トップインタビュー:アマデウス・ジャパン代表取締役 大竹美保氏
逆風のなかにあっても売上高10%増をめざす
ITソリューション企業として業界を活性化へ
航空会社の予約システムとして誕生したCRSは、世界的なネットワークを備えたGDSへと進化したが、航空会社の販売政策の変化やインターネットの普及・発展は、GDSの存在意義にも影響を及ぼしつつある。いまやGDSといえども単なる予約システムやネットワークの枠内だけに留まることを許されない。そうした環境変化の中にあっても、常に進化し続けることによってGDSのフロンティアを切り拓いてきたアマデウスは、すでにITソリューション企業としての方向性を明確にしている。2008年に創立10周年を迎えたアマデウス・ジャパンも、日本の旅行業界と旅行ビジネスの革新をIT分野から支え、欠かせぬ存在感を発揮しつつある。
―09年の市場動向とアマデウス・ジャパンの目標を聞かせてください
大竹美保氏(以下、敬称略) このところ経済情勢の変化はきわめて早く、激しいものがあります。誰にも3ヶ月先のことは分からない。したがって需要予測などもまともに機能しないのが現状です。ですから私はあえてアマデウス・ジャパンでは売り上げ10%増を目標に掲げています。こういう時期だからこそ悲観的な予測をもとに低い目標を持つのではなく、掲げた目標を達成するために何をすべきかを考えていくべきです。未来をForecastするのではなく、手にするべき未来のために、いわば“Backcast”する。そんな姿勢が重要なのだと思います。
また、こうも考えます。おそらく09年は旅行業界にとって厳しい環境になるでしょう。しかしアマデウス・ジャパンにとっては「ピンチがチャンス」にも成り得るのだと。アマデウスが旅行業界に対して提供できるのは、システムの有効活用による業務効率の向上やエラーの削減、品質管理の強化などです。これらはいずれもビジネス環境が厳しくなるほど、企業がより真剣に欲するものでもあります。アマデウスはそういうサービスを提供している。つまり各企業がアマデウスを欲してくれるチャンスでもあるわけです。
―競合企業もある中で、アマデウスの優位性は何でしょう
大竹 アマデウスは98年に日本支社を設立して以来、すでに10年間にわたって日本の旅行会社の皆様と苦楽をともにしてきた実績があります。しかもアマデウス・ジャパンはアマデウス本社の100%子会社であり、株主の構成という観点からも企業として非常に安定しています。投資家の思惑に翻弄されるようなこともなく、本業を追求できる体制と環境が整っているわけです。アマデウス本社の社長も創業当時からのメンバーで旅行業界とITの双方を熟知しています。ニースの開発部門には4000人もの技術者がおり常に最先端のテクノロジー開発に携わっています。
もっとも、アマデウスのようなITソリューション企業にとってテクノロジーは非常に重要ですが、最終的には「人」であり、サービスが最も大切なことは旅行業と同様です。顧客の声に耳を傾け、それを汲み上げつつ、より良い製品やサービスを提供していく。その積み重ねが欠かせません。そこでアマデウス・ジャパンは09年には「トラベルITサービス部」を8人体制で正式発足させ、旅行会社に対するコンサルティングやシステムのカスタマイズの要望などに、これまで以上に丁寧に取り組める態勢を整えます。
日本の旅行会社の海外進出においてもアマデウスは何らかの貢献ができるはずです。日本の旅行会社も、日本市場だけを相手にするのではなくなりつつあります。市場が拡大している地域でビジネスの展開を模索する旅行会社も出てきました。そうした場合、世界の各地域で事業を展開し、拠点を持っているアマデウスならば、何らかの形で旅行会社の海外進出に役立てるはずです。
―日本の旅行会社にとっては09年から本格的にスタートするゼロコミッションへの対応が急務となります。アマデウスの立場では、どのような対応を考えていますか
大竹 ゼロコミッション化は十分予測できたことなので、アマデウス・ジャパンとしては2年ほど前から対策を準備してきました。アマデウスにはすでにゼロコミッションが定着している欧米での経験と実績があり、旅行会社に対してもさまざまなお手伝いができると思います。たとえばゼロコミッション化の影響を最も受けると思われる業務渡航系の旅行ビジネスについては、コミッションからサービスフィー型のビジネスモデルへの転換に役立てられる業務渡航系のツールを用意しています。
