現地レポート:北京 JATA大型研修旅行で新しい素材を発見
発展を続ける中国の首都
新旧を見比べ、自分なりに感じた“北京”を販売にいかす
地下鉄が市中を走り、人々の生活の足である自転車は電動自転車になっている。2008年のオリンピック開催を契機に、北京は大きく変化し続けている。北京市政府の投資によりインフラ整備が進み、今では年間で約130万人が海外旅行に行くなど市民の生活レベルも向上した。一方で、一歩踏み込めば古い街並みや歴史、文化などが感じられる場所も多く残る。日本の四国四県の広さに相当する北京市は、私たちのイメージにはおさまりきらない表情を持っている。古い北京、新しい北京、変化する北京を組みあわせて体験することで、旅の感動はさらに深まるだろう。このほど実施された日本旅行業協会(JATA)の大型研修では、参加者の多くが新たなイメージを抱いたようだ。
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◆JATA北京研修、新旧の魅力活用を−「必ず送客する気持ち」が重要(2009/09/07)
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オリンピック以降発展を続ける北京の観光産業
北京市旅游局ディレクターの王清氏によると、「北京オリンピックが観光産業の土台になった」と話す。星付きホテルは836軒で、客室数は13万4000室におよぶ。主な観光施設はバリアフリーや多言語の音声ガイドにも対応し、公共交通機関も整備された。「とりわけFITにとって旅行しやすくなった」という。また、6000人を収容できる会議施設や20万平方メートルの国際展覧センターなど、大型のインセンティブやコンベンションを受け入れられる施設もそろう。王氏は「歴史や文化をテーマとした観光型から体験型のレジャー、コンベンション、インセンティブに対応できるように変化している」と説明し、アジアと太平洋地域の中心的な都市に成長したとアピールする。
北京市の観光産業については、「2008年は自然災害や金融危機などの影響があったものの、前年比5.5%増の320億米ドルの観光収入があり、観光が基幹産業へと成長している」と話す。北京市政府も観光産業が経済発展を促すととらえており、今後は新たにエコや農村、テーマパークを利用した大型で近代的なプロジェクトに注力していく。インバウンドの誘致に関しては、国内外の大型旅行会社と協力して誘致に向けたプロモーションを展開する予定。その一環として合計で送客規模に応じた1000万元の奨励金を導入しており、すでにジェイティービー(JTB)には45万元の奨励金を提供している。さらに、2010年度内をめどに旅行者に対して観光施設の入場料を割り引くなどの優遇施策を実施する計画もある。
胡同−肌で感じる新旧の北京
今回の研修旅行「北京−旅游新発見」には、日本から総勢204名が参加。期間中には現地の業界関係者によるプレゼンテーションが開催された。研修旅行団団長を務めたJATA副会長の佐々木隆氏(ジェイティービー代表取締役会長)が「歴史ある北京と新しい北京を比べて自分なりに発見したことを仕事に活用してもらいたい」と語るように、プレゼンテーションと研修旅行中の視察では、歴史が残るスポットと都市の発展の影響を受けた観光紹介が織り交ざり、現在の北京の魅力を体感することができた。
例えば北京特有の街並みが残る横町・胡同。元、明、清王朝時代を通じて形成されたもので、北京市民の昔からの生活風景が今も残る。胡同巡りはアジア各国のリキシャやトライショーのような三輪車の腰掛け部分に座り、案内してもらう。昔ながらの雰囲気を残す細い路地をぐんぐん進んでいくと、タイムスリップしたような気分になる。ついさきほど、通ってきた整備された道路や数十階建てのマンションが建つ北京の中心地からは車で15分ほどの距離にあるのに、はるか遠く離れた場所にいるような感覚だ。
四合院で市民生活を体験
三輪車に揺られながら街を見ると、細部がところどころ違う門に出会う。これは、四合院という中国北部の伝統的な建築様式の家屋の門で、一般庶民から富裕層の身分によってつくりを変えているのだという。複数の家族で暮らすことも多く、そうした四合院を訪れるツアーがある。今回訪れた魏さんは3家族で15部屋の四合院に暮らしている。家の中は現代の生活と変わりないが、リビングで家族みんなが集まって食事するような、昔ながらの光景が目に浮かぶ。
