取材ノート:機内サービスはデスティネーションを知ってもらうきっかけ
スイス・インターナショナル・エアラインズ(LX)は先ごろ、チューリッヒでメディア向けのイベント「インフライト・サービス・デイ」を開催した。LXが機内サービスに取り組む姿勢や最新の機内食を披露。顧客と接する現場のキャビンアテンダントの声を拾い上げ、細部に行きとどくサービスを実現している。
▽「スイス大使」の役割も担う−郷土色豊かな機内食
スイス・インターナショナル・エアラインズ(LX)は2002年から、機内食プログラム「SWISS Taste of Switzerland(スイス・テイスト)」を展開している。これは、国際機内食協会(ITCA)によるマーキュリー・アワードを受賞するほど、好評を博しているサービス。3ヶ月ごとにスイスの地方や州にスポットをあて、その土地の一流シェフが監修したメニューを提供している。ワインやチーズなどはその土地のものを揃え、料理に使う製品や原料は可能な限り、スイス国内を産地とする食材を使用している。
インフライトサービス部門ディレクターのサラ・クラット−ウォルシュ氏は「われわれはスイス大使のような役割を果たしている。機内食がスイスという国をもっと知ってもらうきっかけになる」という。乗客は3ヶ月ごとに新たな味を味わえるだけでなく、次はどんな料理が提供されるのか想像する楽しみもできる。さらに、ケータリング会社は毎回違うシェフのノウハウを得ることができ、地方のホテルや業者にとってはビジネス拡大のチャンスにもなる。クラット−ウォルシュ氏は「すべての関係者にメリットがある」と、プログラムの効用に自信をのぞかせる。
LXの最新の機内食は2008年12月から2009年2月末まで、チューリッヒのドルダー・グランドホテルのメインダイニングでシェフを務めるヘイコ・ネイデル氏が監修する。ネイデル氏は36歳のドイツ人シェフで、2003年にディスカバリー・オブ・ザ・イヤーに選出されたほか、2008年にはミシュランの1ツ星も獲得。ドルダー・グランドホテルは1899年開業の老舗ホテルで、2008年4月に4年間にわたる改装を終えて再オープンして話題を集めており、LXの機内食の監修とあわせ注目される若手の敏腕シェフだ。
そのネイデル氏は「ゲストを楽しませる料理を作りたい」と意欲的だ。彼の料理は時にアバンギャルドとも表され、食感と味の組み合わせに卓越したセンスを感じるオリジナリティに富んでいる。今回の機内食でも、ビジネスクラスで供される前菜のローストビーフに、一見デザートとも思えるホワイト珈琲ゼリーを添えるなど、斬新な組み合わせで新しい味覚を実現していた。ネイデル氏は「機内では使える食材や量に制限があった」と機内食ゆえの苦労を語るが、それを感じさせない仕上がりになっている。
▽スイスらしさ溢れるユニークなフライト体験を
このスイス・テイストは今回で23回目。春以降は、ティチーノ州やシュヴィーツ州の味覚を紹介していくという。このスイス・テイストの対象は日本路線を含むスイス発の長距離便、および一部のスイス着便のファースト、ビジネスクラス。2009年9月以降には、アジアやアメリカ発路線にも拡大していく予定だという。
サービスを拡大する行程でも、LXはかたくなにその個性を大切にしている。スイスらしさにこだわり、LXでしか体験できないユニークなフライトを乗客に提供することに情熱を注ぐ。LX会長のロルフ・P・イェッツアー氏は今回のイベントの挨拶で、LXが基本とする3つの柱に、品質、伝統、独立性を掲げ、「ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)の傘下にあってもLXの個性は維持し、文化や独自性で競合他社と差別化をはかる」と強調する。もちろんLHとは積極的に意見交換をし、シナジー効果を最大限に活用していく意向だ。
LXのサービスコンセプトは、「フィーリング・アット・ホーム」(家にいるような感覚)。これを実現する要素として、数多くのスイス製品に表われる品質の良さ、細やかなパーソナルケア、そして観光立国として定評あるスイスホスピタリティをあげる。クラット−ウォルシュ氏は、「乗客の約40%はスイス人。ただし、たとえばアジアの人々やアメリカ人にも家で寛いでいるように感じてもらわなければならない」とコンセプトの幅広さと実現への意気込みを語った。
▽サービス・プロダクト開発には現場の声を重視
サービスやプロダクトの開発にあたり、クルーから寄せられる声は重視する項目だ。3人のクルーがインフライトサービス部門を兼務しており、フライト時に気づいたことを即時に意見するだけにとどまらず、およそ3500人いるクルーからは毎月1500件におよぶフィードバックが届く。その内容は多岐にわたり、なかには「パンの搭載数を増やしたほうがよい」といった現場ならではの声も寄せられている。これらの意見はひとつずつ精査され、実際のプランニングに反映される。
また、数年前からローコスト・キャリアのビジネスモデルも限定的に取り入れはじめている。ミニマム・グランド・タイム(最短地上待機時間)やミニマム・クルー・コンプリメント(最低乗務員数)を見直し、効率化を実現。限られた時間と人員でも高いサービスレベルは保つことが前提であるが、この点でもローコスト・キャリアの影響を受けながら改善をはかっている。
