現地レポート:バンコク−空港閉鎖、暴動後の現在、市民生活は平穏
活気あふれる街、賑わう観光地
いつもと変わらないバンコク
昨年11月のスワンナプーム空港の閉鎖、今年4月にパタヤとバンコクで起こった暴動など一連の政治的混乱によってタイの観光産業は大きな打撃を受けている。現地の日本の旅行会社によると、タイへの日本人渡航者数も今年2月、3月には回復の兆しが見えたものの、4月以降再び減少に転じているという。しかし、この減少がタイの現状を反映しているものとはいいがたい。「バンコクの現状がきちんと日本に伝わっていない。政治的な混乱は一部に限られており、市民生活は以前と変わらない。観光地もまったく安全」というのは、5月中旬に視察旅行で取材した現地旅行会社やオペレーターの一致した意見だ。
観光を楽しむ外国人観光客たち
ジャルパック・インターナショナル(タイランド)バンコク支店長の石神俊男氏は「タクシン派と反タクシン派の対立だけがメディアで取り上げられ、日本人にはその印象がそのままタイの現状として映っているようだ。しかし、デモや暴動は一部だけで地域も限定されており、観光を含めた一般生活はまったく普段と変わりない」と強調する。実際のところ4月のバンコクでの暴動のときも、街中では例年通り「水掛け祭り」(ソンクラン)が実施されていたという。政治的混乱が沈静化した現在はもちろん、以前と変わらない安全なバンコクの街だ。
そのバンコクの街を歩いてみた。通りには露店が並び、ショッピングセンターではさまざまなイベントが催され、街の活気は相変わらず。歩いているだけでも楽しくなってくる。王宮、エメラルド寺院、ワット・ポーなどバンコク観光のハイライトにも立ち寄ってみると、欧米からの観光客も多く見られ、中国語や韓国語も頻繁に聞こえてくる。昼時には、チャオプラヤー川沿いのレストランは観光客でいっぱいだ。現地オペレーターエス・エム・アイ・トラベル(SMIトラベル)のグループ・マネージング・ディレクターである菊池久夫氏は、「タイの潜在性は依然として高い。日本のメディアを使って、もっと正しい情報を発信していく必要がある」と訴える。
「宿泊者は普通に観光を楽しんでいる-フォーシーズンズ・ホテル・バンコクのジェネラル・マネージャー(GM)であるライナー・スタンファー氏もそう語る。「政治的なことと一般生活とは別の話。デモはどの国でも起こっていること。それが市民生活全体に影響を与えるのはまれだ」と付け加え、バンコクの安全性に自信を示す。新型インフルエンザの影響についても「先は読めない」としながらも、「幸いに、タイでは数件の事例しか報告されていない。観光に与える影響は今のところまったくない」との見解を示した。
注目はFITの動き
2008年のタイへの日本人渡航者数は約116万人。前年比で9.2%の減少だが、引き続き100万人を超えるメガ・デスティネーションだ。レジャー客だけでなく、タイに進出している日系企業も多いことから、ビジネス渡航も大きなマーケット。MICEの需要も期待されている。
そのなかで、注目されるのはFITの動きだ。タイも他のデスティネーションと同様にFIT化が進み、旅行形態も変化してきているという。エイチ・アイ・エス(HIS)リージョナル・ディレクターの原弘樹氏は「FITの回復はパッケージや団体と比べると早い。燃油サーチャージの値下がりもあり、さらに期待できるのではないか。当社ではこれにあわせたキャンペーンも準備しているところだ」と意欲的だ。また、SMIトラベルのアシスタント・ジェネラル・マネージャーである上才泰尚氏は「タイへの観光需要が落ちているなかでも、現地で選択するバンコクからの自由観光については、需要は落ちていない」と明かす。特にアユタヤ、パタヤ、水上マーケットなどへの日帰りトリップが人気だという。
落ち込み低いリピーター、若者の育成へ
