個性が光る、ヨーロッパの古城ホテル(5)チェコ ズビロフ

  • 2009年2月6日
  これまで紹介してきたドイツやイギリス、スペイン、フランスなどは、数多くの古城ホテルがあり、日本からの旅行でもそこに泊まること自体を目的に旅行先として選ばれることも多い。しかし、日本人の旅行が多様化するなか、ヨーロッパのデスティネーションも西欧から中欧、東欧、さらにロシア方面へと広がっており、こうした方面へのチャーター便の運航やパッケージツアーの設定が増えている。今回は、中欧のチェコの古城ホテルを紹介したい。







 中世ヨーロッパで神聖ローマ帝国に属していたドイツと同じく、国内には大小多くの領主国が存在していたチェコには2000以上の城が現存している。その大半は国が所有しており、保存修復し、当時のままの美しい姿を見せてくれる。芸術的・歴史的にも価値があり、豪華な内装や絵画コレクション、兵器類、工芸品などを一般公開しているところも多い。そしてその中のいくつかは、古城ホテルとして運営されている。

 人気のホテルに「シャトーホテル・ズビロフ」がある。プラハの北西約30キロメートル、ちょうどプラハから温泉と美しい街並みで知られるカルロヴィ・ヴァリへ向かう道中にある。人口3000人弱の小さな町ズビロフ。シャトーホテル・ズビロフは町を見下ろす丘の上に建つ。12世紀にゴシック様式の城として建てられ、増改築を繰り返してきたため、現在ではおもにネオ・ルネサンス様式の城となっている。

 歴代の城主は、プシェミスル・オタカル2世、カール4世、ジムクント、ルドルフ2世など、歴史に名を残す皇帝たち。そんな城に泊まれるのかと、恐れ多い気分になってくる。また、チェコが誇る画家のアルフォンソ・ムハ(ミュシャ)が長期滞在をしていたことでも知られる。ムハは官能美を描くアールヌーボー画家で、パリで大成功をおさめて25年間を国外で過ごしたが、1910年に50歳で帰国し、スラブ民族の歴史を描く20点に及ぶ大連作『スラブ叙事詩』の制作に取り掛かった。この城こそ、『スラブ叙事詩』の制作場所なのである。彼は晩年この城にトータルで18年も滞在したのだ。スラブの民族意識が非常な高まりを見せていたこの時期、ムハはここからの景色をどんな思いで眺めたことだろう。

 長い間チェコ軍のために使われてきた城は、2008年春に客室数55室の高級シャトー・ホテルとして生まれ変わった。60ヘクタールの英国式庭園、礼拝堂、大小さまざまなサロンやホール。結婚式はもちろんのこと、イベント時には最大1500人が収容できるというから、多様な利用が可能だ。

 宿泊者でなくても、地下の隠し部屋や囚人の塔など、歴史に触れられるガイドツアーに参加できるので、チェコの周遊ツアーに組み込んでみるのも一案だ。


▽シャトーホテル・ズビロフ
http://www.zbiroh.com


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