インタビュー:フィンエアー経営戦略管理担当副社長ペトリ・コステルマー氏

  • 2010年2月12日
待望の成田線デイリー化、日本路線の成長を確信
アジア戦略強化、ヘルシンキ経由北米も視野に


 フィンエアー(AY)は今年の夏スケジュールから、成田線と中部線を増便する。特に成田線はAYが待望したデイリー化だ。また2009年12月には、アジアとヨーロッパを最速最短で結ぶヘルシンキの地理的優位性をいかした戦略「VIA HELSINKI」の強化を目的に、ヘルシンキ空港の拡張にあわせてラウンジとスパを開設した。景気後退により世界中で多くの航空会社が苦しい経営を強いられるなか、積極的に展開するAYのねらいと次の施策について、拡張を終えたばかりのヘルシンキ空港で、AYコマーシャル・ディビジョン・ネットワーク経営戦略管理担当副社長のペトリ・コステルマー氏に聞いた。(聞き手:本誌編集長 松本裕一)


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−2010年の市場展望はどのようにご覧になっているでしょうか

ペトリ・コステルマー氏(以下、敬称略) 2009年は旅客数が約10%から15%減少するなど需要は低迷し、ビジネスクラスの旅客も約30%減少している。ただし、成田線の旅客数は2009年1月から9月の数字で25%増加した。これは座席供給量の増加によるもので、ロードファクターも全路線平均の80%を上回っている。

 こうした状況のなかで予想をするのは非常に困難だが、少なくともさらなる減少はなく2009年の水準を維持でき、中国やインドなど一部の市場では成長も可能と考えている。座席供給量も今のところ全体で2.5%増を想定している。ただし、業務渡航でエコノミークラスを利用するといったコスト削減の傾向は変わらないはずで、イールドは低いままだろう。旅客数は数%伸びるはずだが、運賃はほとんど変わらないだろう。


−日本市場についてはいかがでしょうか

コステルマー 日本市場には期待している。日本の消費者はとても豊かであり、たとえ大きな市場拡大が望めないとしても、安定した人数が海外旅行をする。その意味で、今回の増便によって増える座席も売れると確信している。座席を増やすことが旅客数の増加とマーケットシェアの拡大につながることは、これまでの経験で分かっていることだ。

 関空路線は夏スケジュールのデイリー運航を長年維持しており、今後も継続できると考えている。成田路線と比較して競争が少ないことがメリットだ。その意味では中部路線も、現状はかんばしくないものの、AYとルフトハンザ・ドイツ航空(LH)しか欧州への直行便を運航しておらず、関空路線よりもさらに条件が良いといえる。だからこそ増便するのであり、この増便が業務渡航需要の取り込みにも効果を発揮すると考えている。


−「VIA HELSINKI」戦略の進捗は

コステルマー これまでのところ成功している。ヘルシンキ経由が最速最短であることを理解してもらうには時間が必要だが、これまでの取り組みにより順調に浸透している。一度AYを利用すれば、ヘルシンキが乗り継ぎに適した場所だと理解して戻ってくる。アジア路線に関係する収益は、2008年の段階で貨物をあわせて全体の40%であったが、今は50%近くにまで伸びた。また、旅客数は2004年から2009年にかけて毎年約25%増加している。
 

 今後の展開では、アジアとヨーロッパをつなぐことが最大の戦略であることは変わりないが、アジアと北米東海岸を結ぶ可能性も探りたい。2010年の夏スケジュールではニューヨークにデイリー、トロントに週5便で就航する。大きな可能性があると判断できれば、例えばシカゴやワシントン、ボストンなどへの路線拡大もはかりたい。主要ターゲットはインドや中国など北米への直行便が不足している市場だが、日本の3路線にも同日接続するのでどのような反応が出るか楽しみにしている。
 
 


−アジア戦略の次の一手はどのようなものになるでしょうか

コステルマー 現在就航している日本、韓国、中国、インド、タイに加えて、新路線として中国、インド、東南アジアの合計5都市への就航を考えている。現在は就航予定地の優先度合いを検討しているところで、新しい機材が入る2011年の上旬をめざす。

 また、成田路線ではダブルデイリーを実現したいと考えている。ただし、実現は先のことで、まずはデイリー運航できるようになったことを喜んでいる。羽田空港が国際線に少しずつ開放されつつあることは非常に歓迎すべきことだが、問題は長距離路線の場合、深夜早朝枠のみが対象になっていることだ。将来的に昼間でも就航できるようになってほしいと願っている。


−各国の航空会社が協力関係を強固にしようとしていますが、動向をどう見ていますか

コステルマー アメリカン航空(AA)との間で、すでにフィンランド/米国間の共同事業についてATIの認可を受けているほか、ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)、マレブ・ハンガリー航空(MA)とも認可を受けた。ATI取得により運賃体系やシームレスな旅行の実現、スケジュールなどの柔軟性が増すため、今後もワンワールドパートナーとの共同事業を増やそうとしている。また、路線網の効率的な維持・拡張のため他社の路線活用についても検討しており、協議をすすめている会社もある。

 買収などによるグループ化の動きでは、LH、エールフランス航空(AF)が積極的で、最大のコンソリデーターだ。現在のところ、AYとしては独立した航空会社でいたいと考えているが、同時に航空業界がどのように発展していくのかも見極めなければならない。もし独立した航空会社がAYだけになってしまえば何らかの決断を下さなければならないだろう。


−今回のヘルシンキ空港の拡張が持つ意義は

コステルマー 最も大きな要素は、新しいバゲージハンドリングシステムが稼動したことだ。近年の旅客数の増加でバゲージハンドリングがボトルネックになっていたが、新システムの導入によって処理能力が増えるため、座席販売機会の増加につながると期待している。また、35分のMCTも維持できる。

 2つめに大きな要素は、アジア路線向けのゲートが増えたことだ。これまでの最大5ヶ所が、8ヶ所に増えた。これはアジアの8都市への路線を同時に運航できることを意味し、アジア路線の拡充が可能になる。

 3つめはもちろん、新しいラウンジとスパ施設だ。路線によって乗り継ぎ時間が1時間半から2時間になる場合でも、サウナやスパ、ラウンジを楽しんでもらえるようになった。

 今回で、現行のターミナルの拡張は終了となる。今後は新しいターミナルの建設が必要で、計画では2015年をめどとしている。新ターミナルでは、1つのターミナルをAYとワンワールドパートナーが使用することになるだろう。

 いずれにしても、現在の市場環境があまり良くないことは周知の事実だが、2010年以降は拡大を予測しており、新しくなったこの空港をできる限り活用していきたい。


−ありがとうございました