現地レポート:クラブメッド・バリ、リニューアルでグレードアップ
パブリックエリアの大改装でスタイリッシュに変身
不況下にも強みを発揮する独特の個性
クラブメッドの設立は1950年。第2次世界大戦後まもない時代に「オールインクルーシブ」という概念のバカンス施設を立ち上げた。現在は25ヶ国に80ヶ所以上のリゾートを展開している。1980年代にはファミリー向けリゾートとして広く知られていたが、2004年から量から質の戦略に転換。高所得層の獲得をめざし、施設の改装を進めている。その一環として、アジア太平洋地区での旗艦リゾートである「クラブメッド・バリ」が2008年12月に改装を終え、リニューアルオープンした。
スタイリッシュにグレードアップ
830万ユーロを投じた改装によって大きく変わったのは、プールとメインバー、レストラン、スパのパブリックエリア。モーリシャスなど、クラブメッドの最高級リゾートを手がけたフランス人のハートリッチ氏がデザインを担当。伝統的なバリスタイルから、赤をテーマカラーにアジアンモダンに変身を遂げている。ロビーからすぐ目に入るのがメインプール。昼間は鮮やかな赤色のチェアがアクセントになった明るいエリアだが、夜になるとオープンバーを中心にクラブ風のスタイリッシュな空間となる。
改装の変化が最も楽しめるのがレストランだ。ビュッフェ用メインレストランには、メタリックな雰囲気の「オーキッド」、オレンジとサフラン色の傘がアクセントの「アンブレラ」、ランタンが飾られた「ドラゴン」、仏像が置かれた「ディビニティ」と、コンセプトの異なる4つの部屋が新設。どの部屋で食べてもよく、ビュッフェながら安っぽさを感じさせない。食事の内容も、イタリア料理ならパルメザンチーズの塊があったり、インド料理はチャパティがその場で焼かれたり、それぞれが本格派だ。メニューは毎日変わり、飽きない工夫がされている。さらに、アラカルトが食べられる予約制のスペシャリティ・レストランも設置。このコースメニューも料金に含まれている。
もうひとつ、グレードアップしたのがスパ。シングル9室とカップル向けヴィラ5棟のトリートメントルームを備え、マンダラスパの運営により、質が向上した。クラブメッドのリピーターで、VIPとして招かれていたファッション・エッセイストのフランソワーズ・モレシャン氏も「以前の中途半端さがなくなり、完璧になった」と絶賛。スパの隣には、メインエリアから離れ、静かに過ごせるクワイエットプールが作られている。
なお、393室の客室の改装はすでに08年までに終えている。
量から質への転換で高所得層を取り込む
クラブメッドでは、2004年から量から質への転換を進めてきた。「アップマーケット、フレンドリー、マルチカルチャー」をコンセプトに、高所得層をねらって質を高めながら、フレンドリーなサービスと豊かな異文化体験を提供するという独自のスタンスを打ち出した。世界80ヶ所のリゾートで改装を実施し、アジア太平洋地区だけで5000万ユーロを投じている。なかでもクラブメッド・バリは津波の被害のあったモルディブの1800万ユーロに次ぐ投資額だ。
その理由として、クラブメッドのアジア・太平洋地区マーケティング担当副社長(兼クラブメッドグレーターチャイナ、東南アジア地区ゼネラルマネージャー)のオリビエ・ホープ氏は「バリはヨーロッパ、アジアなど世界のどの地区からも人気があるデスティネーション。経済危機の中でもポジティブな数値がみられる」と語る。2008年の滞在者数を国別にみると、1番多いのが日本人。これに韓国、中国、台湾、フランスと続いた。
高所得層を取り込む戦略は成功しており、クラブメッドの今年度第1四半期(2008年11月〜09年1月)において、グループの最高クラスと格付ける4トリダン以上のリゾートで新たに1万8000人の顧客を獲得し、前年同期比1.9%増の収益を上げている。会長兼最高経営責任者のアンリ・ジスカールデスタン氏は「高所得層に向けた展開に変わりはない」とし、「調査によると、この経済状況下でもクラブメッド未体験の半数以上の人がオールインクルーシブを魅力的と感じている。ハイエンドの客がクラブメッドのようなポジションのリゾートに興味を持っているのは明らか」と、強調する。
G.O.の存在とアクティビティ
ほかのリゾートにはないクラブメッド大きな特徴が、G.O.(ジー・オー:ジェントル・オーガナイザー)といわれるスタッフの存在である。アクティビティのインストラクターやバーやレストランのスタッフなど、さまざまなセクションにいるものの、食事はゲストと一緒の席で食べる。バリには100人のG.O.がおり、そのうち日本人は11人。アクティビティや食事でのコミュニケーションが、単に挨拶やサービス以上の印象に残る体験づくりにつながっている。
