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地域と観光統計を考える 観光庁とUNWTOがシンポ

 観光統計の国際基準であるTSA(観光サテライト勘定)を地域の観光戦略に生かそうと3月10日、大阪市北区の大阪国際会議場で「第2回観光経済国際シンポジウム」が開かれた。世界観光機関(UNWTO)のコンサルタント、スタンレー・フリートウッドさんらを講師に招き、地域におけるTSA、観光統計の活用を学んだ。

 シンポジウムは観光庁とUNWTOが主催。日本におけるTSAの本格導入を2010年に控え、TSAの意義、活用法、日本の観光統計への取り組みを周知することを目的としている。第1回は07年10月に和歌山市で開かれ、観光統計の有用性やTSAの意義などが紹介された。

 TSAは、従来の統計では見えてこない観光業全体の経済効果を測定するシステムとしてUNWTOが開発し、00年に導入。現在は世界約60カ国が活用している。観光関連の消費を明らかにし、付加価値の把握とGDP(国内総生産)に対する観光の貢献効果を測定できる。効果を数値化することで、的確な政策立案やマーケティングにつながると期待されている。

 「地域観光戦略とTSA」をテーマに講演したフリートウッドさんは、OECD(経済協力開発機構)のTSA導入国の実例調査から、TSAの現況と課題を説明した。その中で、導入国では、必要なデータや理解の不足などの要因からTSAの活用が依然不十分であるとし、TSA利用者の能力向上や、多くの利害関係者をデータの作成、普及に参画させるなどの取り組みを進めることで有用性が向上すると提案した。

 TSAの地方への普及については「地域でのデータ収集は技術的に困難で、専門能力の不足など課題がある。地方での導入は州、県レベルまでだろう」と指摘。ただ、地方への導入手法について国際会議が開かれるなど議論が進んでいることや実践例を報告し、その重要性を強調した。

 次いでセントラルフロリダ大学准教授の原忠之さんが「TSA導入国の観光施策への応用とその実態」をテーマに講演した。TSAの導入効果について「観光による経済効果を算出でき、観光業育成のための予算要求に活用できる。それは地方でも可能だ」と話し、TSAの今後と方向性については、国全体から地域版のTSAへの移行に言及。「日本は地方への導入が比較的容易で、TSA先端国になる可能性がある」と語った。

 また、慶應義塾大学産業研究所准教授の宮川幸三さんは、日本の観光統計の現状と課題を紹介。観光統計、TSAを整備する上で地域レベルのデータ収集の重要性を指摘し、国と地域が一体となり地域における観光統計体系を整備することが必要だと論じた。

 講演した3人に日本ツーリズム産業団体連合会事業部長の今井雄三さん、大阪観光大学教授の佐竹真一さんが加わったパネルディスカッションも行われた。


情報提供:トラベルニュース社