トップインタビュー:アクセス国際ネットワーク 代表取締役社長 杉元力氏

  • 2009年3月25日
8年ぶりの後継機投入で経営基盤強化
変化のなかでもシェア50%を死守し、前年並みの収入確保へ


 アクセス国際ネットワークは今春から、現行の「AXESSII」および「AXESS Neo」の後継機「AXESS CREA」を投入することを発表した。実に8年ぶりとなる後継機の投入は、ユーザーの利便性向上だけでなく、厳しさを増す航空業界とCRS業界のビジネス環境に適応し、経営基盤を強化するねらいも込められている。日本を代表するCRS企業の改革に取り組む杉元力社長に、CRS/GDSビジネスの展望や同社の未来について聞いた。(聞き手:弊社代表取締役社長 岡田直樹)


―世界の経済環境や業界を取り巻く環境が激変するなかでの社長就任となりました

杉元力氏(以下、敬称略) 昨年6月の就任直後から、われわれを取り巻く環境は一気に厳しさを増し、収入の大幅な減少に直面した。そこで、ただちに業務改革委員会を立ち上げ、体制の立て直しに着手している。

 弊社の主な収入源は、航空会社からのブッキングフィーとユーザーからの端末利用料だが、航空需要の減退により、ブッキングフィーも大きく落ち込んだ。需要減退が一過性なのか、より長く続くのかは議論の分かれるところだが、少なくとも来年度においては状況が好転する要素が見当たらない。来年度は今年度以上に厳しい環境を前提とする必要があるとみている。ブッキングフィーはドル建てなので、円高の影響も大きい。

 ただし、端末利用料については、現在のアクセス端末数は約6000店舗・2万2000台で、航空需要減退の直接的な影響は受けていない。


―ゼロコミッション化を受けてIATA代理店を返上する動きもある。展開端末の減少や、それによる利用料減少も想定される

杉元 ゼロコミッション化の影響は軽々に判断できない。もうしばらく様子を見なければ何ともいえない。ただし業界に大きなインパクトを与えるのは間違いないだろう。一つの可能性として、ゼロコミッション化が先行している欧米の状況が参考になる。欧米の例にならえば、コミッション依存からからフィー徴収への変化が起き、それで補えない部分はスケールメリットを追う形になるかもしれない。それが結果的に旅行会社の合従連衡の動きになる可能性も否定できない。しかし、その場合の端末展開におよぼす影響までは読み切れない。

 いずれにせよ来年度がどのような状況になっても、今年度並みの収入を確保したい。そのためにはシェア確保が重要だ。現在、アクセスの日本におけるマーケットシェアはほぼ50%。これは死守していく。日本航空(JL)と連携した営業展開ではなく、あくまでも独立した営業活動を通じてシェアを取っていく。他方で、私自身がアクセス国際ネットワークの社長に就任するまで日本航空インターナショナルでアライアンスを担当していたこともあり、航空会社のアライアンスをからめた営業戦略は検討課題だとも考えている。


―日本の旅行業界で最も普及し最も利用されているCRSとして、改めてアクセスの強みは何だと考えますか

杉元 いくつかのGDSやCRSが日本で展開しているが、やはりアクセスの先行メリットは大きい。日本市場に特化し、業界に馴染んだ伝統的なCRSとしての強みを、今後とも発揮していけると考えている。またGDSのセーバーがわれわれの株の25%を所有しており、業務上も提携している。日本ではアクセスの強みを生かし、グローバルではセーバーの力を借りれば、「あわせ技」で、十分に他のGDSにも対抗していけると感じる。


―次世代を担う「AXESS CREA」が発表されました。後継機への期待は

杉元 「AXESS CREA」は今年5月に展開を開始し、来年3月までには約6000店舗・2万2000台の入れ替えを完了する計画だ。すでに全国6ヶ所での説明会も実施しており、順調に準備が進んでいる。とはいえ、個々の移行に際しては想定外の出来事が起きてしまう可能性もある。セキュリティや接続に関するさまざまな困難が発生する可能性も想定して開発部隊を増員し、サポート体制を整えている。その上で来年3月までの完了と安定稼働は、われわれのコミットメントだと考えてもらっていい。

 「AXESS CREA」は「AXESSII」と「AXESS Neo」の後継機となるが、アクセス国際ネットワークとしては8年ぶりの新システムとなる。ユーザーからの8年間分の要望と、技術的進化を反映させた次世代を担うのにふさわしいシステムができたと自負している。「AXESS CREA」ではコスト削減も期待でき、ユーザーによっては利用料をほぼ3分の1に削減できる。一方、アクセス国際ネットワークにとっても、専用端末と専用回線が不要になり合理化が可能になる。


―直近の業界を取り巻く環境は必ずしも良いといえない。少し長いレンジでの旅行業界、航空業界、CRS業界の展望は

杉元 旅行需要は景気回復がなければ本格的に戻ることはないと思う。特にビジネス渡航需要は相当に厳しい。しかし、円高や燃油サーチャージの値下げで観光旅行需要はプラスに働くと思う。航空会社はビジネス旅行と観光旅行では収益に大きな差が出るが、CRSはセグメント数のビジネスなので座席の数やクラスよりもセグメント数で収益が増加する。近距離より長距離方面の方がセグメント数が増える傾向もあるが、いずれにしてもボリュームの確保は重要だ。

 オンライン旅行会社が増加しているが、従来のビジネスも大事にしたうえで、新しい波にも対応していけるビジネスを構築することが重要と考えている。一方、長期的には、環境の変化による収入減を前提に経営を考える必要がある。したがって低コスト運営と低コスト体質による効率的な体制作りが欠かせない。

 旅行業界を取り巻く環境は厳しい環境にあるが、われわれのユーザーである旅行会社となんとかして共存共栄の道を探っていきたい。そのためにはユーザーの話をよく聞き、その意に沿えるよう最大限の努力をしていきたいと考えている。


―ありがとうございました


<過去のトップインタビューはこちら>