現地レポート:ベルギー フランダースツアーに彩りを添える個性豊かな町へ

  • 2009年10月16日
フランダースツアーに幅広い客層に向けた新テーマ
モノ商品、隣国周遊などのバリエーション拡充を


 ベルギー北部のフランダース地方。ツアーでは首都ブリュッセルをはじめアントワープ、ゲント、ブルージュを巡るのが一般的なコースだが、フランドルの魅力はそればかりではない。ブリュッセル近郊には「ブリューゲル街道」や世界遺産「大ベギン会院」のあるルーヴェン、王立カリヨン学校のあるメッヘレンなど、魅力的な地域あるいは小さな町がある。またアントワープにはモダンなレストランやショップ、ホテルなど、女性層に支持されそうな新しい素材も登場しており、テーマや近隣諸国と組みあわせることで個性的な商品が作れそうだ。このほど旅行会社を対象に実施した研修旅行に同行してみつけた、ツアーに彩りと個性を添えるフランダースの魅力を紹介する。


16世紀の面影を残すブリューゲル街道へ

 ベルギーでは、ルーベンスやブリューゲル、ファン・アイクなどフランドル派の画家は大きな観光テーマの一つだ。その一人、ピーター・ブリューゲル(大ブリューゲル)は農民画家として日本でも人気が高い。ブリュッセルから車で30分から40分ほど南のフレミッシュ・ブラバント州に広がるパヨッテンランド地域はブリューゲルが描いた田園風景が残っており、近年「ブリューゲル街道」としてプロモーションをしている。

 ブリューゲル街道は約8キロメートルにわたる散策ルートで、作品に登場する建物などが残る場所に複製画のパネルを設置し、旅行者がそれを見ながらブリューゲルの作品世界に浸り、16世紀の田園風景の面影をたどることができるものだ。ブリュッセルの王立美術館で彼の作品を鑑賞した後、ブリューゲル街道へ向かうコースはリアリティが増して効果的だろう。

 またブリューゲル街道から20分ほどのところには、美しい庭園を擁する16世紀のガースベーク城が、シント・ピータース・レーウにはコロマ・バラ園もある。庭園は4月から9月頃まで美しい花々やベルギー独特のガーデニングが楽しめ、特にガースベーク城の庭園は団体でなければ入れない。「刺繍のモチーフのような植栽がきれいで面白い」「入場無料で独特の庭園が楽しめるのがいい」と参加者にも好評だった。

 ちなみに、ブリュッセルの王立美術館の別館として2009年5月にオープンしたマグリット美術館は、1日の入場を450人と制限しているため、特にハイシーズンは個人の場合、事前申し込みをしていないと鑑賞できない可能性がある。ツアーでは美術館専属の日本語ガイドを予約することで日本語での解説が聞けるうえ、並ばずとも入館できるので、ツアーに組み込むメリットがあるといえるだろう。


ブリュッセル郊外の町ルーヴェンとメッヘレン

 ブリュッセルから20分から30分ほどのルーヴェンは、フランダースの世界遺産「大ベギン会院」がある町。王立カリヨン学校のあるメッヘレンとともに、ブリュッセル滞在時のエクスカーションやアントワープ移動時の観光に利用したい。

 ルーヴェンは15世紀にローマ教皇によって建てられた欧州屈指のルーヴェン大学がある学生の町で、現在でも人口の3割を学生が占める。観光の中心となる世界遺産の「大ベギン会院」はフランダース地方の各地にあるもののなかでも最大規模のものだ。「ベギン会」とは在俗して共同生活をしつつ信仰活動をする女性たちのコミュニティで、中世の十字軍を期に寡婦や独身女性が増加したことが誕生のきっかけのひとつだ。欧州各地に存在したが、フランダース地方だけが20世紀に廃止されるまで存続したという。城壁に囲まれた旧市街に連なる赤レンガの建物は築15世紀から19世紀と幅広い。ベギンの女性たちの素朴な生活を思わせる味わいがあり、参加者からは「散策にいいのでは」という声も。歴史的な旧市街を抜けたとたん、学生の若々しい活気が感じられるシティへと変貌する新市街との対比も面白い。

 一方、メッヘレンは運河とカリヨン学校の町。運河沿いの散策路など「運河の町」を打ち出した整備計画が進められている。運河沿いにレストランやカフェが並び、観光船を眺めながらのんびり過ごしたいと思わせられる。運河はゲントやブリュージュにもあるが、小ぢんまりとした素朴な生活感がこの町の魅力だ。メッヘレンで組み込みたいのは王立カリヨン学校である。「フランダース地方の鐘楼群」として世界遺産に登録されているように、カリヨンはこの地方の象徴のひとつだ。学校では世界各国から集まってきた約60人の学生が学んでおり、学習する学生の演奏を聴くことができる。水辺のカフェで地ビールを飲みながら、時折少したどたどしいカリヨンの音に耳を傾けるのも、メッヘレンならではの味わいといえるだろう。

 このルーヴェンとメッヘレンは、いずれも町がコンパクトで一人歩きがしやすい。大型ホテルが少ないため宿泊は少人数ツアー向きだが、ブリュッセルに比べると物価も安いので「暮らすような旅」の拠点にしても面白い。メッヘレンにあるホテル「マルティンズ・ペーターズホフ」は教会を改装したホテルで、内陣のステンドグラスなど教会装飾がそのままに活かされている。「自分でも泊まってみたい」「カップルやハネムーナーにいいのでは」など参加した旅行会社にとっても非常に興味深いものだ。



