トップインタビュー:バンヤンツリー・ホールディングス会長のホー氏
経済危機の先を見据えたバンヤンツリーの成長戦略
グローバルなリゾート拡大によりさらなる発展をめざす
現在、世界20ヶ国で34ヶ所のリゾートを展開するバンヤンツリー・ホールディングス。経済危機や新型インフルエンザにより打撃を受けているリゾート産業の中で、著しい成長を続けている。ホテルオークラとのジョイントマーケティング3周年にあたり、来日したエグゼグティブチェアマンであるホー・クウォンピン氏に、同社の戦略や今後の展開について、話を聞いた。
−バンヤンツリーの現状を教えてください。景気悪化や新型インフルエンザにより厳しい環境にあるかと存じますが、この状況をどのようにご覧になっていますか
ホー・クウォンピン氏(以下、敬称略) 短期的にみればいうまでもなく、経済危機や新型インフルエンザによりバンヤンツリーのビジネスも厳しい状況にあるが、これはどの業界でも同じことだろう。しかし、この状況がいつまでも続くとは思わない。バンヤンツリーには強いブランド力、急速な成長、ロイヤルカスタマーの確保などに裏打ちされた持続可能な基本的ビジネスモデルがあるため、長期的には何ら心配はしていない。
−現状を乗り切るための御社の戦略は、どのようなものでしょうか
ホー マクロ的にはブランド拡大、地理的拡大をはかっている。例えば、現在の運営ホテル数は34ヶ所だが、3年から4年後には50ヶ所に増えるだろう。当初は東南アジアとインド洋で展開していたが、今や建設予定を含め、アメリカ、中東、ヨーロッパに広がり、着実にグローバルな拡大を続けている。また、今日までタイにある6つの直営ホテルからの収益が全体の50%近くを占めているが、他のホテルについては運営のみであるため、さらに収益を上げるためにも他の地域で直営のホテルを営業しなければならない。
ブランド拡大については新しい領域、例えばスパ、ホテル、ギャラリー、レジデンスなど幅広く展開している。このシンプルな戦略により、バンヤンツリーは長期にわたって安定的な活動を継続できるだろう。
また、バンヤンツリーはファンドを立ち上げて融資を募り、開発資金を調達している。例えば、現在進行中のプロジェクト「ラグーナ・ベトナム」についてはすでに「バンヤンツリー・インドシナファンド」を立ち上げた。このベトナムでのプロジェクトは完成するとラグーナ・プーケットと同規模の大型複合リゾート施設となる予定であり、タイ以外でのビジネス展開を拡大させるのに一役買うだろう。中国でも同様にファンドを立ち上げ、プロジェクトを進める予定である。
−日本マーケットについてどのように認識されていますか
ホー 日本のアウトバウンドマーケットは、ここ10年から15年で急速に洗練された。今や日本人顧客は一種の品質指標であり、例えば「日本人のシェアが◯◯%である」というと質の高いホテルと捉えられるようになった。これは日本人の消費者は概して質を重視する傾向にあるからだ。そのため、今は誰もが日本のマーケットを追いかけている状況にあると思う。
バンヤンツリーにとっても日本は重要なマーケットだ。リゾート全体では日本人のシェアは8%になるが、東南アジアだけをみると顧客の3分の1。7月にオープンしたモルディブのアンサナ・ヴェラヴァルの水上ヴィラの利用者では半数以上を日本人が占めている。今後は中国、ベトナム、バリ、サムイといった地域での開業により日本人客が増え、全体シェアの10%を超えるだろう。日本人客の獲得には品質を保ち続けることが重要であるため、弊社としても顧客を大切にし、一貫した高いレベルのサービスを提供し続けていきたい。
−中長期的に見た日本でのビジネス展開の可能性についてお聞かせください
ホー 外国人旅行者にとって日本は一度は訪れたい神秘的で美しい国、でも高くて行きづらい国だと思われ続けている。私自身も旅館の魅力を体験し、日本で旅館などを買うことについては検討したが、高コスト体質、小規模なマーケティングや食事付きの宿泊料金の設定など、改善すべき点が多いように思う。
実際に、日本でのプロジェクトについて議論はしてきている。将来的にはジャパンファンドを立ち上げ、プロジェクトの実現に向けて物件を買い、ホテルオークラとの協力関係をいかしながらバンヤンツリーとして日本にリゾートをオープンさせたい。
−今後のバンヤンツリーのグローバル展開や開業のご予定についてお聞かせください
ホー この経済危機を脱した後に向けた準備は万全だ。現在、2500室のリゾートを所有しているが、2009年から10年の間に33ヶ所4235室を追加する。さらに2012年までに6189室を所有するホテルグループになるよう成長を続けていく。
今年はメキシコ、UAEのラスアルカイマ、インドネシアのバリ、中国の杭州、タイのサムイ島、韓国のソウルの計6つのホテルをオープンさせる。今年末からはベトナム中部に300ヘクタールにも及ぶ大規模複合リゾート施設「ラグーナ・ベトナム」の建設を開始する。
中国では3つのホテルを開業したが、数ヶ月以内にオープン予定の杭州や来年オープン予定のマカオのほか、6つのプロジェクトが進行している。このうち、マカオで開業予定のホテルはホテルオークラと隣接することとなる。
ホテルオークラとの関係では、現在7つのホテル(プーケット、バンコク、リンガー、麗江、ビンタン、モルディブのバビンファルとアンサナ・ヴェラヴァル)で共同の予約システムなどの業務提携をしている。オークラとのマーケティングアライアンスは今後も増える予定だ。
