取材ノート:アマデウス、環境変化への対応の鍵はサービス−IT企業へ転換

アマデウスが描く将来像

アマデウスが提供する資料によると、GDS業界の伸びはSARSによる世界的な旅行需要の低減からの反動で2004年に5.5%増と大きな伸びを示したものの、それ以降は2005年に1.4%増、2006年に0.7%増、2007年に3.8%増、2008年は夏現在で1.8%増と2004年を上回る強さはない。また、現在は原油価格が落ち着いているものの、航空会社は燃油に限らず、市場からコスト削減を迫られ、かつ消費者の価格に対するシビアな見方が世界的にも強まっている。エールフランス航空とKLMオランダ航空の経営統合、ノースウエスト航空とデルタ航空の合併、ルフトハンザ・ドイツ航空がスイス航空を傘下におさめ、ブリュッセル航空を買収、さらにブリテッシュ・エアウェイズとイベリア航空の合併交渉など、航空業界の環境は激変にさらされている。

技術の進化にどう対応する「IT」企業か

特に、進化の著しい分野が携帯電話を活用した各種サービスだ。この分野は日系航空会社が国内線でモバイル・チェックインをはじめ、携帯電話を利用した予約、フライトスケジュール情報の提供という旅行サービスの前段階から、到着地情報の旅行中など幅広いサービスで、世界各国でもリードする存在。アマデウスでも、航空機の再予約、到着地の天候や予定時間、到着空港からデスティネーションへの足回り、デスティネーション情報とホテルのチェックイン・サービスと旅行に関わる各種の動線でサービスを提供する。

こうしたサービスを提供する一方、これらのサービスをサポートすることが必要不可欠となる。たとえば、空港でチェックインする行為は24時間、世界中のどこかでおこなわれており、こうしたサービスを支援する場合には、常に細かな事柄から大きな問題への対応などが必要となる。旅行会社が予約するGDSでの対応も同様だが、世界の重要な拠点を視野にサービスセンターを置き、24時間対応が可能なサービスとして、こうした事態への対応、各オフィスでの連携を進めている。
データセンターのコンセプトと「フォロイング・ザ・サン」
アマデウスのデータセンターは、ドイツ・ミュンヘン
近郊のアーディング(Erding)にある。建設当初は、ア
メリカの国防総省「ペンタゴン」を模したデザインを採
用し、建物の構造も強固に作った。万一、電力の供給が
不足するといった、不測の事態への対応なども考えてつ
くられた。ただし、計画当初と異なり、現在は3ブロッ
クまでしか完成していない。その理由は、データの格納
量が当初の計画とは比べ物にならないほど進歩し、デー
タ量は増えているものの、技術の進歩によって対応でき
ている。一方で、計画当初のコンセプトは、安全性の確保。これについては、建物の周囲
を警備犬としてシェパードが巡回し、施設への不法な侵入を防ぐ体制を整え、個人情報を
含むデータを守っている。
航空・旅行会社は24時間、アマデウスの各種サービスを利用する。正確には、「世界中
の24時間」に対応する必要がある。アマデウスでは、太陽の昇る地点を追っていくという
考え方から「フォロイング・ザ・サン(Following the Sun)」と呼んでいる。このコン
セプトで対応するサービスセンターは、ドイツのアーディング、アメリカのマイアミ、そ
してオーストラリアのシドニーの3ヶ所。さらにタイのバンコクなど、これらを補完する場
所も備えている。データセンターと人による24時間体制の確立により、現在のアマデウス
の各種サービスが支えられている。
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