一方で、根本的な課題もある。若者の海外旅行離れだ。長期的に見て、この問題はタイでも大きい。フォーシーズンズ・ホテル・タイランドの営業部長で、在タイ日本人ホテル会会長の吉川歩氏は「ハードリピーターを育成するために、若い人へのプロモーションがもっと必要ではないか」と主張。タイ国際航空(TG)がかつて展開した『タイは若いうちに行け!』のような、インパクトのあるキャンペーンの必要性を訴える。若い世代へのアピールが模索されるなか、HISのアシスタント・ジェネラル・マネージャーである大島秀明氏は「タイでもエコツアーやボランティアをからめた旅行には若者が集まる」と現場の手応えを明かす。こうしたSIT的なアプローチは、若者を惹きつけるヒントになるかもしれない。
タイはリピーター率の高いデスティネーション。政治的混乱が続くなかでも、現地の状況を冷静に判断できるリピーターの落ち込みは低かった。「タイ最大の価値は、人々のホスピタリティ。まずは、それを体験してもらいたい」とSMIトラベルの菊池氏。そのためには「新しい旅行者を開拓していく必要がある」と続ける。タイにはさまざまな魅力的な観光素材や観光地があるが、新しい旅行者には「やはりゲートウェイとしてのバンコクの魅力をもっとアピールしていくことが大切」と現地旅行会社は口を揃える。また、「観光において安心安全が最も大切」(ジャルパック石神氏)との自覚をタイ側にももっと持って欲しいと要望する。観光はタイにとって基幹産業。政府は真剣にリカバリー策を議論している。現地が日常に戻った今、双方の働きかけで早期に通常通りの送客となるよう、努力していきたい。
いつもと変わらないバンコク
昨年11月のスワンナプーム空港の閉鎖、今年4月にパタヤとバンコクで起こった暴動など一連の政治的混乱によってタイの観光産業は大きな打撃を受けている。現地の日本の旅行会社によると、タイへの日本人渡航者数も今年2月、3月には回復の兆しが見えたものの、4月以降再び減少に転じているという。しかし、この減少がタイの現状を反映しているものとはいいがたい。「バンコクの現状がきちんと日本に伝わっていない。政治的な混乱は一部に限られており、市民生活は以前と変わらない。観光地もまったく安全」というのは、5月中旬に視察旅行で取材した現地旅行会社やオペレーターの一致した意見だ。
観光を楽しむ外国人観光客たち
ジャルパック・インターナショナル(タイランド)バンコク支店長の石神俊男氏は「タクシン派と反タクシン派の対立だけがメディアで取り上げられ、日本人にはその印象がそのままタイの現状として映っているようだ。しかし、デモや暴動は一部だけで地域も限定されており、観光を含めた一般生活はまったく普段と変わりない」と強調する。実際のところ4月のバンコクでの暴動のときも、街中では例年通り「水掛け祭り」(ソンクラン)が実施されていたという。政治的混乱が沈静化した現在はもちろん、以前と変わらない安全なバンコクの街だ。
そのバンコクの街を歩いてみた。通りには露店が並び、ショッピングセンターではさまざまなイベントが催され、街の活気は相変わらず。歩いているだけでも楽しくなってくる。王宮、エメラルド寺院、ワット・ポーなどバンコク観光のハイライトにも立ち寄ってみると、欧米からの観光客も多く見られ、中国語や韓国語も頻繁に聞こえてくる。昼時には、チャオプラヤー川沿いのレストランは観光客でいっぱいだ。現地オペレーターエス・エム・アイ・トラベル(SMIトラベル)のグループ・マネージング・ディレクターである菊池久夫氏は、「タイの潜在性は依然として高い。日本のメディアを使って、もっと正しい情報を発信していく必要がある」と訴える。
「宿泊者は普通に観光を楽しんでいる-フォーシーズンズ・ホテル・バンコクのジェネラル・マネージャー(GM)であるライナー・スタンファー氏もそう語る。「政治的なことと一般生活とは別の話。デモはどの国でも起こっていること。それが市民生活全体に影響を与えるのはまれだ」と付け加え、バンコクの安全性に自信を示す。新型インフルエンザの影響についても「先は読めない」としながらも、「幸いに、タイでは数件の事例しか報告されていない。観光に与える影響は今のところまったくない」との見解を示した。
注目はFITの動き
