トップインタビュー:ニュージーランド航空日本支社長クリス・マイヤーズ氏
顧客満足度や独自性で「世界一」
ニュージーランドのイメージ多様化が最重要課題
今年、設立70周年と日本就航30周年を同時に迎えたニュージーランド航空(NZ)は、先ごろエコノミークラスにNZオリジナルの「フルフラットシート」の導入を発表し、新たな展開をはじめた。これは“量より質”を重視したNZの戦略に沿ったもの。サービスやプロダクトの向上の推進に努め、今年は「エア・トランスポート・ワールド誌」(ATW)のエアライン・オブ・ザ・イヤーを初受賞するなど、高い評価を受けている。一方、内部体制では1月1日付で日本支社の組織を改正し、市場環境にあわせた体制をとった。今年の、そして中長期的な成長に向けた方策を、NZ日本支社長のクリス・マイヤーズ氏に聞いた。
▽関連記事
◆ニュージーランド航空、エコノミーにも「水平シート」−機内設備を刷新へ(2010/01/27)
◆ニュージーランド航空が組織改正、旅行商品のオンライン販売促進も(2010/01/07)
−現在の市場認識をお聞かせください
クリス・マイヤーズ氏(以下、敬称略) 昨年はどの航空会社も同じような状況だが、大きな難局を迎えた年だった。経済危機と新型インフルエンザ騒ぎが同時に起こった影響は大きかった。回復には時間がかかるだろう。特に日本ではそれを感じる。
とはいえ、良い兆候も見えはじめている。昨年は新型インフルエンザの影響で前年比15%減から20%減、数にして1万2000人ほど減少したが、11月から回復しはじめ、12月は好調だった。1月から3月はちょうどトップシーズンであり、レジャー、ビジネスとも引き続き好調だ。
運賃の水準は昨年と同程度だとは思うが、まずはニュージーランドが「量より質」のデスティネーションであることを伝えしたい。料金を安くして渡航者数を増やすことより、質の良さに価値を見出していただくことに重点を置いている。
−プロダクトでは、フルフラットのエコノミークラスが高い注目を集めています
マイヤーズ 新機材のボーイングB777-300ER型機を導入するにあたり、3年前から機内設備について構想を練ってきた。その結果が、エコノミークラスでありながらフルフラットシートを実現した「スカイカウチ」だ。ニュージーランドへの渡航者の多くがレジャー客であり、エコノミークラスでも機内で休めることがどれだけ大切かに目をつけて開発した。非常に単純なつくりでありながら今まで誰も作らなかった、革新的なシートだと自負している。
そしてプレミアムエコノミーのシートは「ビジネスクラスのようにすばらしい」ことを念頭に開発した。一緒に搭乗している人と向かいあって話をすることができる一方で、プライバシーを守りたい人には隣の席の人と顔をあわせないようにすることもできるようにした。もちろん、ビジネスクラスもこれまでの航空機ではありえないシートデザインで、我々だけが提供できるものだ。
機材は今年の11月には納入され、12月から長距離路線であるオークランド/ロサンゼルス/ロンドン線に導入することが決まっている。日本路線への導入は、時期は未定だが、来年中をめどに実現したい。
−ATWのエアライン・オブ・ザ・イヤー2010を受賞されましたが、何が評価されたのでしょうか
マイヤーズ ATWの評価基準は、利益を確保していること、安全性、環境保全の取り組みの先進性など様々あるが、顧客満足度も重要な要素だ。その点でNZはスターアライアンスのベンチマーク試験でも常に最上位にのぼる。また、他の航空会社とは一線を画し常にNZらしくあろうとする、そういった姿勢も評価された。
実は数年前に、“瀕死”の状態から回復したことを評価するATWの「フェニックス(不死鳥)・アワード」を受賞している。以前は公的資金の投入など、現在の日本航空(JL)と似た状況にあったのだが、そこから劇的な変化を示すことができた。倒産から不死鳥のようによみがえり、世界1位の航空会社になれたことは本当に喜ばしく、誇りに思っている。
