ルフトハンザ、環境フォーラムを開催−「代替燃料、現状は不完全」

  • 2008年12月17日
 ルフトハンザ・ドイツ航空(LH)は12月4日、環境問題を担当するカールハインツ・ハーグ博士を本国から招き、都内で「環境フォーラム」を実施した。LH日本支社長のオットー・ベンツ氏は、「アジア太平洋地域における日本の役割は、非常に大きい。環境に配慮した循環型社会の持続性を保つためにも、日本との連携が不可欠」と挨拶。日本/フランクフルト線が2011年に就航50周年を迎えるが、「この半世紀で使用機材は環境を配慮する変化を遂げており、シベリア航路へルートを移行したことで低燃費を実現した。さらに50年後の2061年には、CO2全廃の時代を迎えたい」と語った。

 LHは1995年以来、環境保護に関する成果や目標を編纂した環境リポート「バランス」を発行している。その巻頭には、「環境に対する社会的責務は、(社の)ビジネスの成功をおさめるためにも避けることができない」と明記。こうした取り組みは、会社の格付けや株価指標にも良い影響を与えており、2008年、「ダウジョーンズ・サスティナビリティー・インデックス」にも再度選定された。

 ハーグ博士はフォーラムの前半で、測定を始めた1991年以降(1)燃料消費率を継続的に減少させ、さらに(2)運航実績を上げつつ燃費消費量を低減させたことを紹介。100キロメートルの輸送にかかる旅客一人当たりの平均燃料は、17年前は6.20リットルだったが、現在は4.32リットルと約3割の低減を実現した。また、輸送量は232%増だが、それに対する消費燃料は121%増にとどまり、LHが燃費効率を高めながら、輸送実績も上げていることを強調した。

 さらに、騒音問題については、1994年に初の大気調査プロジェクトを社内で立ち上げ、それ以降、長期にわたる取り組みで離着陸時の騒音の削減に成功している。燃費の効率化とならび、騒音の削減は機材の進化と密接な関わりがある。エアバス社やボーイング社の技術開発が進むなか、同社では環境保護に対応した新型機材170機の購入に140億ユーロ(約1.8兆円)を資本投下し、さらなる改善をめざす。

 「技術開発」は、「インフラ」や「運航対策」「経済対策」とならび、LHが掲げる「運航効率向上と気候保護推進のための四戦略」の柱のひとつとなっている。技術開発において、機材と並ぶ大きな課題は燃料だ。ハーグ博士は「現在使用されているケロシン燃料の代替燃料として期待されるバイオ燃料は、現状では不完全であり、食糧問題との関連も気になる。ルフトハンザは2020年までに合成燃料を活用できるよう、独自に目標設定をしている」という。


▽欧州を単一の空域に−実現で12%の排出量の削減が可能

 空港や空域の効率的な運用についても、「インフラ整備を進めるうえで欠かせないのが、政治的・経済的グローバル化だ」とも、ハーグ氏はいう。通貨では統合された欧州も、航空管制の運用においては、いまだ国境が存在しており、「シングル・ヨーロッパ・スカイ」を積極的に推進することで、空港・空域の効率化につながるという。

 具体的には、ローマからアムステルダムまでの飛行ルートは、空域の都合上、リヨン上空などを経由する迂回ルートで運航しており、約30%もの燃料を無駄に使っている。LHの試算によれば、一日当たり170万リットルもの燃料費負担を強いられている計算だ。欧州域内を単一の空域とすることで、欧州全体で最大12%の排出量削減が実現できると推計されている。

 排出権取引(ETS)については、2012年の導入をめざし欧州域内で検証が進められているが、グローバルな視野ではEU独自のシステムを採用すると、EUをパッシングする状況に陥る可能性も示唆した。このため、LHをはじめ航空会社の競争力を阻害しない、欧州単一空域の整備が求められる。そのためには、「政治的な働きかけや(上述の)具体的戦略による実証が不可欠」とハーグ氏は強調した。(文:千葉千枝子)