アマデウスのオンライン出張予約・管理システム「Amadeus e-Travel Management」は、単なるセルフブッキングツールではなく、出張規定などを反映させることができ内部統制やコンプライアンスの面でも安心できるうえ、レポーティング機能まで備え、出張コスト管理にまで気配りされたツールです。こうした点が旅行会社からは高く評価されており、海外出張の予約・管理サービス提供に関するJTBコーポレートソリューションズ(JCS)との提携にもつながりました。「Amadeus e-Travel Management」と、JCSの法人向け旅費・経費管理システム「J’s NAVI」を連携することで、出張管理や清算業務を一段と効率化できるようにしたわけです。
―業務渡航ビジネスと同様にレジャーマーケットも多くの難問を抱えています。アマデウスのITソリューションによって、09年の旅行業界を活性化できますか
大竹 アマデウスが持つ開発力、人材、技術力をもってすれば不可能ではないと信じています。ひとつのキーワードはダイナミックパッケージだと考えます。旅行会社の店頭で配布される膨大なチラシやパンフレットに頼ったパッケージツアーの販売は、効率の点からみても無駄が多く、変わっていくべきです。そこで期待されるのがダイナミックパッケージですが、欧米流のダイナミックパッケージでは日本のマーケットに馴染まないのも事実です。求められるのは日本オリジナルのダイナミックパッケージです。09年は日本式ダイナミックパッケージをブレークさせたい。それが旅行業界の活性化につながると期待したいところです。
アマデウスはアジア・太平洋地域で、2010年ごろをめどにヨーロッパで旅行会社に提供している「ダイナミック・プライス」とコミュニケーション機能を兼ね備えたシステム「トラベルテイメント」を展開する計画で、日本語版も2010年後半にはリリースする予定です。しかし、日本ではすでに日本式ダイナミックパッケージを展開すべく旅行会社と共同で開発に取り組んでいます。日本の旅行業界と旅行市場に新たなダイナミックパッケージを根付かせていくことも、アマデウス・ジャパンの大切な仕事だと考えています。
――ありがとうございました
<過去のトップインタビューはこちら>
ITソリューション企業として業界を活性化へ
航空会社の予約システムとして誕生したCRSは、世界的なネットワークを備えたGDSへと進化したが、航空会社の販売政策の変化やインターネットの普及・発展は、GDSの存在意義にも影響を及ぼしつつある。いまやGDSといえども単なる予約システムやネットワークの枠内だけに留まることを許されない。そうした環境変化の中にあっても、常に進化し続けることによってGDSのフロンティアを切り拓いてきたアマデウスは、すでにITソリューション企業としての方向性を明確にしている。2008年に創立10周年を迎えたアマデウス・ジャパンも、日本の旅行業界と旅行ビジネスの革新をIT分野から支え、欠かせぬ存在感を発揮しつつある。
―09年の市場動向とアマデウス・ジャパンの目標を聞かせてください
大竹美保氏(以下、敬称略) このところ経済情勢の変化はきわめて早く、激しいものがあります。誰にも3ヶ月先のことは分からない。したがって需要予測などもまともに機能しないのが現状です。ですから私はあえてアマデウス・ジャパンでは売り上げ10%増を目標に掲げています。こういう時期だからこそ悲観的な予測をもとに低い目標を持つのではなく、掲げた目標を達成するために何をすべきかを考えていくべきです。未来をForecastするのではなく、手にするべき未来のために、いわば“Backcast”する。そんな姿勢が重要なのだと思います。
また、こうも考えます。おそらく09年は旅行業界にとって厳しい環境になるでしょう。しかしアマデウス・ジャパンにとっては「ピンチがチャンス」にも成り得るのだと。アマデウスが旅行業界に対して提供できるのは、システムの有効活用による業務効率の向上やエラーの削減、品質管理の強化などです。これらはいずれもビジネス環境が厳しくなるほど、企業がより真剣に欲するものでもあります。アマデウスはそういうサービスを提供している。つまり各企業がアマデウスを欲してくれるチャンスでもあるわけです。
―競合企業もある中で、アマデウスの優位性は何でしょう
