皆さんの一番大事なものって何ですか? 鳥取県智頭町で観光シンポジウム

 鳥取県智頭町(寺谷誠一郎町長)はこのほど、観光シンポジウムを開いた。中国横断道・姫路鳥取線の開通で、定住人口の減少や観光客に通過されてしまうことに危機感を抱いた町が企画し、日本政策投資銀行の藻谷浩介さん、観光カリスマでまちづくり観光研究所の山田桂一郎主席研究員が講演した。町民ら約100人が参加した。

 藻谷さんは、人口増減や就業人口数など全国自治体と智頭町のデータを対比しながら「流出人口が多い智頭町は危機的な状況です。ただ、全国でもトップクラスなのが老人保険料の少なさ。これは元気なお年寄りが多く、お年寄りに住みやすい町だからでしょう。熟年が増えれば雇用、サービスが発生し若者も増えていきます。高速道開通に手をこまねいていてはスポイル現象が起きるだけです。都市圏と近くなったことを利用し、都会に住む高齢者に来てもらうことを考えましょう」と話した。

 山田主席研究員は「観光は飽きられますが、暮らしの豊かさは飽きられません」と話し、独自の生活文化を大切にしている沖縄の離島や、村民の自治を守るため車の乗り入れを禁止したスイス・ツェルマットなどが結果的に多くの観光客で賑っていることを事例として紹介した。さらに「ここに住む皆さんにとって一番大事なもの、智頭町の豊かさって何でしょうか。そこがスタートです」と語り、住みやすい町が観光客や移住者が増えることにつながると強調した。

 智頭町では「疎開のまち」を掲げて、ストレスの多い都市生活者に対して移住を呼びかける取り組みを始めた。町民と行政の協働体制をつくるため、まちづくりのプランを策定する町民の百人委員会も発足。そのうち、子どもが自由に遊べる森の保育園や廃校舎を長期滞在の施設にすることなどに対し、町の新年度予算に計上することを検討している。

 シンポジウム会場で寺谷町長は、多数参加した中高年層に向けて「若い木はなかなか火がつきません。炎にするためには枯れ木が必要です。もう一度、力を振り絞って燃えてみませんか」と話し、今日聞いた2人の話をこれからの智頭町に生かしていこうと呼びかけていた。


情報提供:トラベルニュース社