▽「スイス大使」の役割も担う−郷土色豊かな機内食
スイス・インターナショナル・エアラインズ(LX)は2002年から、機内食プログラム「SWISS Taste of Switzerland(スイス・テイスト)」を展開している。これは、国際機内食協会(ITCA)によるマーキュリー・アワードを受賞するほど、好評を博しているサービス。3ヶ月ごとにスイスの地方や州にスポットをあて、その土地の一流シェフが監修したメニューを提供している。ワインやチーズなどはその土地のものを揃え、料理に使う製品や原料は可能な限り、スイス国内を産地とする食材を使用している。
インフライトサービス部門ディレクターのサラ・クラット−ウォルシュ氏は「われわれはスイス大使のような役割を果たしている。機内食がスイスという国をもっと知ってもらうきっかけになる」という。乗客は3ヶ月ごとに新たな味を味わえるだけでなく、次はどんな料理が提供されるのか想像する楽しみもできる。さらに、ケータリング会社は毎回違うシェフのノウハウを得ることができ、地方のホテルや業者にとってはビジネス拡大のチャンスにもなる。クラット−ウォルシュ氏は「すべての関係者にメリットがある」と、プログラムの効用に自信をのぞかせる。
LXの最新の機内食は2008年12月から2009年2月末まで、チューリッヒのドルダー・グランドホテルのメインダイニングでシェフを務めるヘイコ・ネイデル氏が監修する。ネイデル氏は36歳のドイツ人シェフで、2003年にディスカバリー・オブ・ザ・イヤーに選出されたほか、2008年にはミシュランの1ツ星も獲得。ドルダー・グランドホテルは1899年開業の老舗ホテルで、2008年4月に4年間にわたる改装を終えて再オープンして話題を集めており、LXの機内食の監修とあわせ注目される若手の敏腕シェフだ。
そのネイデル氏は「ゲストを楽しませる料理を作りたい」と意欲的だ。彼の料理は時にアバンギャルドとも表され、食感と味の組み合わせに卓越したセンスを感じるオリジナリティに富んでいる。今回の機内食でも、ビジネスクラスで供される前菜のローストビーフに、一見デザートとも思えるホワイト珈琲ゼリーを添えるなど、斬新な組み合わせで新しい味覚を実現していた。ネイデル氏は「機内では使える食材や量に制限があった」と機内食ゆえの苦労を語るが、それを感じさせない仕上がりになっている。
▽スイスらしさ溢れるユニークなフライト体験を
このスイス・テイストは今回で23回目。春以降は、ティチーノ州やシュヴィーツ州の味覚を紹介していくという。このスイス・テイストの対象は日本路線を含むスイス発の長距離便、および一部のスイス着便のファースト、ビジネスクラス。2009年9月以降には、アジアやアメリカ発路線にも拡大していく予定だという。
サービスを拡大する行程でも、LXはかたくなにその個性を大切にしている。スイスらしさにこだわり、LXでしか体験できないユニークなフライトを乗客に提供することに情熱を注ぐ。LX会長のロルフ・P・イェッツアー氏は今回のイベントの挨拶で、LXが基本とする3つの柱に、品質、伝統、独立性を掲げ、「ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)の傘下にあってもLXの個性は維持し、文化や独自性で競合他社と差別化をはかる」と強調する。もちろんLHとは積極的に意見交換をし、シナジー効果を最大限に活用していく意向だ。
LXのサービスコンセプトは、「フィーリング・アット・ホーム」(家にいるような感覚)。これを実現する要素として、数多くのスイス製品に表われる品質の良さ、細やかなパーソナルケア、そして観光立国として定評あるスイスホスピタリティをあげる。クラット−ウォルシュ氏は、「乗客の約40%はスイス人。ただし、たとえばアジアの人々やアメリカ人にも家で寛いでいるように感じてもらわなければならない」とコンセプトの幅広さと実現への意気込みを語った。
▽サービス・プロダクト開発には現場の声を重視
サービスやプロダクトの開発にあたり、クルーから寄せられる声は重視する項目だ。3人のクルーがインフライトサービス部門を兼務しており、フライト時に気づいたことを即時に意見するだけにとどまらず、およそ3500人いるクルーからは毎月1500件におよぶフィードバックが届く。その内容は多岐にわたり、なかには「パンの搭載数を増やしたほうがよい」といった現場ならではの声も寄せられている。これらの意見はひとつずつ精査され、実際のプランニングに反映される。
また、数年前からローコスト・キャリアのビジネスモデルも限定的に取り入れはじめている。ミニマム・グランド・タイム(最短地上待機時間)やミニマム・クルー・コンプリメント(最低乗務員数)を見直し、効率化を実現。限られた時間と人員でも高いサービスレベルは保つことが前提であるが、この点でもローコスト・キャリアの影響を受けながら改善をはかっている。
取材協力:スイス・インターナショナル・エアラインズ、スイス政府観光局
取材:古屋江美子