取材ノート:「私たちの行きたい旅行とは」−VWC学生タウンミーティング
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仲間と集まれる最後の機会
「あなたにとって卒業旅行はどんな意味がありますか」。
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では、具体的にどのような旅行商品が好まれるのか。同アンケートでは2種類のツアーをあげ、評価を調べている。ひとつは13日間で20万円前後のヨーロッパ主要都市周遊コース。「ガクタビバス」と呼ぶバスに同年代の学生同士で乗りあうスタイルが特徴で、チラシはあえて2色刷りにし、安価なイメージを打ち出した。もうひとつはエジプトの遺跡発掘コースで、13日間で35万8000円。事前講座があり、考古学の知識を身に付けた上で行く本格的なスタディツアーだ。アンケートの結果は、価格と目的地のポイントで差がつき、ガクタビバスの評価が上回った。
目的とニーズで評価に差
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ただしアンケートによると、卒業旅行の予算は「10万円〜15万円未満」と答えた人が61人中26人で最多。ガクタビバスも予算超えと感じている人は多い。実はガクタビの方も「行きたい」と「あまり行きたくない」という回答は各13人で、同人数である。旅そのものを楽しみたい人、学びに価値を見出す人、旅を思い出づくりの「手段」として選ぶ人。それぞれの目的によってニーズは多様だ。壇上の学生による、「本当に旅が好きな人は、自分で計画し、バックパック旅行で行くのでは。ツアー商品を利用するタイプの人にとっては、旅は『手段』なのだろう。ガクタビバスは車内でのクイズイベントなど、仲間と親睦を深めて思い出をつくる手段として楽しめる企画。だからツアーを利用するタイプの人の需要にあう」との指摘が鋭い。
現場の声で軌道修正
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このアンケート調査は、対象が観光専攻の学生のみで回答数も少ないため、学生の一般的な平均値とはいい切れない。それでもミーティングの発言もあわせ、「学生の考えの断片が見られたのでは」と黒須氏は評する。「ヨーロッパ人気など、業界では予想通りの部分もあったが、購入側と商品造成側には若干のズレがあるのも事実。これからは学生に直接聞いた意見を参考にしながらプロダクトアウトしていくのが、業界の進む道ではないか」と問う。
学生には大抵、年に2、3回の長期休暇がある。卒業旅行のみならず、さまざまな旅行に関し、今後もヒアリングは重要といえるだろう。
学園祭企画に見える学生の旅行観−VWC学園祭応援プログラム
学生タウンミーティングの前には、VWC2000万人
室が実施した「ビジット・ワールド・キャンペー
ン 学園祭応援プログラム募集」の審査結果が
発表された。若者の海外への関心を喚起する学
園祭での企画を募集したものだが、一般の学生
の志向や旅行感覚を知る観光系の学生自身が需
要喚起を目的に作った企画という点で、企画意
図は現在の学生の真の姿を知り、旅行をアプ
ーチするヒントになりそうだ。
例えば、桜美林大学国際ツーリズム研究会の「COME&SEE WORLD〜大学生、長い夏休
みどう使う?〜」を説明した、同大学の住吉まゆ子さんは「興味があっても行動に移さ
ない。知識不足や手配のわずらわしさを懸念し、あきらめてしまう」と一般の学生の旅
行に対するイメージを話し、「海外旅行を知る機会を提供し、人生で最も長い休みが取
れる大学生の今が旅行をするチャンスであることを伝えていく」とする。海外旅行の楽
しさや魅力をアピールするのみならず、長い夏休みを有効活用するリアルなイメージを
伝えるほか、パスポートやビザの取得の方法まで展示で紹介するという。
また、松本大学の佐藤ゼミでは「飛び出せ!若者 海外経験が地域を救う」と、企画
名からも地方都市ならではの内容とニーズがうかがえる。同大学の藤牧真美さんは「若
者が異文化を理解することは地域社会を豊かにする」として、「世界の“いいところ”
は、日本でも応用できることを若者に伝える」と、海外旅行がもたらす効果をアピール
するという企画の意図を説明した。そのほか、選考された企画とその実施期間は下記
の通り。
▽VWC学園祭応援プログラム選出団体
(団体名:企画名/期間)
■立教大学 清水ゼミ:「立教EXPO2009」/10月31日〜11月1日
海外の魅力を五感で通して訴え、海外旅行の きっかけとする
■流通科学大学 高橋ゼミ:「中国美食探訪」 /10月16日〜18日
中国各地の料理を紹介、食文化の比較をする ことで、興味喚起する
■松本大学 佐藤ゼミ:「飛び出せ!若者 海 外経験が地域を救う」/10月 10日〜11日
海外経験の価値をテーマとしたパネルディス カッションと異文化紹介
■桜美林大学国際ツーリズム研究会:「COME& SEE WORLD〜大学生、長い夏 休みどう
使う?〜」 /10月30日〜10月31日
映像展示を中心に、学生・大学生に現実的な 海外旅行をイメージさせる
■西武文理大学 菅生ゼミ:「実は行きやすい 海外」/11月7日〜11月8日
海外発表体験を通じて、海外旅行を身近に感じさせる
取材:福田晴子 (囲み記事:本誌 山田紀子)