現地レポート モーリシャス−ハネムーナー、富裕層シニアに続く有望市場
デスティネーションの特徴活かし、ターゲット絞った情報発信で認知向上へ
〜旅行会社が「ミセス」、「30代女性」への可能性に注目〜
インド洋の西、マダガスカルの東沖に浮かぶ、モーリシャス。「インド洋の貴婦人」と称され、コロニアル時代の雰囲気を残し、ヨーロッパの社交文化が息づくラグジュアリーなリゾートだ。ヨーロッパのバカンスで憧れの旅行先として人気が高く、現地ではリゾート内のビーチサイドでくつろぎ、夜にはドレスアップしてディナータイムを楽しむ光景をよく見かけた。2008年2月からモーリシャス航空(MK)の日本地区総代理店となったエア・システムは、日本人訪問者数3000人突破を目標に、メディア露出や商品造成の促進といった営業活動を強化している。
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◆モーリシャス航空、ダイヤ変更で利便性向上、夏の香港線増便も意欲(2009/03/31)
訪問者の大半はハネムーナーと富裕層のシニア
エア・システムは08年2月からモーリシャス航空(MK)の日本地区総代理店を開始しており、今回のFAMツアーは旅行会社を対象に初めて開催したもの。モーリシャスの知名度向上と、この数年は2000名弱で推移している日本人訪問者数の増加をめざし、商品造成を促すのが目的だ。
日本からモーリシャスへは、キャセイパシフィック航空(CX)を利用して香港でモーリシャス航空(MK)に同日乗継し、6泊8日の日程のツアーを造成するのが一般的。MKは香港/モーリシャス間を週2便で運航しており、FAMツアーに参加した4社すべてが、このルートと日程でツアーを組んでいる。客層はハネムーナーと富裕層のシニアが中心だ。
モーリシャスでは、旅行者はほとんどの時間をリゾートで過ごす。リゾートはそれぞれ独立型で、参加した旅行会社のすべてが往復航空券とホテル(朝夕の食事つき)、送迎を組みあわせたパッケージを販売しており、「全日程をフリーにして、観光はオプションにしている」という会社が多い。
主要な観光地は美しいビーチをもつ島として世界的に有名な「イル・オ・セルフ」、ブラックリバー渓谷にある「シャマレルの滝」、火山から噴出した様々な鉱物が酸化して大地を7色に染めた「シャマレル七色の大地」など。各ホテルや現地旅行会社が、半日や1日のツアーを催行しており、イル・オ・セルフを訪れるセイリング・ツアーは、特に旅行者に人気がある。このほか、観光素材はとして、ダイビングや釣り、パラセーリングといったマリンスポーツやゴルフ、トレッキングなどのアクティビティがある。また、移民の歴史を示す建造物群「アプラヴァシ・ガート」と、自由を求めた奴隷たちの戦いのシンボルとして評価された「ル・モーンの文化的景観」の2つの世界遺産があり、これらをめぐるオプショナルツアーを魅力的に演出することもできるだろう。
バランス良く、評価の高いリゾート群
モーリシャス旅行では、リゾート選びが旅行全体の印象を決める。そのため、今回のFAMツアーは、リゾートの視察が中心で計16施設を訪れた。「お客様の好みにあわせておすすめできるよう、各ホテルの個性を見極めたい」と参加者。
コロニアル風の建築スタイルのリゾートは、「インド洋の楽園というイメージにあう」と評価が高かった。白い壁やテラスに熱帯の緑が映え、室内は外光をふんだんに採り入れて明るい。また、モダンでシックなインテリアやアジアンテイストのリゾートもある。広大な敷地を持つリゾートがほとんどだが、「多くのスタッフが配置されているため治安がよく、衛生面も良い。安心して送客できる」と参加者は各ホテルを高く評価する。
宿泊レートに含まれる食事は、前菜+メイン+デザートのセットメニューかブッフェになる。平均滞在期間2週間以上と長く滞在する欧米人の客が多いため、フランス料理、シーフード、バーベキュー、インド料理などバリエーション豊富に揃っている。全リゾートがブッフェスタイルのレストランも備えていた。「思いがけず料理がおいしく、食べ飽きなかった」「シーフードが多く日本人の口にあう」と参加者からも好評。「遊び、食事、ステイといったリゾートの持つ要素のバランスよく、いずれの水準も高い」という。
モーリシャスの情報発信を求める声多く
一方で、参加者が懸念するのが、旅行先にモーリシャスを選んでもらう“決め手”。「美しい海岸を臨むラグジュアリーなリゾート」だけでは、強力な集客に結びつかない。「現状では日本人旅行者に人気のバリやハワイ、イメージが定着してきたモルディブやタヒチといった競合リゾートと比べて決定打が弱い」「水上コテージのように、ビジュアルでひきつけるキラーコンテンツがない」といった声もあった。