アクティビティはテニス、ゴルフのショートコースをはじめ、アーチェリー、カヤックにウインドサーフィン、空中ブランコなどにもトライできる。レッスンはすべて無料で、初心者でもG.O.たちが親切に教えてくれる。G.O.が相手をしてくれたり、他のゲストと一緒に楽しんだりと、ひとりで参加しても楽しめるしくみが整っているのはさすがだ。もちろん、静かに過ごしたいときにはビーチやクワイエットプールなどでのんびりできる空間も用意されている。
インセンティブ、グループのためのハードとソフトがそろう
オールインクルーシブで財布を持たないですむ、というのは本当に楽だ。施設外に出かけるオプショナルツアー代やスパなどは必要だが、施設内は最初にデポジットカードを作ることですべてルームチャージにできる。チップの習慣はなく、現金が必要ない。ためしに現金を両替しないで過ごしたが、困ることはなかった。おみやげも施設内のショップで調達できる。万が一、現金が必要な場合も両替所が施設内にある。
食事代やアルコール代も含まれているため、親子旅行や3世代旅行、小グループでも、おごった、おごられたという気遣いや気がねがいらない。チルドレンズクラブは4才以上は無料だ。
オールインクルーシブのシステムに加え、クラブメッドが有するエンターテイメントのノウハウは、インセンティブ旅行でも優位な要素だ。20人以上の団体には、カクテルパーティやチームビルディングのアレンジを有料で対応。クラブメッド・バリには最大180人収容の会議室やビジネスセンターがあり、Wi-Fiによるワイヤレスも部屋やパブリックエリアでつながる。実際、今回の滞在中にあるフランス系会社のトップセールスマンたちが訪れていた。ホープ氏は「オールインクルーシブは予算管理がしやすい」とメリットを強調。リニューアル間もなく新しいというのも、インセンティブ旅行で喜ばれるポイントだ。
※訂正案内(編集部 4月13日 15時30分)
訂正箇所:小タイトル「量から質への転換で高所得層を取り込む」内のジスカールデスタン氏の名前
誤:会長兼最高経営責任者のアンリ・ジオスカールデスタン氏
↓
正:会長兼最高経営責任者のアンリ・ジスカールデスタン氏
不況下にも強みを発揮する独特の個性
クラブメッドの設立は1950年。第2次世界大戦後まもない時代に「オールインクルーシブ」という概念のバカンス施設を立ち上げた。現在は25ヶ国に80ヶ所以上のリゾートを展開している。1980年代にはファミリー向けリゾートとして広く知られていたが、2004年から量から質の戦略に転換。高所得層の獲得をめざし、施設の改装を進めている。その一環として、アジア太平洋地区での旗艦リゾートである「クラブメッド・バリ」が2008年12月に改装を終え、リニューアルオープンした。
スタイリッシュにグレードアップ
830万ユーロを投じた改装によって大きく変わったのは、プールとメインバー、レストラン、スパのパブリックエリア。モーリシャスなど、クラブメッドの最高級リゾートを手がけたフランス人のハートリッチ氏がデザインを担当。伝統的なバリスタイルから、赤をテーマカラーにアジアンモダンに変身を遂げている。ロビーからすぐ目に入るのがメインプール。昼間は鮮やかな赤色のチェアがアクセントになった明るいエリアだが、夜になるとオープンバーを中心にクラブ風のスタイリッシュな空間となる。
改装の変化が最も楽しめるのがレストランだ。ビュッフェ用メインレストランには、メタリックな雰囲気の「オーキッド」、オレンジとサフラン色の傘がアクセントの「アンブレラ」、ランタンが飾られた「ドラゴン」、仏像が置かれた「ディビニティ」と、コンセプトの異なる4つの部屋が新設。どの部屋で食べてもよく、ビュッフェながら安っぽさを感じさせない。食事の内容も、イタリア料理ならパルメザンチーズの塊があったり、インド料理はチャパティがその場で焼かれたり、それぞれが本格派だ。メニューは毎日変わり、飽きない工夫がされている。さらに、アラカルトが食べられる予約制のスペシャリティ・レストランも設置。このコースメニューも料金に含まれている。
もうひとつ、グレードアップしたのがスパ。シングル9室とカップル向けヴィラ5棟のトリートメントルームを備え、マンダラスパの運営により、質が向上した。クラブメッドのリピーターで、VIPとして招かれていたファッション・エッセイストのフランソワーズ・モレシャン氏も「以前の中途半端さがなくなり、完璧になった」と絶賛。スパの隣には、メインエリアから離れ、静かに過ごせるクワイエットプールが作られている。