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グローバルなリゾート拡大によりさらなる発展をめざす
現在、世界20ヶ国で34ヶ所のリゾートを展開するバンヤンツリー・ホールディングス。経済危機や新型インフルエンザにより打撃を受けているリゾート産業の中で、著しい成長を続けている。ホテルオークラとのジョイントマーケティング3周年にあたり、来日したエグゼグティブチェアマンであるホー・クウォンピン氏に、同社の戦略や今後の展開について、話を聞いた。
−バンヤンツリーの現状を教えてください。景気悪化や新型インフルエンザにより厳しい環境にあるかと存じますが、この状況をどのようにご覧になっていますか
ホー・クウォンピン氏(以下、敬称略) 短期的にみればいうまでもなく、経済危機や新型インフルエンザによりバンヤンツリーのビジネスも厳しい状況にあるが、これはどの業界でも同じことだろう。しかし、この状況がいつまでも続くとは思わない。バンヤンツリーには強いブランド力、急速な成長、ロイヤルカスタマーの確保などに裏打ちされた持続可能な基本的ビジネスモデルがあるため、長期的には何ら心配はしていない。
−現状を乗り切るための御社の戦略は、どのようなものでしょうか
ホー マクロ的にはブランド拡大、地理的拡大をはかっている。例えば、現在の運営ホテル数は34ヶ所だが、3年から4年後には50ヶ所に増えるだろう。当初は東南アジアとインド洋で展開していたが、今や建設予定を含め、アメリカ、中東、ヨーロッパに広がり、着実にグローバルな拡大を続けている。また、今日までタイにある6つの直営ホテルからの収益が全体の50%近くを占めているが、他のホテルについては運営のみであるため、さらに収益を上げるためにも他の地域で直営のホテルを営業しなければならない。
ブランド拡大については新しい領域、例えばスパ、ホテル、ギャラリー、レジデンスなど幅広く展開している。このシンプルな戦略により、バンヤンツリーは長期にわたって安定的な活動を継続できるだろう。
また、バンヤンツリーはファンドを立ち上げて融資を募り、開発資金を調達している。例えば、現在進行中のプロジェクト「ラグーナ・ベトナム」についてはすでに「バンヤンツリー・インドシナファンド」を立ち上げた。このベトナムでのプロジェクトは完成するとラグーナ・プーケットと同規模の大型複合リゾート施設となる予定であり、タイ以外でのビジネス展開を拡大させるのに一役買うだろう。中国でも同様にファンドを立ち上げ、プロジェクトを進める予定である。
−日本マーケットについてどのように認識されていますか
ホー 日本のアウトバウンドマーケットは、ここ10年から15年で急速に洗練された。今や日本人顧客は一種の品質指標であり、例えば「日本人のシェアが◯◯%である」というと質の高いホテルと捉えられるようになった。これは日本人の消費者は概して質を重視する傾向にあるからだ。そのため、今は誰もが日本のマーケットを追いかけている状況にあると思う。
バンヤンツリーにとっても日本は重要なマーケットだ。リゾート全体では日本人のシェアは8%になるが、東南アジアだけをみると顧客の3分の1。7月にオープンしたモルディブのアンサナ・ヴェラヴァルの水上ヴィラの利用者では半数以上を日本人が占めている。今後は中国、ベトナム、バリ、サムイといった地域での開業により日本人客が増え、全体シェアの10%を超えるだろう。日本人客の獲得には品質を保ち続けることが重要であるため、弊社としても顧客を大切にし、一貫した高いレベルのサービスを提供し続けていきたい。
−中長期的に見た日本でのビジネス展開の可能性についてお聞かせください
ホー 外国人旅行者にとって日本は一度は訪れたい神秘的で美しい国、でも高くて行きづらい国だと思われ続けている。私自身も旅館の魅力を体験し、日本で旅館などを買うことについては検討したが、高コスト体質、小規模なマーケティングや食事付きの宿泊料金の設定など、改善すべき点が多いように思う。
実際に、日本でのプロジェクトについて議論はしてきている。将来的にはジャパンファンドを立ち上げ、プロジェクトの実現に向けて物件を買い、ホテルオークラとの協力関係をいかしながらバンヤンツリーとして日本にリゾートをオープンさせたい。
−今後のバンヤンツリーのグローバル展開や開業のご予定についてお聞かせください
ホー この経済危機を脱した後に向けた準備は万全だ。現在、2500室のリゾートを所有しているが、2009年から10年の間に33ヶ所4235室を追加する。さらに2012年までに6189室を所有するホテルグループになるよう成長を続けていく。
今年はメキシコ、UAEのラスアルカイマ、インドネシアのバリ、中国の杭州、タイのサムイ島、韓国のソウルの計6つのホテルをオープンさせる。今年末からはベトナム中部に300ヘクタールにも及ぶ大規模複合リゾート施設「ラグーナ・ベトナム」の建設を開始する。
中国では3つのホテルを開業したが、数ヶ月以内にオープン予定の杭州や来年オープン予定のマカオのほか、6つのプロジェクトが進行している。このうち、マカオで開業予定のホテルはホテルオークラと隣接することとなる。
ホテルオークラとの関係では、現在7つのホテル(プーケット、バンコク、リンガー、麗江、ビンタン、モルディブのバビンファルとアンサナ・ヴェラヴァル)で共同の予約システムなどの業務提携をしている。オークラとのマーケティングアライアンスは今後も増える予定だ。
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