日本での知名度の低さも、販売のネックになっている。「旅行会社が商品を造成しても、モーリシャスが魅力的なデスティネーションとして広く浸透しなければ販売に結びつかない」と参加者。オフラインであることや旅行の必要日数、競合リゾート地と比べて高額な費用を考えると主力商品にはなりにくいため、旅行会社には宣伝の予算がかけられないというジレンマがある。「モーリシャスの集客につながるマーケットに、ピンポイントで情報を発信していきたい」という声があがった。
女子大生ブームを作った“アラフォー”ミセスと30代以上の女性に期待
ハネムーナーとシニアの次に集客につながるマーケットとして、参加者が注目を示したのは、30代以上の女性だ。なかでも2つの層が考えられる。ひとつは若いころ、いわゆる“赤文字系雑誌”といわれるファッション誌を読み、女子大生ブームをつくった女性たち。現在アラフォーの彼女たちは、今も消費活動に積極的で、自分や子どもへの投資を惜しまないといわれる。
実は、モーリシャスには一流のリゾートが多く建つが、旅行者は特にフランス、イギリス、ドイツからのバカンスを楽しむ家族がほとんど。そのため、各リゾートには家族向けの施設や子ども向けのサービスが充実している。子どもはキッズクラブへ行き、夫婦ふたりでゆっくり過ごしたり、子どもに英語でコミュニケーションさせたり、子どもは大人と食卓を共にしないというヨーロッパの習慣にならって子ども用のダイニングでテーブルマナーを学ばせたり、ドレスアップの習慣を経験させたり。そういったことに積極的な彼女たちに、ヨーロッパの社交文化が根付いているモーリシャスは魅力的なデスティネーションに映るだろう。
しかし、この層にアピールするには課題も残る。現実的に、まだモルディブ以遠のファミリー旅行は需要が伸びていない。乗継時間やフライトの長さを考えると、小さな子ども連れは難しい。
そこで焦点となるのが、海外旅行経験が豊富な30代以上の働く女性たち。今の知名度の低さを逆手にとり「知る人ぞ知る隠れ家」「日本人の少ないセレブなリゾート」といったイメージでのアプローチも一案といえる。現地では、昼間はプールサイドやビーチでカジュアルな服装をしているが、陽が落ちると服装はカジュアル・シックにかわる。そんなエレガントなリゾートの過ごし方も伝えていきたい。また、リゾートには30代女性の旅行目的のひとつにもなるスパが充実しているのも、有効なポイントになるだろう。
いきなり多くの日本人旅行者を送客することは難しいが、それが逆にモーリシャスのよさでもある。まずはメディア露出を促してモーリシャスへの認知を高めながら、商品造成を進めていく。「モーリシャスを消費してしまわないように、旅慣れた人に魅力的なデスティネーションとして、長く継続的に販売していきたい」と参加者は締めくくった。
〜旅行会社が「ミセス」、「30代女性」への可能性に注目〜
インド洋の西、マダガスカルの東沖に浮かぶ、モーリシャス。「インド洋の貴婦人」と称され、コロニアル時代の雰囲気を残し、ヨーロッパの社交文化が息づくラグジュアリーなリゾートだ。ヨーロッパのバカンスで憧れの旅行先として人気が高く、現地ではリゾート内のビーチサイドでくつろぎ、夜にはドレスアップしてディナータイムを楽しむ光景をよく見かけた。2008年2月からモーリシャス航空(MK)の日本地区総代理店となったエア・システムは、日本人訪問者数3000人突破を目標に、メディア露出や商品造成の促進といった営業活動を強化している。
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◆モーリシャス航空、ダイヤ変更で利便性向上、夏の香港線増便も意欲(2009/03/31)
訪問者の大半はハネムーナーと富裕層のシニア
エア・システムは08年2月からモーリシャス航空(MK)の日本地区総代理店を開始しており、今回のFAMツアーは旅行会社を対象に初めて開催したもの。モーリシャスの知名度向上と、この数年は2000名弱で推移している日本人訪問者数の増加をめざし、商品造成を促すのが目的だ。
日本からモーリシャスへは、キャセイパシフィック航空(CX)を利用して香港でモーリシャス航空(MK)に同日乗継し、6泊8日の日程のツアーを造成するのが一般的。MKは香港/モーリシャス間を週2便で運航しており、FAMツアーに参加した4社すべてが、このルートと日程でツアーを組んでいる。客層はハネムーナーと富裕層のシニアが中心だ。
モーリシャスでは、旅行者はほとんどの時間をリゾートで過ごす。リゾートはそれぞれ独立型で、参加した旅行会社のすべてが往復航空券とホテル(朝夕の食事つき)、送迎を組みあわせたパッケージを販売しており、「全日程をフリーにして、観光はオプションにしている」という会社が多い。
主要な観光地は美しいビーチをもつ島として世界的に有名な「イル・オ・セルフ」、ブラックリバー渓谷にある「シャマレルの滝」、火山から噴出した様々な鉱物が酸化して大地を7色に染めた「シャマレル七色の大地」など。各ホテルや現地旅行会社が、半日や1日のツアーを催行しており、イル・オ・セルフを訪れるセイリング・ツアーは、特に旅行者に人気がある。このほか、観光素材はとして、ダイビングや釣り、パラセーリングといったマリンスポーツやゴルフ、トレッキングなどのアクティビティがある。また、移民の歴史を示す建造物群「アプラヴァシ・ガート」と、自由を求めた奴隷たちの戦いのシンボルとして評価された「ル・モーンの文化的景観」の2つの世界遺産があり、これらをめぐるオプショナルツアーを魅力的に演出することもできるだろう。