2008年のタイへの日本人渡航者数は約116万人。前年比で9.2%の減少だが、引き続き100万人を超えるメガ・デスティネーションだ。レジャー客だけでなく、タイに進出している日系企業も多いことから、ビジネス渡航も大きなマーケット。MICEの需要も期待されている。
そのなかで、注目されるのはFITの動きだ。タイも他のデスティネーションと同様にFIT化が進み、旅行形態も変化してきているという。エイチ・アイ・エス(HIS)リージョナル・ディレクターの原弘樹氏は「FITの回復はパッケージや団体と比べると早い。燃油サーチャージの値下がりもあり、さらに期待できるのではないか。当社ではこれにあわせたキャンペーンも準備しているところだ」と意欲的だ。また、SMIトラベルのアシスタント・ジェネラル・マネージャーである上才泰尚氏は「タイへの観光需要が落ちているなかでも、現地で選択するバンコクからの自由観光については、需要は落ちていない」と明かす。特にアユタヤ、パタヤ、水上マーケットなどへの日帰りトリップが人気だという。
落ち込み低いリピーター、若者の育成へ
一方で、根本的な課題もある。若者の海外旅行離れだ。長期的に見て、この問題はタイでも大きい。フォーシーズンズ・ホテル・タイランドの営業部長で、在タイ日本人ホテル会会長の吉川歩氏は「ハードリピーターを育成するために、若い人へのプロモーションがもっと必要ではないか」と主張。タイ国際航空(TG)がかつて展開した『タイは若いうちに行け!』のような、インパクトのあるキャンペーンの必要性を訴える。若い世代へのアピールが模索されるなか、HISのアシスタント・ジェネラル・マネージャーである大島秀明氏は「タイでもエコツアーやボランティアをからめた旅行には若者が集まる」と現場の手応えを明かす。こうしたSIT的なアプローチは、若者を惹きつけるヒントになるかもしれない。
タイはリピーター率の高いデスティネーション。政治的混乱が続くなかでも、現地の状況を冷静に判断できるリピーターの落ち込みは低かった。「タイ最大の価値は、人々のホスピタリティ。まずは、それを体験してもらいたい」とSMIトラベルの菊池氏。そのためには「新しい旅行者を開拓していく必要がある」と続ける。タイにはさまざまな魅力的な観光素材や観光地があるが、新しい旅行者には「やはりゲートウェイとしてのバンコクの魅力をもっとアピールしていくことが大切」と現地旅行会社は口を揃える。また、「観光において安心安全が最も大切」(ジャルパック石神氏)との自覚をタイ側にももっと持って欲しいと要望する。観光はタイにとって基幹産業。政府は真剣にリカバリー策を議論している。現地が日常に戻った今、双方の働きかけで早期に通常通りの送客となるよう、努力していきたい。
タイ国際航空のラウンジでラグジュアリーなひとときを
最新の設備が整うバンコク・スワンナプーム国際空港。
タイ国際航空(TG)のラウンジは、ラグジュアリーに快
適な時間を過ごせる場所として高い評価を受けている。
広々としたファーストクラス・ラウンジには、シャワー
ルームが6ヶ所、会議室や仮眠が取れる部屋も整い、搭
乗前や乗継ぎ前の時間を有効に利用することができる。
また、高級レストランレベルの食事をテーブル席でいた
だくことも可能。もちろん各種ビジネス・ツールも充実
している。2007年と2009年にはスカイトラックスの「ベ
スト・ファーストクラス・ラウンジ賞」を受賞した。ビ
ジネスクラスのラウンジも広々とした空間にさまざまな
サービスがそろう。
また、スパ・ラウンジがあるのもTGの特徴。ファース
トクラス利用者は約1時間の全身マッサージ、ビジネス
クラス利用者は約30分の肩と足のマッサージを無料で受
けることができる。このほか、チェックイン、出国審査
ともそれぞれ専用のカウンターで対応し、そこを抜けれ
ばすぐにラウンジという便利さも特筆すべき点だ。
取材協力:タイ国際航空、フォーシーズンズ・ホテル・バンコク、
サイアム・ホリデー・インターナショナル、ロイヤルオーキッドホリデイズ
取材:山田友樹