こうした四合院の見学ツアーは、旅行シーズンの春や秋には1日約300人が訪れるという。3時間ほどの半日コースから、四合院で家庭料理を食べることもできる約4.5時間の1日コースなどもある。三輪車の料金は1回100元からで、距離や時間によって変わるので事前に確かめておくといいだろう。
昼はゆったりとした時間が流れていた胡同も、夜になると地元民や観光客がざわざわと集まり、活気ある街へと表情を変える。最近、昔ながらの建物を利用したバーが人気で、新トレンドスポットとして紹介したい。昼は歴史や古めかしい様子で佇む建物も、人々の活気とともにレトロでモダンな雰囲気を醸し出すという。
庶民の生活に欠かせない市場で値切りに挑戦
一見、大型デパートのようにそびえ立つ秀水街。交通渋滞の原因といわれた路上の市場の商店を、北京オリンピックを契機に集約したビルで、地下1階から7階まで洋服や雑貨、宝石屋など小さくて多様な商店がフロアをびっしりと埋め尽くしている。ただ見て歩くだけでもおもしろいが、一歩中に入ると電卓を持った手がぬっと差し出され、片言の日本語でもう商売がはじまっている。
ここでは言葉が通じないなどは関係ない。電卓とひるまない気持ちがあれば誰でも楽しめる。工芸品や雑貨、チャイナドレスなどのお土産が並んでおり、お土産を安く手に入れるのにも最適だ。価格は高くはないが、その価格が交渉によってぐんぐん値下がりするのがおもしろい。研修の参加者の中には「130元が20元にまで下がった」という人がいる一方で、「半額にもならなかった」という人も。粘り強さ度胸でどれだけ安くいい品を手に入れられるかが決まるのだ。
完成度の高い北京の新観光素材
さて、ここで北京の“新しさ”に話を転じたい。まず北京の街を巡るのに便利になった地下鉄だ。エスカレーター設置はもちろん、遠くからでも駅名や場所がわかりやすい。北京市内でもエリアによって切符の形態が変わるが、今回は地下鉄10号線の場合を紹介する。切符は日本のICカードのようなもので、自動販売機で購入し、自動改札機にタッチして入場。降車の際に回収し、繰り返して使用するという。電車は約3分間隔で到着し、通勤時間には溢れるぐらいの人で埋まるそう。エリア内なら1回2元という安さだ。
インフラ面のみならず、文化的な発展も随所に感じられた。卵のような丸みを帯びた姿が特徴的な国立大劇院は、国家10大建築のひとつにも選ばれており、コンサートやオペラ、バレエ公演などを開催する施設。最も大きなホールではおもにバレエやオペラの上演で使用されることが多く、収容人数2380人に対して舞台はなんとその座席スペースの3倍の広さをほこる。中国内で最も大きく、上下左右に舞台が動くという。このほかにも大小のホールがあり、充実した設備の中で優れた公演を堪能できるし、インセンティブなどの会場としての活用も考えられるだろう。
最も印象的だったのが、歓楽谷大劇場での演目「金面王朝」だ。「北京のシルクドゥソレイユ」、そんな印象を抱いた。ミュージカルでもダンスでもなく、約200名の出演者が柔軟な身体を活かしてダイナミックな演技を披露する。色とりどりの照明や会場全体に響く音響、豪華な衣装としなやかな振り付けで次から次へと場面を変え、見ている人を飽きさせない。目玉となるのは、クライマックス直前の洪水のシーンだ。横幅16メートル、高さ7メートルの回転する舞台に数百トンの水が流れ、洪水の渦へと巻き込む。そのレベルの高さと思いがけない演出で、観客からは大きな拍手や歓声があがっていた。旅行会社担当者からも「こんなショーがあるとは知らなかった。すばらしい」という意見もあり、北京の新しいエンターテイメントとして提案したい。
北京オリンピックの感動をもう一度
約1年前の2008年8月に開催された北京オリンピック。メイン会場となった北京国家体育場、通称「鳥の巣」は現在開放されており、コンサート会場などにも使用されている。その広さは10万人を収容できるほど。現在の1日あたりの観光客数は1万人で多いときは3万人。トラックに引かれたスタートラインやフィールドの青い芝生を見ると、今でも各国のアスリートがメダルや記録をめざして競った姿が蘇る。観客席には赤と白の椅子が並び、自分の好きな場所からオリンピックの思い出をかみしめる観光客もいる。
鳥の巣を囲む街路樹の側にはプチ鳥の巣ともいえる照明があって、細部へのデザインのこだわりがうかがえる。市内には、高層ビルやホテル、交通機関をはじめ整備されたインフラなど北京の新しさを感られる場所が多いが、王氏が「北京オリンピックが観光産業の土台になった」というとおり、近代的なデザインの鳥の巣はまさに北京の観光産業の発展を象徴しているといえるだろう。
