現地レポート:南アフリカ−ワールドカップ効果で今後の送客へ
今、世界が注目する南アフリカ
ケープタウン、クルーガー国立公園、パノラマルートを視察
いよいよ開幕するFIFAワールドカップ(W杯)の開催地、南アフリカ。観光資源に恵まれたこの国は今、世界各国の注目を集めているが、残念ながら日本国内では現地の治安問題がことさらに報道されている。しかし、百聞は一見に如かず。実際に訪れてみると印象は随分と違うもので、5月初旬に実施された旅行会社対象のFAMツアーでは、ツアー実施中の旅行者の安全確保ができそうだと自信を持つ参加者が多かった。また、W杯開催にあわせインフラ整備が進んだことで、日本人旅行者にも快適で過ごしやすい場所になるはず。今回はそんな南アフリカの魅力を、FAMツアーに参加した旅行会社の視点も交えて紹介したい。
都会と自然を味わうケープタウン
まず訪れたのは南アフリカ観光の定番、ケープタウン。「嵐の岬」と形容されるだけあって、海は冬の日本海のように荒々しく気候も変わりやすいというが、その要因である「ケープドクター」といわれる強い南西風の影響で、この一帯はマラリアフリーとなっている。町自体は立法府の首都であり、都会そのもの。ショッピングやグルメを楽しめるが、少し足をのばせば街から30分ほどで平らな頂上が特徴的なテーブルマウンテンにロープウェーで登ったり、世界遺産に登録されているカーステンボッシュ国立植物園で、世界でも珍しいケープ植物区系の植物をはじめとする1470種類を観賞できる。自然と都市を一度に味わえる、南アフリカ観光では欠かせない場所だ。
日本での報道の影響もあり、ケープタウンなど都市の治安に対する旅行者の懸念は強い。しかし、南アフリカ観光局日本地区トレードリレーション担当マネージャーの近藤由佳氏が「実際に、お客様を案内するツアーのように動いてもらったときに危険を感じるかがポイント」というように、今回参加した旅行会社関係者からも「バスに乗って観光に行く分には危険を感じない」という意見が多く聞かれた。移動には必ず車を使う、危険な場所には近づかない、夜は出歩かないなど基本的な注意や自覚を持ってツアーに参加することが旅行者には必要だろう。
W杯開催にあわせたのか、街のあちこちでは警備体制が強化されているようだ。コンドミニアムの立ち並ぶ海沿いの通りでは、セグウェイに乗った警察官が巡回している姿も見られた。また、ケープタウンのショッピングのハイライトで、240軒のショップやレストランが出店するヴィクトリア・アンド・アルフレッドウォーターフロント(V&Aウォーターフロント)には警備員が常駐し、午前9時から午後9時まで買い物が楽しめるという。隣接するテーブル・ベイ・ホテルからも自由に行動できるとあり、「宿泊料金は高くなるが、ここに宿泊できればショッピングを楽しみたいお客様や部屋でゆっくりしたいお客様の双方に満足いただける」と、参加者からも使い勝手の良さに注目が集まった。
アフリカ大陸の最南西端をめざす壮観ドライブ
ケープタウンに来たからには、行っておきたい場所といえば喜望峰だ。ちなみに、喜望峰はアフリカ大陸最南端と誤解されることが多いそうだが、実は最南西端。最南端はアグラス岬である。喜望峰へ向かうルートには圧倒的な景観を誇る世界有数のドライブウェイの「チャップマンズ・ピーク・ドライブ」にトライしたい。土砂崩れで通行止めになっていたが2010年3月に再開通されたルートで、海岸沿いの崖っぷちの道を蛇行するのはスリル満点だが、車窓に広がる大西洋の眺めは壮観だ。
喜望峰へ向かう道中も楽しみが多い。海軍基地の街、サイモンズタウンのボルダーズ・ビーチでは、愛らしいアフリカンペンギンを遊歩道から間近で観察できる。またボルダーズ・ビーチからケープポイントに向かう途中では、雄大な自然とともに手付かずのケープ植物区系の姿を見ることができる。
サファリも快適な旅、動物の近さが魅力
アフリカを訪れる観光客の期待値が一番高いのがサファリ体験だが、南アフリカが他の国と一線を画すのはサファリの拠点となる宿泊施設の利便性やインフラの充実度だ。サファリでは電気、水道が時間制となり、使用できない時があるのだが、今回訪れた宿泊施設は電気、水道が24時間使用可能と、快適な宿泊環境が整備されている。
訪れたのはクルーガー国立公園内のカパマ私営動物保護区の「カパマ・ロッジ」。フートスプレイト空港に隣接する好立地でありながら1万3000ヘクタールもの広大な動物保護区で、大自然と一体になれるサファリ体験、ゲーム・ドライブを存分に楽しむことができる。私営動物保護区のゲーム・ドライブで使用される車は屋根のないランドローバーで、動物との距離がより近く感じられる。時にはオフロードを走行するため、迫力満点だ。この動物との「近さ」は南アフリカの私営動物保護区ならでは。緑豊かな低木の広がる草原からひょっこり顔を出すキリン、次々に現れるゾウの群れ、茂みに潜むライオンを見ているうちに、時間があっという間に過ぎていく。
