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現地レポート:インドネシア、時流にあったエコ、CSR、健康をテーマに

  • 2009年12月11日
これからの時代に求められる旅行
インドネシアでエコ、CSR、健康をテーマに


 世界的に環境保全の必要性が叫ばれる昨今、観光面でエコの要素が求められる傾向が高まっている。一般のレジャー旅行のみならず、とりわけ社会的責任(CSR)の一環としてそうした活動を積極的に実施する企業でもこうした志向が強い。観光と懇親を目的とした社員旅行を敬遠し、CSRをまっとうして社員にも喜ばれる旅行先のアクティビティとして環境活動を取り入れたいという要望が多く、今後ますます注目されることは必至だ。アクティビティだけでなく、環境に配慮した宿泊施設を利用することでエコ旅行は完成する。インドネシアで見つけた究極のエコ旅行を紹介する。


“歩けば緑が増える”イベントに参加、王宮での晩餐会も

 ボロブドゥールやプランバナンといった世界遺産が点在する古都・ジョグジャカルタ。2006年のスマトラ中部地震による被害から立ち直り、活気を取り戻しつつある同地で、昨年からロイヤルシルク財団主催の『世界遺産ウォーキングイベント』が開催されている。2回目となる今年は日本の「ウォーキング協会」から数十名の参加者があったほか、在インドネシア大使の塩尻孝二郎氏をはじめインドネシア在住の日本人の参加も多く見られた。また、2009ミスユニバース・ジャパンの宮坂絵美里氏も参加し、現地でも大きく報道されている。

 イベント名からわかるように、同イベントは世界遺産を歩くのが主旨。2日間にわたって開催され、1日目はより市内に近いプランバナン遺跡公園とその周辺を、2日目はボロブドゥール遺跡をスタート地点に周辺を散策する。どちらも5キロメートル、10キロメートル、そして25キロメートルと3つのコースが用意されており、当日の体調や気分によって自由に参加することができる。また、海外からの参加者には2日分のウォーキングのほか、ジョグジャカルタ王室所有の植樹地での植樹と王宮での晩餐会がセットとなる。一般では入ることのできない王宮での食事もさることながら、ガムランの演奏とインドネシアの伝統舞踊のショーが見られるので、それだけでもうれしいアクティビティだ。

 主催のロイヤルシルク財団を支持し、イベント開催にあたりジョグジャカルタ・ウォーキング協会を立ち上げたジョグジャカルタ王室のパンバユン王女はいう。「そもそもは地震被害からの復興をめざし、地元の人々へ向けたイベントだったが、いろいろな国の人々を招聘し、交流することで地元の発展につながる。国際的なイベントにしていきたい」。今年度は韓国や中国からも参加者があり、来年度はヨーロッパやオーストラリアなどからの参加も見込まれている。ウォーキングには地元の学生らも参加し、たどたどしい英語ながら積極的に外国人の参加者に話しかけて、交流がなされていた。

 世界遺産ウォーキングは、被災地である地域に貢献し、さらに植林で環境へ配慮し、また歩くことで社員の健康をも配慮するという、まさにCRSの追求にほかならない。観光的要素も十分に満たしている好プログラムである。


究極のエコをめざしてグリーンスクールで学ぶ

 バリ島はウブドの町から30分ほど離れたジャングルの中、ぽこんと拓けた運動場で子どもたちが元気に走り回っている。奥へ進むと、竹でできた教室が現れる。先生の話を熱心に聴く生徒たちの間を、森の中を渡ってきた風や散歩中のにわとりが通り抜けていく。

 カナダ人実業家のハーディ夫妻によって運営されている「グリーンスクール」は2歳から高校3年生までの子どもが通うことができる学校だ。生徒の2割は地元の奨学生で、あとはこの学校の教育方針に賛同する人々の子女が通う。1年間だけ“留学”するためにわざわざニューヨークからバリ島へ家族で移り住んできている子もいる。

