取材ノート:イスタンブールを世界のハブに、トルコ航空の戦略
2009年に2510万人の旅客を運び、ヨーロッパ第4位の航空会社となったトルコ航空(TK)。2004年の民営化以降続く成長を支えるのは、TKのハブであるイスタンブールの地理的な優位性だ。長い歴史の中でアジアとヨーロッパをつなぐ拠点として繁栄したように、イスタンブールを航空ネットワークのハブとしてさらなる高みをめざすTKの今後の戦略を紹介する。
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2009年、TKはヨーロッパ第4位の航空会社へと成長
リーマンショックや新型インフルエンザなどにより、旅行業界、航空業界ともに苦しい1年となった2009年。TKはこうした状況のなかでも、通年で国際線1347万人を含む2510万人の旅客実績を残した。旅客数は2003年から毎年約10%ずつ増加しており、2010年には前年比23.5%増となる3100万人をめざしている。日本市場では、2010年3月28日に成田/イスタンブール線を週4便から6便に、関空/イスタンブール線を週3便から4便に増便。今後の日本路線の展開についてTK・CEOのテメル・コティル氏は、「まずは成田路線をデイリー運航したい」と意欲的だ。
こうしたTKの成長の最大のバックボーンは、イスタンブールの地理的な優位性といえる。ヨーロッパ、ロシア、CIS、北アフリカの中心に位置し、4時間以内のフライトでその大部分をカバーできるのだ。イスタンブールがその昔、東西の文化が交差する都市だったように、今もイスタンブールは多数の都市をつなぐ役割を果たしている。TKの就航地は2005年から増え続け、2010年にはロサンゼルス、ワシントンDC、ボローニャ、ホーチミン、ソチなどを新規デスティネーションに加え168都市に拡大する予定だ。
こうしたネットワークの拡大にあわせて、もっとも力を入れているのが乗継需要の取り込み。現在イスタンブールに入る旅客のうち乗継旅客のシェアは34%で、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)のハブであるフランクフルトなどに比べて低い。これは、フランクフルトの人口75万人に比べてイスタンブールは約1200万人が暮らし、国内移動で利用する人も多いことが挙げられる。国内需要がすでに大きな市場であることは明確だが、コティル氏はこれだけではリスクヘッジにならず世界の需要も重要との見方を示す。イスタンブールの乗継の利便性の高さをアピールし、乗継旅客を2012年には50%、2015年には80%にまで拡大させる計画だ。
ただし、そのうえで課題となるのが空港のキャパシティで、現在のアタチュルク空港では目標とする世界の乗継旅客を受け入れることは難しいという。そのため、政府も協力し5年後には新たな空港のオープンを計画している。
コスト構造の強化やサービス向上も成長の鍵
TKの成長のもうひとつの理由は、運航コストを他社よりも抑えられる点。これもイスタンブールの立地が関係している。
どういうことかというと、ロシアや中東、ヨーロッパの各都市までの飛行時間がイスタンブールからでは3、4時間であるのに対し、欧州系航空会社の各ハブ空港からだと2時間程度であることがカギという。飛行機の飛行時間と運航コストは正比例しないため、飛行時間が2時間程度の場合と3、4時間の場合、乗客1名を1キロメートル運ぶ運航コストは後者が前者の2分の1に低下するのだ。
また、TKの所有する130機の機材のうち、ボーイングB737型機などの短距離用機材が全体の3分の1を占めており、大型機材中心の構成よりも運航コスト面に有利になっているという。さらに、2009年から2023年までの15年間で105機を購入する計画を立てており、機齢が若くなることでさらに燃費効率が上がる予定だ。
運航コストを抑える一方、機内サービスには力を入れている。例えば、2009年には日本に乗り入れている全機材を一新。成田路線は2009年10月にボーイングB777-300ER型機を導入しており、ビジネスクラスシートを刷新したほか、ファーストクラスのサービスも開始した。ビジネスクラスのシートはフルフラット仕様で、ファーストクラスは仕切りのある個室タイプを導入。成田路線では3クラスすべてパーソナルテレビのオンデマンドシステムを搭載している。トルコ発便の機内食のケータリングは2007年からウィーンを本拠地とする「Do&Co(ドコ)」を採用。それまでの2倍の予算をかけるほどコンセプトやメニューにこだわりを持っている。
一方で、成長をめざす上で課題もある。コティル氏は、その一つを「他の航空会社に比べてブランド力が弱いこと」と指摘する。LHやエールフランス航空(AF)に比べると、「欧州の航空会社」のイメージやブランド力が弱いという。現在は、サッカーチームのFCバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドとスポンサー契約を結んだほか、俳優ケビン・コスナーを起用した広告なども活用しブランディング強化をはかっている。
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こうしたTKの成長の最大のバックボーンは、イスタンブールの地理的な優位性といえる。ヨーロッパ、ロシア、CIS、北アフリカの中心に位置し、4時間以内のフライトでその大部分をカバーできるのだ。イスタンブールがその昔、東西の文化が交差する都市だったように、今もイスタンブールは多数の都市をつなぐ役割を果たしている。TKの就航地は2005年から増え続け、2010年にはロサンゼルス、ワシントンDC、ボローニャ、ホーチミン、ソチなどを新規デスティネーションに加え168都市に拡大する予定だ。
