外客数トップがブランド強化と受入整備に着手−観光大国フランスの新たな取組み

▽自己分析でホスピタリティ、テーマ性の薄さを認識

観光客の増加に向けては、新興国市場での対応を強化する。たとえば、BRICS諸国からの訪問者の増加をめざしており、その第1弾としてインドに観光局のオフィスを開設。イメージの醸成にはじまり、各種の情報提供やインターネットを活用したプロモーションを手がけていく。一方で、従来からフランスへの訪問者を送り出している日本を含む各国では、マーケティングを強化する。特に、旅行先を選択する決断に強くアピールしていくことを意識する。その際の大きな課題は、スペインやイタリアと比べ、人々のホスピタリティが薄いこと。さらに、テーマ性が弱いと認識。フランスのイメージが強い「食」のテーマでも現在はイタリアに及ばないと捉えている。
▽弱点の克服−フランスの強みと一極集中の打開

ただし、6つの課題は根本的な問題を含んでおり、例えば、交通の問題ではパリに一極集中する航空、鉄道の問題を検討しなければならない。他国と比べて観光客の地方への分散化が進んでおらず、フランスはパリに950万人、ニースに120万人のところ、スペインはバルセロナに470万人、マドリッドに390万人、セビリアに120万人、イタリアはローマに600万人、ベニスに290万人、ミラノに190万人、フィレンツェに170万人だ。こうした地方への誘客の少なさを「眠れる宝石(Sleeping Treasure)」と表現し、地方市場のプロモーションの強化が重要な施策と位置づける。このため、たとえばバスク地域など、近隣国との観光客の誘致についても積極的に取り組んでいく姿勢だ。さらにアクセス面では鉄道、航空の交通サービス提供者の協力が必要不可欠としている。
それ以外にも、コミュニケーションの不足や、消費者の期待値が低い点など、根本的な課題の解決が必要だ。たとえば、会議で指摘された点として、人々はイベントやお祭りなどでは開催前後の情報を求めており、これらの情報提供が有効であるとされた。また、食への研究を進め、ワインテイスティングに代表されるように職人気質をよりアピールしていくことで地方への誘客をはかっていく。フランスでは「フードフランス」と銘打ち、特徴あるフランスの地方の食を紹介する事業を手がけており、こうした機会を活用しながら、旅行のプロモーションにもつなげていく。
また、ホスピタリティの側面では、週末に店が休むことも言及された。現在はTGVがパリ/ロンドン間を2時間15分で走っており、ショッピングを目的とする場合はロンドンへ流れることも多いという。さらに、ファッション流行の発信地としてもパリからロンドンへ移っていると指摘もあり、観光業界として週末の店舗営業などを促していく考えもある。
▽2020年に向けて関係者の団結をうながす

世界的な傾向として、旅行以外の消費に資金を使う傾向があることから、平均的な消費をする旅行者層よりも、高額所得者層と格安旅行の旅行者層の両端に焦点をあてる。また、クチコミ情報をはじめインターネットでの情報発信を強化しつつ、価格と質のバランスを保つ。人々の休暇が短くなっていることに対しても明確なオファーを提案していくほか、フランスの安全性を打ち出し、環境問題にも引き続き課題として取り組んでいく。
こうした一連の施策のうち、法的な整備をするのが、観光担当大臣のエルベ・ノベリ氏。たとえば、宿泊施設の「星」の格付けは現在、4ツ星が最高だが、これを法改正により5ツ星として、現在の「最高級」ホテルの上に位置づけられるホテルを指定していく。
ノベリ氏は新施策を打ち出すことで、経済成長の基盤として重要性を認識すること、新たなブランド「フランス」のもとにひとつになって活動をすること、インターネットをはじめとする新たな手法を使いつつ、国と地域の協力で予算と効果の高い方法を志向していくことを強調。「フランスへ来ることが名誉であると思ってもらえることをしなければならない」と話し、新たな出発を関係者に促した。
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