新旧を見比べ、自分なりに感じた“北京”を販売にいかす
地下鉄が市中を走り、人々の生活の足である自転車は電動自転車になっている。2008年のオリンピック開催を契機に、北京は大きく変化し続けている。北京市政府の投資によりインフラ整備が進み、今では年間で約130万人が海外旅行に行くなど市民の生活レベルも向上した。一方で、一歩踏み込めば古い街並みや歴史、文化などが感じられる場所も多く残る。日本の四国四県の広さに相当する北京市は、私たちのイメージにはおさまりきらない表情を持っている。古い北京、新しい北京、変化する北京を組みあわせて体験することで、旅の感動はさらに深まるだろう。このほど実施された日本旅行業協会(JATA)の大型研修では、参加者の多くが新たなイメージを抱いたようだ。
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◆JATA、北京の研修旅行を開始−日々変化する北京を肌で感じ需要創出を(2009/09/04)
オリンピック以降発展を続ける北京の観光産業
北京市旅游局ディレクターの王清氏によると、「北京オリンピックが観光産業の土台になった」と話す。星付きホテルは836軒で、客室数は13万4000室におよぶ。主な観光施設はバリアフリーや多言語の音声ガイドにも対応し、公共交通機関も整備された。「とりわけFITにとって旅行しやすくなった」という。また、6000人を収容できる会議施設や20万平方メートルの国際展覧センターなど、大型のインセンティブやコンベンションを受け入れられる施設もそろう。王氏は「歴史や文化をテーマとした観光型から体験型のレジャー、コンベンション、インセンティブに対応できるように変化している」と説明し、アジアと太平洋地域の中心的な都市に成長したとアピールする。
北京市の観光産業については、「2008年は自然災害や金融危機などの影響があったものの、前年比5.5%増の320億米ドルの観光収入があり、観光が基幹産業へと成長している」と話す。北京市政府も観光産業が経済発展を促すととらえており、今後は新たにエコや農村、テーマパークを利用した大型で近代的なプロジェクトに注力していく。インバウンドの誘致に関しては、国内外の大型旅行会社と協力して誘致に向けたプロモーションを展開する予定。その一環として合計で送客規模に応じた1000万元の奨励金を導入しており、すでにジェイティービー(JTB)には45万元の奨励金を提供している。さらに、2010年度内をめどに旅行者に対して観光施設の入場料を割り引くなどの優遇施策を実施する計画もある。
胡同−肌で感じる新旧の北京
今回の研修旅行「北京−旅游新発見」には、日本から総勢204名が参加。期間中には現地の業界関係者によるプレゼンテーションが開催された。研修旅行団団長を務めたJATA副会長の佐々木隆氏(ジェイティービー代表取締役会長)が「歴史ある北京と新しい北京を比べて自分なりに発見したことを仕事に活用してもらいたい」と語るように、プレゼンテーションと研修旅行中の視察では、歴史が残るスポットと都市の発展の影響を受けた観光紹介が織り交ざり、現在の北京の魅力を体感することができた。
例えば北京特有の街並みが残る横町・胡同。元、明、清王朝時代を通じて形成されたもので、北京市民の昔からの生活風景が今も残る。胡同巡りはアジア各国のリキシャやトライショーのような三輪車の腰掛け部分に座り、案内してもらう。昔ながらの雰囲気を残す細い路地をぐんぐん進んでいくと、タイムスリップしたような気分になる。ついさきほど、通ってきた整備された道路や数十階建てのマンションが建つ北京の中心地からは車で15分ほどの距離にあるのに、はるか遠く離れた場所にいるような感覚だ。
四合院で市民生活を体験
三輪車に揺られながら街を見ると、細部がところどころ違う門に出会う。これは、四合院という中国北部の伝統的な建築様式の家屋の門で、一般庶民から富裕層の身分によってつくりを変えているのだという。複数の家族で暮らすことも多く、そうした四合院を訪れるツアーがある。今回訪れた魏さんは3家族で15部屋の四合院に暮らしている。家の中は現代の生活と変わりないが、リビングで家族みんなが集まって食事するような、昔ながらの光景が目に浮かぶ。
こうした四合院の見学ツアーは、旅行シーズンの春や秋には1日約300人が訪れるという。3時間ほどの半日コースから、四合院で家庭料理を食べることもできる約4.5時間の1日コースなどもある。三輪車の料金は1回100元からで、距離や時間によって変わるので事前に確かめておくといいだろう。