次に訪問したのは、ムプマランガ州にあるボンガニ・ロッジ。「天国」を意味するエズルウィニ山の標高800メートルの山間に位置するサファリでは、平地のゲーム・ドライブとは違い地形の変化を楽しみ、動物たちを山から見下ろしながら観察ができる。特に、山に沈む夕日、満天の星空には心が揺さぶられる。ボンガニ・ロッジは全30室で、静寂を好む大人の旅行者やハネムーン・カップルにおすすめ。マンデラ元大統領が、投獄生活を終えた10日後に滞在した場所としても知られている。
絶景スポットが連なるパノラマルート
日本市場での認知度はそこまで高くないが、欧米人にはメジャーな観光地となっているパノラマルート。クルーガー国立公園の西側を走るこのドライブルートには、絶景スポットが目白押しだ。
その中心となるのが、世界遺産申請準備中のブライデリバーキャニオン自然保護区。グランドキャニオン、ナミビアのフィッシュリバーキャニオンに次ぐ大きさで、世界3大渓谷のひとつとされている。緑に覆われている渓谷としては世界最大の大きさだ。丸く侵食された地形のブルクスラック・ポットホールや、首長の3人の妻の胸をモチーフに名づけたといわれる奇岩をのぞむスリー・ローンダベルズ・ビューポイントなど、ユニークな景観が多い。ブライデリバーキャニオンの南端にある「ゴッズ・ウィンドー」はその昔、この地に降り立った神様があまりの絶景に感動したためアフリカ大陸を作ったという伝説がある「アフリカ大陸発祥の地」といわれ、晴れた日にはモザンビークまで見渡せるほど眺めが良いという。
日本ではパノラマルートをツアーに取り入れている旅行会社はまだ少ないものの、「時間の余裕ができれば組み込みたい」「ヘビーリピーター向けに紹介したい」という参加者の声もあった。なかには、「近くのヘリポートを利用して上空からパノラマルートを見るのも面白い」という富裕層の旅行を取り扱う担当者ならではの感想も。見せ方次第で差別化をはかる素材になり得るようだ。
南アフリカにはパノラマルート以外でも、日本ではまだ知られていない魅力的な観光素材がぎっしりつまっている。新しいツアーを造成するには認知度の向上、旅行代金、日数などの工夫は必要だが、新しい要素を加えながら開拓していきたいデスティネーションだ。
ケープタウン、クルーガー国立公園、パノラマルートを視察
いよいよ開幕するFIFAワールドカップ(W杯)の開催地、南アフリカ。観光資源に恵まれたこの国は今、世界各国の注目を集めているが、残念ながら日本国内では現地の治安問題がことさらに報道されている。しかし、百聞は一見に如かず。実際に訪れてみると印象は随分と違うもので、5月初旬に実施された旅行会社対象のFAMツアーでは、ツアー実施中の旅行者の安全確保ができそうだと自信を持つ参加者が多かった。また、W杯開催にあわせインフラ整備が進んだことで、日本人旅行者にも快適で過ごしやすい場所になるはず。今回はそんな南アフリカの魅力を、FAMツアーに参加した旅行会社の視点も交えて紹介したい。
都会と自然を味わうケープタウン
まず訪れたのは南アフリカ観光の定番、ケープタウン。「嵐の岬」と形容されるだけあって、海は冬の日本海のように荒々しく気候も変わりやすいというが、その要因である「ケープドクター」といわれる強い南西風の影響で、この一帯はマラリアフリーとなっている。町自体は立法府の首都であり、都会そのもの。ショッピングやグルメを楽しめるが、少し足をのばせば街から30分ほどで平らな頂上が特徴的なテーブルマウンテンにロープウェーで登ったり、世界遺産に登録されているカーステンボッシュ国立植物園で、世界でも珍しいケープ植物区系の植物をはじめとする1470種類を観賞できる。自然と都市を一度に味わえる、南アフリカ観光では欠かせない場所だ。
日本での報道の影響もあり、ケープタウンなど都市の治安に対する旅行者の懸念は強い。しかし、南アフリカ観光局日本地区トレードリレーション担当マネージャーの近藤由佳氏が「実際に、お客様を案内するツアーのように動いてもらったときに危険を感じるかがポイント」というように、今回参加した旅行会社関係者からも「バスに乗って観光に行く分には危険を感じない」という意見が多く聞かれた。移動には必ず車を使う、危険な場所には近づかない、夜は出歩かないなど基本的な注意や自覚を持ってツアーに参加することが旅行者には必要だろう。