 この学校の教育は、自然学習を通して環境との共存とそれを維持する方法を子どものうちから徹底的に学ぶというもの。カカオの実からチョコレートを作ったり、広大な敷地内をフィールドワークしたりとカリキュラムも興味深い。ただの自然教育だけでなく、数学や科学といった授業もなされ、卒業すれば大学へ進学する資格を得る一般校である。

 また、社会人向けの環境学習の講義も可能で、希望があれば日本語の通訳をつけることもできるという。敷地内には宿泊施設もあり、食事をするところもあるので数日間滞在しての学習も可能だ。同校では来年から英語学習(ESL)を導入することが決まっており、サマースクールなどで受講することができるが、これは大人でもアレンジ可能とのこと。自然学習だけでなく、語学研修として利用するのもいいかもしれない。

 環境との共存について学ぶことは大人にとっても十分意義深い。環境に対する意識が高まっている今、個人的にこうした学習に興味を示す人も多く、社員旅行の目的地やアクティビティとしても大変喜ばれるのではないだろうか。


地元に貢献するリゾート、身体の中から健康に

 エコや健康、CSRがテーマとなる旅行では、宿泊する施設もテーマからぶれないことが望ましい。環境や地元に配慮しつつも、“贅沢な”滞在が可能なリゾートがある。

 ジョグジャカルタの市街から車で約2時間、標高900メートルの高所にある「ロサリ・スパ・リトリート&コーヒープランテーション」。農園ではコーヒーはもちろん、フルーツやハーブ類、野菜が育てられており、リゾートで供される食事やスパトリートメントに使われている。総支配人のトーマス・ウォルター氏は世界有数のホテルのグランドシェフを勤めてきた経験から、細部にわたり料理に気を配っている。採れたての有機野菜や厳選された食材で作られた料理の数々は一流レストランにひけをとらず、滞在をより豊かで満足のいくものにしてくれる。

 ヴィラタイプの部屋からは農園が見られ、日本語の話せるスタッフとともに散策するアクティビティも。コーヒーの種類や育ち方、野菜の育てられる環境などを楽しく学んだあと、焙煎したてのコーヒーをいただく、充実した小一時間だ。スパでもコーヒーを用いたオリジナルトリートメントもある。世界遺産ウォーキングイベント会場からは遠いが、イベント後日にステイすれば、ウォーキングの疲れを癒し、健康的に過ごすことができるだろう。

 また、バリ島にもこのような滞在ができるリゾートがある。グリーンスクールから車で30分ほど、バリ島初というホリスティックスパリゾートの「バグース・ジャティ」は、バリヒンドゥの始祖の村といわれるジャティ村に位置する。周囲ののどかさもさることながら、敷地内は豪奢なヴィラの合間に農作物が植えられ、まさにのんびりムード。こちらも標高765メートルという高所にあるため、渓谷から涼しい風が吹き室内ではエアコンがなくても過ごせるほどさわやか。鳥の鳴き声やせせらぎ、木々のざわめきなどを聴きながらぼんやりしていると、見も心も洗われるような気持ちになる。

 敷地内に広がる菜園で自分の食べる食材を自分で採集するのもいいが、エクスカーションで付近の農園を見てまわれば、バリ島に伝わる有機農法を学び、地元の人々と触れあうチャンス。ガイドつきのサイクリングツアーもあり、観光しながら学び、身体を動かすことができるのだ。

 また、身体と精神のバランスをとって健康に導くことをテーマとしたリゾートであるため、ヨガやマッサージなどのレッスンもある。インドネシアの“サプリメント”で、草木や果物などから作られる「ジャムウ」を作る体験もあり、楽しく健康を追求できるのが魅力だ。どちらも「エコ」「健康」「自然との共存」といったキーワードに敏感な人々には、このうえなくうれしいリゾートである。


▽ロイヤルシルク財団
http://www.jog-ja.com/

▽グリーンスクール
http://greenschool.org/


取材協力:ガルーダインドネシア航空
取材:岩佐史絵