バランス良く、評価の高いリゾート群
モーリシャス旅行では、リゾート選びが旅行全体の印象を決める。そのため、今回のFAMツアーは、リゾートの視察が中心で計16施設を訪れた。「お客様の好みにあわせておすすめできるよう、各ホテルの個性を見極めたい」と参加者。
コロニアル風の建築スタイルのリゾートは、「インド洋の楽園というイメージにあう」と評価が高かった。白い壁やテラスに熱帯の緑が映え、室内は外光をふんだんに採り入れて明るい。また、モダンでシックなインテリアやアジアンテイストのリゾートもある。広大な敷地を持つリゾートがほとんどだが、「多くのスタッフが配置されているため治安がよく、衛生面も良い。安心して送客できる」と参加者は各ホテルを高く評価する。
宿泊レートに含まれる食事は、前菜+メイン+デザートのセットメニューかブッフェになる。平均滞在期間2週間以上と長く滞在する欧米人の客が多いため、フランス料理、シーフード、バーベキュー、インド料理などバリエーション豊富に揃っている。全リゾートがブッフェスタイルのレストランも備えていた。「思いがけず料理がおいしく、食べ飽きなかった」「シーフードが多く日本人の口にあう」と参加者からも好評。「遊び、食事、ステイといったリゾートの持つ要素のバランスよく、いずれの水準も高い」という。
モーリシャスの情報発信を求める声多く
一方で、参加者が懸念するのが、旅行先にモーリシャスを選んでもらう“決め手”。「美しい海岸を臨むラグジュアリーなリゾート」だけでは、強力な集客に結びつかない。「現状では日本人旅行者に人気のバリやハワイ、イメージが定着してきたモルディブやタヒチといった競合リゾートと比べて決定打が弱い」「水上コテージのように、ビジュアルでひきつけるキラーコンテンツがない」といった声もあった。
日本での知名度の低さも、販売のネックになっている。「旅行会社が商品を造成しても、モーリシャスが魅力的なデスティネーションとして広く浸透しなければ販売に結びつかない」と参加者。オフラインであることや旅行の必要日数、競合リゾート地と比べて高額な費用を考えると主力商品にはなりにくいため、旅行会社には宣伝の予算がかけられないというジレンマがある。「モーリシャスの集客につながるマーケットに、ピンポイントで情報を発信していきたい」という声があがった。
女子大生ブームを作った“アラフォー”ミセスと30代以上の女性に期待
ハネムーナーとシニアの次に集客につながるマーケットとして、参加者が注目を示したのは、30代以上の女性だ。なかでも2つの層が考えられる。ひとつは若いころ、いわゆる“赤文字系雑誌”といわれるファッション誌を読み、女子大生ブームをつくった女性たち。現在アラフォーの彼女たちは、今も消費活動に積極的で、自分や子どもへの投資を惜しまないといわれる。
実は、モーリシャスには一流のリゾートが多く建つが、旅行者は特にフランス、イギリス、ドイツからのバカンスを楽しむ家族がほとんど。そのため、各リゾートには家族向けの施設や子ども向けのサービスが充実している。子どもはキッズクラブへ行き、夫婦ふたりでゆっくり過ごしたり、子どもに英語でコミュニケーションさせたり、子どもは大人と食卓を共にしないというヨーロッパの習慣にならって子ども用のダイニングでテーブルマナーを学ばせたり、ドレスアップの習慣を経験させたり。そういったことに積極的な彼女たちに、ヨーロッパの社交文化が根付いているモーリシャスは魅力的なデスティネーションに映るだろう。
しかし、この層にアピールするには課題も残る。現実的に、まだモルディブ以遠のファミリー旅行は需要が伸びていない。乗継時間やフライトの長さを考えると、小さな子ども連れは難しい。
そこで焦点となるのが、海外旅行経験が豊富な30代以上の働く女性たち。今の知名度の低さを逆手にとり「知る人ぞ知る隠れ家」「日本人の少ないセレブなリゾート」といったイメージでのアプローチも一案といえる。現地では、昼間はプールサイドやビーチでカジュアルな服装をしているが、陽が落ちると服装はカジュアル・シックにかわる。そんなエレガントなリゾートの過ごし方も伝えていきたい。また、リゾートには30代女性の旅行目的のひとつにもなるスパが充実しているのも、有効なポイントになるだろう。
いきなり多くの日本人旅行者を送客することは難しいが、それが逆にモーリシャスのよさでもある。まずはメディア露出を促してモーリシャスへの認知を高めながら、商品造成を進めていく。「モーリシャスを消費してしまわないように、旅慣れた人に魅力的なデスティネーションとして、長く継続的に販売していきたい」と参加者は締めくくった。
取材協力 モーリシャス航空
取材 工藤史歩