観光庁とUNWTO、京都市で観光と環境の国際シンポ開く

 観光庁と世界観光機関(UNWTO)は2月3日、京都市上京区の金剛能楽堂で「観光と環境に関する国際シンポジウム」を開いた。1997年にCOP3が開かれ、今年1月には政府の環境モデル都市に選定された京都市で、環境と伝統文化の持続可能な観光のあり方を探った。

 そのうち、京都府立大学の宗田好史准教授の講演は、京都市観光の経年データを示した現状と傾向の分析から始まった。「京都市は1995年から右肩上がりで観光入込客数が増えています。それまではアンノン族に代表される若年層が中心で、男女比はほぼ半々でした。今や、京都の観光客は40代から50代が過半数になりました。女性と男性は7対3の割合で圧倒的に女性が多くなっています」。

 京都観光の“女性化”が進んだ結果、何が起きたかというと「土産品の消費額は漸減傾向で、飲食費は年々増えています。つまり旅行に行って、ご近所に配る土産品を購入する行動から、自分が美味しいもの食べることに変わってきました」と宗田さん。

 さらに「観光スタイルがマスツーリズムからオルタナティブツーリズム、滞在型・体験型観光へと変化していく中で、観光が非日常的な行動から日常行動化してきました。京都に来て土産物を買っていた観光客が、少し上等なお漬物やおばんざいを購入するようになったのです。一方で住民は、家事のアウトソーシングがどんどん進んだことで余暇時間が増大し『今日はちょっと贅沢に』と、少し上等な食事を楽しむようになりました」。その結果、宗田さんは「日常化した観光客と非日常化した市民が同じ場所で過ごすことになってきました」と指摘。日常化した観光客と非日常化した市民を融合する手段が、京都のエコツーリズムではないかと提案した。

 このあとUNWTO本部のガボール・ヴェレクチさんが講演し「環境保全をビジネスにしなければなりません。ツーリズムはその手段になります」と話した。また、ローマ大学教授のアルマンド・モンタナーリさんは「質の高い食材は10キロメートル圏内にあるというのが一つの原則」などとイタリア発祥のスローフード運動を紹介し、「現在は作っている所を見て、食べて、買って帰るフードツーリズムが新たな潮流になっています」と話した。


情報提供:トラベルニュース社