主力3都市、アントワープ、ゲント、ブルージュの魅力

 中世からハンザ交易都市として新進の気鋭溢れる商人が集まり、16世紀に最盛を誇ったアントワープは、現在もトレンド発信地のひとつとなっている。町には若い女性が喜びそうなレストランやホテル、ショップが連なる一方で伝統的なスタイルで販売を続ける手袋の店などもあり、「オシャレなショーウィンドウを眺めているだけでも楽しい」「町も安全で歩きやすい。若い女性グループや母娘で自由散策が楽しめそう」といった意見が口々にあがった。

 歴史施設では、世界遺産のプランタン・モレトゥス印刷博物館を組み込むのもいい。16世紀に初めて量産印刷が行なわれた工房で、アントワープが昔からの情報発信地であった歴史が垣間見えて面白い。また、定番の聖母大聖堂のほか、マイエル・ヴァン・デン・ベルグ美術館を訪れてもいいだろう。個人が趣味で集めた多岐にわたるコレクションで、一見統一性のない、しかし確かな審美眼により集められた芸術品はどれも見応えがあるものだ。

 赤レンガの街並みが続くフランダース地方の都市で、個性的な魅力を放つ町がゲントだ。神聖ローマ皇帝カール5世の生誕地として知られ、堅固な城と運河沿いに石造りのギルドハウスがずらりと並ぶ風景は、これまでの都市とは趣を異にし、男性的な魅力が感じられる。運河船をチャーターしてのクルーズは町を川から眺める視線が新鮮だ。アペリティフのサービスもあり、ツアーで利用すれば気兼ねなく楽しむことができるだろう。

 運河沿いのギルドハウスが並ぶ一角に、2007年に営業を開始したホテル「マリオット・ゲント」がある。中世のビール工場の面影を残す建物の玄関をくぐると一転、内部はモダンな造りで、そのコントラストには驚かされるほどだ。全150室で裏にはバスを停めることができ、グループツアーでも利用できる。

 男性的なゲントに対し、ブルージュは女性的な優しい美しさにあふれた世界遺産の町だ。ここに08年にオープンしたのが5ツ星の「ケンピンスキー・ホテル・デューク・パレス」だ。その名の通り、ブルゴーニュ公の住居だった建物で、全93室。スイートにはすべてブルゴーニュ公ゆかりの歴史的人物の名が付けられている。チャペルではカクテルパーティも開催でき、MICEでの利用も可能だ。運河クルーズや美術館見学とともに「高額商品に入れてみたい」という声もあがっていた。



グルメやスイーツなど多様なテーマで商品造成を

 ベルギーは小さな国だけにコンパクトで移動がしやすく、短期間で様々な都市や町を巡ることができる。また食事も非常に洗練されている。チョコレート店にしてもブリュッセルにあるノイハウスやゴディバといった老舗からその町だけの家族経営の店まで幅広く、女性の多いツアーには各町の名店巡りを入れても面白いだろう。また、今回の研修で訪れたレストランはいずれも大体40ユーロほどの3コースメニューだが、レストランの雰囲気もさることながら「ベルギーの食事がこんなに美味しいとは思わなかった」と非常に好評だった。

 研修旅行ではブリュッセルに滞在しつつブリューゲル街道を巡り、翌日にはルーヴェン、メッヘレンを訪れアントワープに宿泊。アントワープの市内見学後にゲント、ブルージュへと向かったが、これはそのままモデルコースとして活用できる。「アントワープで2泊し街歩きを加えてもいい」という意見もあり、各社の商品への反映が期待されるところだ。「現在市場に定着しているベルギーツアーに幅を持たせたい。アートや歴史、食などテーマは多彩なので、ベルギーモノ、あるいはオランダなど近隣諸国を組みあわせるなど特徴のある商品造成をお願いしたい」と、ベルギー・フランダース政府観光局局長の須藤美昭子氏は話す。


フィンエアー、欧州への最短フライト−所要9時間30分
3月から成田線デイリー運航も開始へ

 フィンエアー(AY)の強みは、欧州へ平均約9時間
30分というフライト時間の短さにある。その理由は
日本から欧州へ入る航行路線上にヘルシンキが位置
するという地の利だ。つまり日本から航行路線に沿
ってヘルシンキに到着し、同地から次の目的地まで
無駄のないルートでの航行が可能となる。例をあげ
ると成田/ブリュッセル間は乗り継ぎ時間を含め計
13時間50分、中部発の場合は計14時間20分、関空発
は計14時間10分で到着できる。特に成田発、中部発
は現在のところ最も短いフライト時間で、この点は
ベルギーをはじめ、欧州商品を造成する際の大きな
ポイントのひとつなるだろう。

 この「フライト時間の短さ」に加え、AYは2010年
3月の夏期スケジュールから成田/ヘルシンキ線の
デイリー運航を予定しており、利便性がいっそう
向上する。さらに中部は1便増え週5便となり、関空
の週7便とあわせると日本から週19便が運航される
こととなる。加えて世界各国の旅行誌などで
「ベストエアライン」「安全性の高い航空会社」に
選出されるなど、「速い・安全・定時運航」という
堅実さは世界でも評価が高い。

 また、AYはこれまでレジャー市場を中心に販売を
してきたが、成田デイリー化にともない、ビジネス
渡航にも力を入れている。CO2排出を抑える機材の
導入や航空会社として初の環境マネジメント
システム規格「ISO14001」を取得するなど、社会に
対する堅実な貢献にも取り組んでいる。 

▽AYエミッション・カリキュレーター
(運航都市間の距離と燃料消費量、CO2排出量を計算して表示)
http://www.finnair.com/emissionscalculator



取材協力:ベルギー・フランダース政府観光局、フィンエアー
取材:西尾知子