ただし、今回の受賞を到達点だとは考えてなく、通過点として来年も1位に輝けるよう努力する。スカイカウチなどの新プロダクトは、その努力の良い証明になるだろう。
−1月1日付で日本支社の組織改正を実施されましたが、このねらいは
マイヤーズ 旅行業界の変化にあわせて我々も変わっていかなくてはならない。例えば、オンライン部門をエアニュージーランドトラベルサービスに移管したが、日本でも今後オンライン市場が目覚しい発展を遂げると見ており、そうした市場の変化にも即応できる体制をとったということだ。とはいえ、今後も対面の旅行会社で手配をする人も数多いはずで、オフラインの旅行会社を軽視しているわけではない。コミッションなどを含めて、オフラインの旅行会社とも良好な関係を続けていきたい。
−日本就航30周年を迎えた所感と、今後の方針についてお聞かせください
マイヤーズ 30周年の節目を非常に特別なものと感じている。振り返れば、30年前の航空旅行は快適とはいえないものだった。プロペラ機はうるさく、大きく揺れ、食事も悪く、空の旅は疲れるものだった。長い道のりを経てそれらを改善してきているが、今後はむしろ元気になるようなサービス、プロダクトの提供をめざすことになるだろう。
最も重要なチャレンジは、この2年間続けてきたことだが、デスティネーションとしてのニュージーランドのイメージを多様化することだ。ニュージーランドの大自然は常に美しくすばらしい魅力があり、これからもニュージーランド旅行の中心であり続けるだろう。しかしそれでは十分ではなく、もう一歩踏み込んだ魅力を見出してもらうことが必要だ。
今回の組織改正もそれを意図したもので、新しいニュージーランドの魅力をエアニュージーランドトラベルサービスから発信し、旅行会社にも伝わるようにしたいと考えている。NZとしてニュージーランドのイメージ多様化を先導していきたい。
−ありがとうございました
<過去のトップインタビューはこちら>
ニュージーランドのイメージ多様化が最重要課題
今年、設立70周年と日本就航30周年を同時に迎えたニュージーランド航空(NZ)は、先ごろエコノミークラスにNZオリジナルの「フルフラットシート」の導入を発表し、新たな展開をはじめた。これは“量より質”を重視したNZの戦略に沿ったもの。サービスやプロダクトの向上の推進に努め、今年は「エア・トランスポート・ワールド誌」(ATW)のエアライン・オブ・ザ・イヤーを初受賞するなど、高い評価を受けている。一方、内部体制では1月1日付で日本支社の組織を改正し、市場環境にあわせた体制をとった。今年の、そして中長期的な成長に向けた方策を、NZ日本支社長のクリス・マイヤーズ氏に聞いた。
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◆ニュージーランド航空、エコノミーにも「水平シート」−機内設備を刷新へ(2010/01/27)
◆ニュージーランド航空が組織改正、旅行商品のオンライン販売促進も(2010/01/07)
−現在の市場認識をお聞かせください
クリス・マイヤーズ氏(以下、敬称略) 昨年はどの航空会社も同じような状況だが、大きな難局を迎えた年だった。経済危機と新型インフルエンザ騒ぎが同時に起こった影響は大きかった。回復には時間がかかるだろう。特に日本ではそれを感じる。
とはいえ、良い兆候も見えはじめている。昨年は新型インフルエンザの影響で前年比15%減から20%減、数にして1万2000人ほど減少したが、11月から回復しはじめ、12月は好調だった。1月から3月はちょうどトップシーズンであり、レジャー、ビジネスとも引き続き好調だ。
運賃の水準は昨年と同程度だとは思うが、まずはニュージーランドが「量より質」のデスティネーションであることを伝えしたい。料金を安くして渡航者数を増やすことより、質の良さに価値を見出していただくことに重点を置いている。
−プロダクトでは、フルフラットのエコノミークラスが高い注目を集めています