こうしたネットワークの拡大にあわせて、もっとも力を入れているのが乗継需要の取り込み。現在イスタンブールに入る旅客のうち乗継旅客のシェアは34%で、ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)のハブであるフランクフルトなどに比べて低い。これは、フランクフルトの人口75万人に比べてイスタンブールは約1200万人が暮らし、国内移動で利用する人も多いことが挙げられる。国内需要がすでに大きな市場であることは明確だが、コティル氏はこれだけではリスクヘッジにならず世界の需要も重要との見方を示す。イスタンブールの乗継の利便性の高さをアピールし、乗継旅客を2012年には50%、2015年には80%にまで拡大させる計画だ。
ただし、そのうえで課題となるのが空港のキャパシティで、現在のアタチュルク空港では目標とする世界の乗継旅客を受け入れることは難しいという。そのため、政府も協力し5年後には新たな空港のオープンを計画している。
コスト構造の強化やサービス向上も成長の鍵
TKの成長のもうひとつの理由は、運航コストを他社よりも抑えられる点。これもイスタンブールの立地が関係している。
どういうことかというと、ロシアや中東、ヨーロッパの各都市までの飛行時間がイスタンブールからでは3、4時間であるのに対し、欧州系航空会社の各ハブ空港からだと2時間程度であることがカギという。飛行機の飛行時間と運航コストは正比例しないため、飛行時間が2時間程度の場合と3、4時間の場合、乗客1名を1キロメートル運ぶ運航コストは後者が前者の2分の1に低下するのだ。
また、TKの所有する130機の機材のうち、ボーイングB737型機などの短距離用機材が全体の3分の1を占めており、大型機材中心の構成よりも運航コスト面に有利になっているという。さらに、2009年から2023年までの15年間で105機を購入する計画を立てており、機齢が若くなることでさらに燃費効率が上がる予定だ。
運航コストを抑える一方、機内サービスには力を入れている。例えば、2009年には日本に乗り入れている全機材を一新。成田路線は2009年10月にボーイングB777-300ER型機を導入しており、ビジネスクラスシートを刷新したほか、ファーストクラスのサービスも開始した。ビジネスクラスのシートはフルフラット仕様で、ファーストクラスは仕切りのある個室タイプを導入。成田路線では3クラスすべてパーソナルテレビのオンデマンドシステムを搭載している。トルコ発便の機内食のケータリングは2007年からウィーンを本拠地とする「Do&Co(ドコ)」を採用。それまでの2倍の予算をかけるほどコンセプトやメニューにこだわりを持っている。
一方で、成長をめざす上で課題もある。コティル氏は、その一つを「他の航空会社に比べてブランド力が弱いこと」と指摘する。LHやエールフランス航空(AF)に比べると、「欧州の航空会社」のイメージやブランド力が弱いという。現在は、サッカーチームのFCバルセロナやマンチェスター・ユナイテッドとスポンサー契約を結んだほか、俳優ケビン・コスナーを起用した広告なども活用しブランディング強化をはかっている。
成田発で楽しむ夜のイスタンブール
TKでは現在、夜のイスタンブールを楽しめるよう
「One Night Istanbul」キャンペーンを展開中だ。こ
れは、成田路線はイスタンブールに到着するのが午後7
時40分であることから、イスタンブール経由でヨーロッ
パや中央アジア、アフリカ、中近東などへ乗り継ぐ旅客
に対し、条件つきで宿泊ホテル1泊分を無償で提供する
というもの。また、夜遅くまで活気ある街イスタンブー
ルの魅力を感じてもらうため、夜に楽しめる観光スポッ
トやレストランなどをウェブサイトで紹介する。夜の到
着が乗り継ぎ客にとってネックだというイメージを逆手
にとり、イスタンブールのもつ多様な表情の一部を見せ
ることでリピートしてもらうねらいだ。また、FITだけ
でなく、旅行会社がパッケージツアーに組み込むことも
可能で、イスタンブールを経由するヨーロッパ商品など
にも活用できる。
1泊分のトランジットホテルはビジネスクラス旅客に
は、ホリデーイン・イスタンブールシティーやオルタキ
ョイ・プリンセス、エコノミークラス旅客にはオールシ
ーズンズやアクギュンなどを用意。乗り継ぎ時間はビジ
ネスクラスが6時間以上、エコノミークラスが10時間以
上必要で、それぞれ24時間以上を超えない場合に利用可
能だ。アタチュルク空港には専用カウンターを設置して
おり、搭乗券を見せて手配できる。また、24時間以内の
国際線乗り継ぎであればゲージを受け取る必要もない。
今回訪れたのは夜のイスタンブールで一番のにぎわい
をみせるタクシム。中心となるイスティクラル通り沿い
のレストランはもちろん、細い路地はさらににぎわいを
見せている。レストランで小皿料理を選んで注文できる
ので、一晩でも色んなトルコ料理が楽しめる。また、食
べ歩きするのもおもしろい。ムール貝にピラフをのせて
レモンをかけていただくミディエ・ドルマスはいくつで
も食べられるほどおいしい。地元民にも人気の一品だ。
取材協力:トルコ航空
取材:本誌 秦野絵里香