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新春トップインタビュー:阪急阪神交通社HD代表取締役社長の小島弘氏

  • 2010年1月7日
4月に向けた統合準備は順調、今後はネット販売に注力

 2009年は新型インフルエンザの発生で各社大きな打撃を受けた中、阪急交通社は2009年度上期、他社と比べて業績が好調だった。海外旅行取扱額は他社に比べ下げ幅が少なく、第2四半期(7月〜9月)は前年比13.7%増と2桁成長。上期の総取扱額は約1860億円と、業界第3位となった。この結果を追い風に、2010年は4月に阪急交通社と阪神航空の統合を予定し、新体制で新たな展開もありそうだ。今後の方針と見通しを、阪急阪神交通社ホールディングス代表取締役社長の小島弘氏に聞いた。(聞き手:本誌編集長 松本裕一)



−2009年を振り返っていかがでしたか。特に、上期の好業績の要因を教えてください

小島弘氏(以下、敬称略) 4月の下旬に新型インフルエンザという非常にインパクトのある出来事があって、本当に大変な状態となったが、5月末には弱毒性とわかり、事態が沈静化してきた。それがひとつの潮目と判断して、積極的に宣伝広告を打った。マーケットがリカバリーしていくタイミングにあわせて迅速に対応したところ、旅行に行きたくてうずうずしていた方々から反応していただいた。当社はメディア販売なので即効性がある。それが功を奏したと思っている。

−その結果、上期の総取扱額は第3位となりましたが、どのように評価していますか

小島 当社は海外旅行比率が高いため、取扱額が大きい。また、業務渡航の比率がそれほど高くないため、2008年末からの世界同時不況で各社一気に業務渡航が落ち込んだ中で、他社より影響が少なかった。そういったいろいろな結果であって、順位は意中にない。まずは利益を確保することが目標。

−2010年4月の阪急交通社と阪神航空の統合に向け、現状はどのようになっていますか

小島 2008年4月に、旅行事業の阪急交通社と阪神航空、国際輸送事業の阪急エクスプレスと阪神エアカーゴの4社を傘下に持つ阪急阪神ホールディングスの中間持株会社として阪急阪神交通社ホールディングスが発足。それを2010年の4月に再々編すると明言した。貨物事業は、不況による打撃に対応するために2009年10月に前倒しして阪急阪神エクスプレスとして2社を統合。旅行事業は2010年4月1日に阪急交通社が阪神航空のフレンドツアーを統合する形で新しく阪急交通社がスタートする。業務渡航は阪急阪神ビジネストラベルという新会社が4月1日に発足する。 

 4月以降は2社が続けてきたものを引き継ぎ、互いのブランド戦略をしっかり守っていく。阪急はメディア販売が主力、阪神航空はホールセールのフレンドツアーが主流だが、今後は直販も伸ばしていく。

 業務渡航は、阪急・阪神ほぼ同規模で、2社合計で年間取扱額が約400億円のボリュームになる。その意味で、仕入力はアップすると思う。ここを別会社にするのは、将来、航空会社との関係で旅行会社のアライアンスの動きが出てきたとき、スピーディに動ける。阪急交通社の仕入力やバックヤードは利用し、総務など管理部門の機能やシステムの効率化をすすめる予定だ。

−統合でどのような効果がもたらされると見ていますか。社内の雰囲気はどうですか

小島 重複する業務渡航が一緒になることでボリュームアップするため、グループにとってメリットが大きい。旅行もカーゴも人材が生命線で、ベテランの社員が一緒にやることも大きなプラスになる。

 社内感情など2社が統合する上で心配されるようなことは一切起きていない。新人から幹部クラスまでいろいろな階層で分科会を設け、阪急阪神交通社グループらしく、異なる制度やシステムの相互理解を深めながら、2年間かけて進めてきた結果だ。今は、いろいろな分野で細部にわたって準備を進めており、総合的にみて順調にいっている。

−ネット販売は今後どうされていきますか

小島 通販が中心である当社においては、ネット販売は非常に親和性があり、その強みがいかせる重要な販売手法の一つであると考えている。全体的な取扱人数が伸び悩む中、インターネットからの集客は毎年増加傾向にあり、インターネットをきっかけの媒体として申し込んだ数を加えるとシェアは20%近くにまでなる。

 今では、インターネットは販促媒体としても申し込みツールとしても、当社にとっては欠くことのできないものであり、過去数年にわたって行ってきたシステム開発への投資は今後も積極的に行なっていく予定だ。

−具体的に、どのような形でネット販売に注力していきますか

小島 ネット販売といっても、結局は旅行商品競争力が重要であると認識している。当社がメインで展開している紙媒体同様に、インターネットでも拡販することは基本中の基本である。今後は、これらの既存媒体とのクロスメディアがますます重要になると思われるので、引き続きこれらの連携を強めていくようにしたい。当然、そこには携帯端末も戦略の一部に入っており、今後のマーケット動向を見ながら、時代にマッチした進化をさせていく。

 一方で、「ネット上ですべてを完結したい」というユーザーが増えつつあるのも事実。現在、当社のネット会員はPCとモバイルあわせて100万人程度であるが、この層に対しては選択肢の多いフリープラン型ツアーのラインナップを充実させる一方で、検索機能、マイページなど、顧客ニーズに応えられるような機能を順次強化し、会員を増やしていきたい。

−コスト削減の計画、人材についてのお考えを聞かせてください

小島 当社は人が財産なので、人材は守っていく。安易なリストラには手をつけるべきでない。トラピックスの旅行造成のチームは、若い人にどんどん任せて商品づくりをやってもらい、それが当たっている。若い人の方が旅行の企画力、マーケット動向に対する触覚が鋭いところがある。ベテランの成功体験だけでなく、若い人の感性をいかそうとするのが当社の特長だ。

 もともと現場の力が強く、トラピックスの造成チームは企画現場にかなりの権限を任せている。メディアはスピードが厳しく、先週は何が当たったか見極め、今週はそれに対して反応しないといけない。方向性を決めたら滞りなく「すっ」と進めるのが大切だ。

−コミッションがなくなることについて、今後の航空会社と旅行会社との関係もあわせ、お考えを聞かせてください

小島 フィービジネスへの移行ということで、サービスチャージをお客様からいただくという取り組みはすでにされている。さらに、ボリュームを持っていると、航空会社との個別の交渉が有利になりやすいと考えている。

 航空会社との関係は、動向を見ながら対応していくというスタンスだ。旅行会社が力を結集してアライアンスを組むことは、現実に起こってくると思う。

−2010年の旅行市場はどのようになると見ていますか

小島 業務渡航が戻らないと、海外渡航者数も右肩上がりは難しい。少子高齢化、高い失業率、景気好転が見込めない状況と、マーケットは決して明るい状態ではないが、悲観はしていない。
例えば、前原国土交通大臣は観光政策に積極的。観光関連予算の要求額を4割増にしたり、日中韓観光大臣会合での「東アジア観光大交流時代」に向けた話しあいなどは、明るい材料だ。特に中国からのアウトバウンドには期待しており、門を開いてくれれば参入していきたい。

−2010年の新年のメッセージ、抱負をお願いします

小島 常に社員に言っているのは、悲観的になるなということ。悲観的な心理では明るい考えは生まれない。旅行は明るい産業でなければいけない。当社としては、高品質なサービスをベースに、高い顧客支持率と安定的な利益確保を目標に一丸となって頑張っていきたい。


ありがとうございました


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