マイヤーズ 新機材のボーイングB777-300ER型機を導入するにあたり、3年前から機内設備について構想を練ってきた。その結果が、エコノミークラスでありながらフルフラットシートを実現した「スカイカウチ」だ。ニュージーランドへの渡航者の多くがレジャー客であり、エコノミークラスでも機内で休めることがどれだけ大切かに目をつけて開発した。非常に単純なつくりでありながら今まで誰も作らなかった、革新的なシートだと自負している。
そしてプレミアムエコノミーのシートは「ビジネスクラスのようにすばらしい」ことを念頭に開発した。一緒に搭乗している人と向かいあって話をすることができる一方で、プライバシーを守りたい人には隣の席の人と顔をあわせないようにすることもできるようにした。もちろん、ビジネスクラスもこれまでの航空機ではありえないシートデザインで、我々だけが提供できるものだ。
機材は今年の11月には納入され、12月から長距離路線であるオークランド/ロサンゼルス/ロンドン線に導入することが決まっている。日本路線への導入は、時期は未定だが、来年中をめどに実現したい。
−ATWのエアライン・オブ・ザ・イヤー2010を受賞されましたが、何が評価されたのでしょうか
マイヤーズ ATWの評価基準は、利益を確保していること、安全性、環境保全の取り組みの先進性など様々あるが、顧客満足度も重要な要素だ。その点でNZはスターアライアンスのベンチマーク試験でも常に最上位にのぼる。また、他の航空会社とは一線を画し常にNZらしくあろうとする、そういった姿勢も評価された。
実は数年前に、“瀕死”の状態から回復したことを評価するATWの「フェニックス(不死鳥)・アワード」を受賞している。以前は公的資金の投入など、現在の日本航空(JL)と似た状況にあったのだが、そこから劇的な変化を示すことができた。倒産から不死鳥のようによみがえり、世界1位の航空会社になれたことは本当に喜ばしく、誇りに思っている。
ただし、今回の受賞を到達点だとは考えてなく、通過点として来年も1位に輝けるよう努力する。スカイカウチなどの新プロダクトは、その努力の良い証明になるだろう。
−1月1日付で日本支社の組織改正を実施されましたが、このねらいは
マイヤーズ 旅行業界の変化にあわせて我々も変わっていかなくてはならない。例えば、オンライン部門をエアニュージーランドトラベルサービスに移管したが、日本でも今後オンライン市場が目覚しい発展を遂げると見ており、そうした市場の変化にも即応できる体制をとったということだ。とはいえ、今後も対面の旅行会社で手配をする人も数多いはずで、オフラインの旅行会社を軽視しているわけではない。コミッションなどを含めて、オフラインの旅行会社とも良好な関係を続けていきたい。
−日本就航30周年を迎えた所感と、今後の方針についてお聞かせください
マイヤーズ 30周年の節目を非常に特別なものと感じている。振り返れば、30年前の航空旅行は快適とはいえないものだった。プロペラ機はうるさく、大きく揺れ、食事も悪く、空の旅は疲れるものだった。長い道のりを経てそれらを改善してきているが、今後はむしろ元気になるようなサービス、プロダクトの提供をめざすことになるだろう。
最も重要なチャレンジは、この2年間続けてきたことだが、デスティネーションとしてのニュージーランドのイメージを多様化することだ。ニュージーランドの大自然は常に美しくすばらしい魅力があり、これからもニュージーランド旅行の中心であり続けるだろう。しかしそれでは十分ではなく、もう一歩踏み込んだ魅力を見出してもらうことが必要だ。
今回の組織改正もそれを意図したもので、新しいニュージーランドの魅力をエアニュージーランドトラベルサービスから発信し、旅行会社にも伝わるようにしたいと考えている。NZとしてニュージーランドのイメージ多様化を先導していきたい。
−ありがとうございました
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