なお、393室の客室の改装はすでに08年までに終えている。
量から質への転換で高所得層を取り込む
クラブメッドでは、2004年から量から質への転換を進めてきた。「アップマーケット、フレンドリー、マルチカルチャー」をコンセプトに、高所得層をねらって質を高めながら、フレンドリーなサービスと豊かな異文化体験を提供するという独自のスタンスを打ち出した。世界80ヶ所のリゾートで改装を実施し、アジア太平洋地区だけで5000万ユーロを投じている。なかでもクラブメッド・バリは津波の被害のあったモルディブの1800万ユーロに次ぐ投資額だ。
その理由として、クラブメッドのアジア・太平洋地区マーケティング担当副社長(兼クラブメッドグレーターチャイナ、東南アジア地区ゼネラルマネージャー)のオリビエ・ホープ氏は「バリはヨーロッパ、アジアなど世界のどの地区からも人気があるデスティネーション。経済危機の中でもポジティブな数値がみられる」と語る。2008年の滞在者数を国別にみると、1番多いのが日本人。これに韓国、中国、台湾、フランスと続いた。
高所得層を取り込む戦略は成功しており、クラブメッドの今年度第1四半期(2008年11月〜09年1月)において、グループの最高クラスと格付ける4トリダン以上のリゾートで新たに1万8000人の顧客を獲得し、前年同期比1.9%増の収益を上げている。会長兼最高経営責任者のアンリ・ジスカールデスタン氏は「高所得層に向けた展開に変わりはない」とし、「調査によると、この経済状況下でもクラブメッド未体験の半数以上の人がオールインクルーシブを魅力的と感じている。ハイエンドの客がクラブメッドのようなポジションのリゾートに興味を持っているのは明らか」と、強調する。
G.O.の存在とアクティビティ
ほかのリゾートにはないクラブメッド大きな特徴が、G.O.(ジー・オー:ジェントル・オーガナイザー)といわれるスタッフの存在である。アクティビティのインストラクターやバーやレストランのスタッフなど、さまざまなセクションにいるものの、食事はゲストと一緒の席で食べる。バリには100人のG.O.がおり、そのうち日本人は11人。アクティビティや食事でのコミュニケーションが、単に挨拶やサービス以上の印象に残る体験づくりにつながっている。
アクティビティはテニス、ゴルフのショートコースをはじめ、アーチェリー、カヤックにウインドサーフィン、空中ブランコなどにもトライできる。レッスンはすべて無料で、初心者でもG.O.たちが親切に教えてくれる。G.O.が相手をしてくれたり、他のゲストと一緒に楽しんだりと、ひとりで参加しても楽しめるしくみが整っているのはさすがだ。もちろん、静かに過ごしたいときにはビーチやクワイエットプールなどでのんびりできる空間も用意されている。
インセンティブ、グループのためのハードとソフトがそろう
オールインクルーシブで財布を持たないですむ、というのは本当に楽だ。施設外に出かけるオプショナルツアー代やスパなどは必要だが、施設内は最初にデポジットカードを作ることですべてルームチャージにできる。チップの習慣はなく、現金が必要ない。ためしに現金を両替しないで過ごしたが、困ることはなかった。おみやげも施設内のショップで調達できる。万が一、現金が必要な場合も両替所が施設内にある。
食事代やアルコール代も含まれているため、親子旅行や3世代旅行、小グループでも、おごった、おごられたという気遣いや気がねがいらない。チルドレンズクラブは4才以上は無料だ。
オールインクルーシブのシステムに加え、クラブメッドが有するエンターテイメントのノウハウは、インセンティブ旅行でも優位な要素だ。20人以上の団体には、カクテルパーティやチームビルディングのアレンジを有料で対応。クラブメッド・バリには最大180人収容の会議室やビジネスセンターがあり、Wi-Fiによるワイヤレスも部屋やパブリックエリアでつながる。実際、今回の滞在中にあるフランス系会社のトップセールスマンたちが訪れていた。ホープ氏は「オールインクルーシブは予算管理がしやすい」とメリットを強調。リニューアル間もなく新しいというのも、インセンティブ旅行で喜ばれるポイントだ。
※訂正案内(編集部 4月13日 15時30分)
訂正箇所:小タイトル「量から質への転換で高所得層を取り込む」内のジスカールデスタン氏の名前
誤:会長兼最高経営責任者のアンリ・ジオスカールデスタン氏
↓
正:会長兼最高経営責任者のアンリ・ジスカールデスタン氏
取材協力:クラブメッド
取材:平山喜代江