい観光業界では期待と不安が交錯した声が聞かれるなど、まだまだ手探り状態が続く。国民の生活や企業活動、日本の伝統にも踏み込む問題だけに今後、観光庁、政府の手腕が問われる。


溝畑長官「柔軟性持ち対応」

 観光庁は4月下旬から6月にかけて各地で休暇取得の分散化に関する説明会を開いた。溝畑宏長官自ら各地を訪れ、参加者に理解を求めた。会場には観光関係者ら多くの参加者が詰めかけ関心の高さをうかがわせたが、参加者からは慎重な意見も目立った。

 説明会は北海道、東北、関東、北陸信越、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄の10地区で開催。各地の旅館ホテル団体や旅行会社など観光関係者をはじめ経済界、教育関係者、自治体などに施策の意義や概要を説明し、意見を交換することで関係各所との合意形成を図ることがねらいで、「大きな改革の第一歩」(溝畑長官)と位置づけている。

 5月26日に大阪市内で開いた近畿地区説明会では、溝畑長官と矢ヶ崎紀子参事官が出席。休暇分散化による旅行需要の平準化に取り組むことで交通渋滞の緩和や観光地の雇用の安定化などの効果が生まれ、旅行需要の喚起、地域活性化につながるといった経済的側面のほか、休暇を楽しむライフスタイルの定着による国民の精神面への改善といったメリットを説明した。

 その需要平準化には、フランスの休暇改革を好例に挙げ、低迷する有給休暇の取得率向上の必要性を強調。その上で、特定の祝日を地域ごとに分散して設定し、春と秋に大型連休を生み出すプランを提案した。

 溝畑長官は「まずは有給休暇の取得の促進が大前提。休暇分散と有給取得を組み合わせた形を目指す。柔軟性を持ちながら皆さんと制度づくりを進めたい」と訴えた。

 今後は、経済効果の算出や産業界への影響の把握のほか、幅広く意見を求めるなどして施策設定を進めていく。


観光関係者から意見相次ぐ

 概要説明の後、会場の参加者との意見交換が行われ、観光関係者らから意見が寄せられた。

 旅館経営者からは、需要の平準化の意義には理解を示したものの「経済効果はどれだけあるのか。これまで混雑で回避していた人気観光地に観光客が集中するだけでは」など、逆に地域間格差の拡大を懸念する声があがった。矢ヶ崎参事官は今後調査を行い、需要や影響を予測して情報開示すると回答した。

 「何年間実施するのか。実施してうまくいかなかったらストップするのか」という質問には、溝畑長官は個人的な見解としながらも「皆さんの理解を得ながら進めていくことなので、微修正など弾力性をもってしかるべき」と話した。

 また、旅館経営者や自治体からは、祝日を動かせることで日本の伝統・文化が失われることへの危惧も。これに対して溝畑長官は「祝日を移動しても、本来の祝日は記念日として残す。『休日』を移動させるということ。ローカルホリデーの設定など地域に歴史を大事にする動きが出てくることも期待できる」と理解に自信を示した。

 一方で、「宿が廃業、航空路線が廃止になるなどインフラがなくなっていく現状を考えると、できることはすぐにでもやってほしい」という賛成意見も挙がり、期待と不安が入り混じった世間の反応を感じさせた。

「休暇分散化」に期待と不安(2) 旅館ホテルも賛否両論に続く

情報提供:トラベルニュース社