W杯開催にあわせたのか、街のあちこちでは警備体制が強化されているようだ。コンドミニアムの立ち並ぶ海沿いの通りでは、セグウェイに乗った警察官が巡回している姿も見られた。また、ケープタウンのショッピングのハイライトで、240軒のショップやレストランが出店するヴィクトリア・アンド・アルフレッドウォーターフロント(V&Aウォーターフロント)には警備員が常駐し、午前9時から午後9時まで買い物が楽しめるという。隣接するテーブル・ベイ・ホテルからも自由に行動できるとあり、「宿泊料金は高くなるが、ここに宿泊できればショッピングを楽しみたいお客様や部屋でゆっくりしたいお客様の双方に満足いただける」と、参加者からも使い勝手の良さに注目が集まった。
アフリカ大陸の最南西端をめざす壮観ドライブ
ケープタウンに来たからには、行っておきたい場所といえば喜望峰だ。ちなみに、喜望峰はアフリカ大陸最南端と誤解されることが多いそうだが、実は最南西端。最南端はアグラス岬である。喜望峰へ向かうルートには圧倒的な景観を誇る世界有数のドライブウェイの「チャップマンズ・ピーク・ドライブ」にトライしたい。土砂崩れで通行止めになっていたが2010年3月に再開通されたルートで、海岸沿いの崖っぷちの道を蛇行するのはスリル満点だが、車窓に広がる大西洋の眺めは壮観だ。
喜望峰へ向かう道中も楽しみが多い。海軍基地の街、サイモンズタウンのボルダーズ・ビーチでは、愛らしいアフリカンペンギンを遊歩道から間近で観察できる。またボルダーズ・ビーチからケープポイントに向かう途中では、雄大な自然とともに手付かずのケープ植物区系の姿を見ることができる。
サファリも快適な旅、動物の近さが魅力
アフリカを訪れる観光客の期待値が一番高いのがサファリ体験だが、南アフリカが他の国と一線を画すのはサファリの拠点となる宿泊施設の利便性やインフラの充実度だ。サファリでは電気、水道が時間制となり、使用できない時があるのだが、今回訪れた宿泊施設は電気、水道が24時間使用可能と、快適な宿泊環境が整備されている。
訪れたのはクルーガー国立公園内のカパマ私営動物保護区の「カパマ・ロッジ」。フートスプレイト空港に隣接する好立地でありながら1万3000ヘクタールもの広大な動物保護区で、大自然と一体になれるサファリ体験、ゲーム・ドライブを存分に楽しむことができる。私営動物保護区のゲーム・ドライブで使用される車は屋根のないランドローバーで、動物との距離がより近く感じられる。時にはオフロードを走行するため、迫力満点だ。この動物との「近さ」は南アフリカの私営動物保護区ならでは。緑豊かな低木の広がる草原からひょっこり顔を出すキリン、次々に現れるゾウの群れ、茂みに潜むライオンを見ているうちに、時間があっという間に過ぎていく。
次に訪問したのは、ムプマランガ州にあるボンガニ・ロッジ。「天国」を意味するエズルウィニ山の標高800メートルの山間に位置するサファリでは、平地のゲーム・ドライブとは違い地形の変化を楽しみ、動物たちを山から見下ろしながら観察ができる。特に、山に沈む夕日、満天の星空には心が揺さぶられる。ボンガニ・ロッジは全30室で、静寂を好む大人の旅行者やハネムーン・カップルにおすすめ。マンデラ元大統領が、投獄生活を終えた10日後に滞在した場所としても知られている。
絶景スポットが連なるパノラマルート
日本市場での認知度はそこまで高くないが、欧米人にはメジャーな観光地となっているパノラマルート。クルーガー国立公園の西側を走るこのドライブルートには、絶景スポットが目白押しだ。
その中心となるのが、世界遺産申請準備中のブライデリバーキャニオン自然保護区。グランドキャニオン、ナミビアのフィッシュリバーキャニオンに次ぐ大きさで、世界3大渓谷のひとつとされている。緑に覆われている渓谷としては世界最大の大きさだ。丸く侵食された地形のブルクスラック・ポットホールや、首長の3人の妻の胸をモチーフに名づけたといわれる奇岩をのぞむスリー・ローンダベルズ・ビューポイントなど、ユニークな景観が多い。ブライデリバーキャニオンの南端にある「ゴッズ・ウィンドー」はその昔、この地に降り立った神様があまりの絶景に感動したためアフリカ大陸を作ったという伝説がある「アフリカ大陸発祥の地」といわれ、晴れた日にはモザンビークまで見渡せるほど眺めが良いという。
日本ではパノラマルートをツアーに取り入れている旅行会社はまだ少ないものの、「時間の余裕ができれば組み込みたい」「ヘビーリピーター向けに紹介したい」という参加者の声もあった。なかには、「近くのヘリポートを利用して上空からパノラマルートを見るのも面白い」という富裕層の旅行を取り扱う担当者ならではの感想も。見せ方次第で差別化をはかる素材になり得るようだ。
南アフリカにはパノラマルート以外でも、日本ではまだ知られていない魅力的な観光素材がぎっしりつまっている。新しいツアーを造成するには認知度の向上、旅行代金、日数などの工夫は必要だが、新しい要素を加えながら開拓していきたいデスティネーションだ。
取材協力:南アフリカ観光局
取材:安井久美