昼はゆったりとした時間が流れていた胡同も、夜になると地元民や観光客がざわざわと集まり、活気ある街へと表情を変える。最近、昔ながらの建物を利用したバーが人気で、新トレンドスポットとして紹介したい。昼は歴史や古めかしい様子で佇む建物も、人々の活気とともにレトロでモダンな雰囲気を醸し出すという。
庶民の生活に欠かせない市場で値切りに挑戦
一見、大型デパートのようにそびえ立つ秀水街。交通渋滞の原因といわれた路上の市場の商店を、北京オリンピックを契機に集約したビルで、地下1階から7階まで洋服や雑貨、宝石屋など小さくて多様な商店がフロアをびっしりと埋め尽くしている。ただ見て歩くだけでもおもしろいが、一歩中に入ると電卓を持った手がぬっと差し出され、片言の日本語でもう商売がはじまっている。
ここでは言葉が通じないなどは関係ない。電卓とひるまない気持ちがあれば誰でも楽しめる。工芸品や雑貨、チャイナドレスなどのお土産が並んでおり、お土産を安く手に入れるのにも最適だ。価格は高くはないが、その価格が交渉によってぐんぐん値下がりするのがおもしろい。研修の参加者の中には「130元が20元にまで下がった」という人がいる一方で、「半額にもならなかった」という人も。粘り強さ度胸でどれだけ安くいい品を手に入れられるかが決まるのだ。
完成度の高い北京の新観光素材
さて、ここで北京の“新しさ”に話を転じたい。まず北京の街を巡るのに便利になった地下鉄だ。エスカレーター設置はもちろん、遠くからでも駅名や場所がわかりやすい。北京市内でもエリアによって切符の形態が変わるが、今回は地下鉄10号線の場合を紹介する。切符は日本のICカードのようなもので、自動販売機で購入し、自動改札機にタッチして入場。降車の際に回収し、繰り返して使用するという。電車は約3分間隔で到着し、通勤時間には溢れるぐらいの人で埋まるそう。エリア内なら1回2元という安さだ。
インフラ面のみならず、文化的な発展も随所に感じられた。卵のような丸みを帯びた姿が特徴的な国立大劇院は、国家10大建築のひとつにも選ばれており、コンサートやオペラ、バレエ公演などを開催する施設。最も大きなホールではおもにバレエやオペラの上演で使用されることが多く、収容人数2380人に対して舞台はなんとその座席スペースの3倍の広さをほこる。中国内で最も大きく、上下左右に舞台が動くという。このほかにも大小のホールがあり、充実した設備の中で優れた公演を堪能できるし、インセンティブなどの会場としての活用も考えられるだろう。
最も印象的だったのが、歓楽谷大劇場での演目「金面王朝」だ。「北京のシルクドゥソレイユ」、そんな印象を抱いた。ミュージカルでもダンスでもなく、約200名の出演者が柔軟な身体を活かしてダイナミックな演技を披露する。色とりどりの照明や会場全体に響く音響、豪華な衣装としなやかな振り付けで次から次へと場面を変え、見ている人を飽きさせない。目玉となるのは、クライマックス直前の洪水のシーンだ。横幅16メートル、高さ7メートルの回転する舞台に数百トンの水が流れ、洪水の渦へと巻き込む。そのレベルの高さと思いがけない演出で、観客からは大きな拍手や歓声があがっていた。旅行会社担当者からも「こんなショーがあるとは知らなかった。すばらしい」という意見もあり、北京の新しいエンターテイメントとして提案したい。
北京オリンピックの感動をもう一度
約1年前の2008年8月に開催された北京オリンピック。メイン会場となった北京国家体育場、通称「鳥の巣」は現在開放されており、コンサート会場などにも使用されている。その広さは10万人を収容できるほど。現在の1日あたりの観光客数は1万人で多いときは3万人。トラックに引かれたスタートラインやフィールドの青い芝生を見ると、今でも各国のアスリートがメダルや記録をめざして競った姿が蘇る。観客席には赤と白の椅子が並び、自分の好きな場所からオリンピックの思い出をかみしめる観光客もいる。
鳥の巣を囲む街路樹の側にはプチ鳥の巣ともいえる照明があって、細部へのデザインのこだわりがうかがえる。市内には、高層ビルやホテル、交通機関をはじめ整備されたインフラなど北京の新しさを感られる場所が多いが、王氏が「北京オリンピックが観光産業の土台になった」というとおり、近代的なデザインの鳥の巣はまさに北京の観光産業の発展を象徴しているといえるだろう。
取材協力:日本旅行業協会(JATA)、北京市旅游局、
全国旅行業協会(ANTA)、中国国際航空(CA)
取材:本誌 秦野絵里香