大竹 アマデウスは98年に日本支社を設立して以来、すでに10年間にわたって日本の旅行会社の皆様と苦楽をともにしてきた実績があります。しかもアマデウス・ジャパンはアマデウス本社の100%子会社であり、株主の構成という観点からも企業として非常に安定しています。投資家の思惑に翻弄されるようなこともなく、本業を追求できる体制と環境が整っているわけです。アマデウス本社の社長も創業当時からのメンバーで旅行業界とITの双方を熟知しています。ニースの開発部門には4000人もの技術者がおり常に最先端のテクノロジー開発に携わっています。
もっとも、アマデウスのようなITソリューション企業にとってテクノロジーは非常に重要ですが、最終的には「人」であり、サービスが最も大切なことは旅行業と同様です。顧客の声に耳を傾け、それを汲み上げつつ、より良い製品やサービスを提供していく。その積み重ねが欠かせません。そこでアマデウス・ジャパンは09年には「トラベルITサービス部」を8人体制で正式発足させ、旅行会社に対するコンサルティングやシステムのカスタマイズの要望などに、これまで以上に丁寧に取り組める態勢を整えます。
日本の旅行会社の海外進出においてもアマデウスは何らかの貢献ができるはずです。日本の旅行会社も、日本市場だけを相手にするのではなくなりつつあります。市場が拡大している地域でビジネスの展開を模索する旅行会社も出てきました。そうした場合、世界の各地域で事業を展開し、拠点を持っているアマデウスならば、何らかの形で旅行会社の海外進出に役立てるはずです。
―日本の旅行会社にとっては09年から本格的にスタートするゼロコミッションへの対応が急務となります。アマデウスの立場では、どのような対応を考えていますか
大竹 ゼロコミッション化は十分予測できたことなので、アマデウス・ジャパンとしては2年ほど前から対策を準備してきました。アマデウスにはすでにゼロコミッションが定着している欧米での経験と実績があり、旅行会社に対してもさまざまなお手伝いができると思います。たとえばゼロコミッション化の影響を最も受けると思われる業務渡航系の旅行ビジネスについては、コミッションからサービスフィー型のビジネスモデルへの転換に役立てられる業務渡航系のツールを用意しています。
アマデウスのオンライン出張予約・管理システム「Amadeus e-Travel Management」は、単なるセルフブッキングツールではなく、出張規定などを反映させることができ内部統制やコンプライアンスの面でも安心できるうえ、レポーティング機能まで備え、出張コスト管理にまで気配りされたツールです。こうした点が旅行会社からは高く評価されており、海外出張の予約・管理サービス提供に関するJTBコーポレートソリューションズ(JCS)との提携にもつながりました。「Amadeus e-Travel Management」と、JCSの法人向け旅費・経費管理システム「J’s NAVI」を連携することで、出張管理や清算業務を一段と効率化できるようにしたわけです。
―業務渡航ビジネスと同様にレジャーマーケットも多くの難問を抱えています。アマデウスのITソリューションによって、09年の旅行業界を活性化できますか
大竹 アマデウスが持つ開発力、人材、技術力をもってすれば不可能ではないと信じています。ひとつのキーワードはダイナミックパッケージだと考えます。旅行会社の店頭で配布される膨大なチラシやパンフレットに頼ったパッケージツアーの販売は、効率の点からみても無駄が多く、変わっていくべきです。そこで期待されるのがダイナミックパッケージですが、欧米流のダイナミックパッケージでは日本のマーケットに馴染まないのも事実です。求められるのは日本オリジナルのダイナミックパッケージです。09年は日本式ダイナミックパッケージをブレークさせたい。それが旅行業界の活性化につながると期待したいところです。
アマデウスはアジア・太平洋地域で、2010年ごろをめどにヨーロッパで旅行会社に提供している「ダイナミック・プライス」とコミュニケーション機能を兼ね備えたシステム「トラベルテイメント」を展開する計画で、日本語版も2010年後半にはリリースする予定です。しかし、日本ではすでに日本式ダイナミックパッケージを展開すべく旅行会社と共同で開発に取り組んでいます。日本の旅行業界と旅行市場に新たなダイナミックパッケージを根付かせていくことも、アマデウス・ジャパンの大切な仕事だと考えています。
――ありがとうございました
<過去のトップインタビューはこちら>