新IT運賃の導入、旅行・航空各社に緊急アンケート−「導入しない」の回答も
全日空(NH)が発表した、2009年上期以降の募集型企画旅行商品に燃油サーチャージを含むIT運賃(いわゆる「新IT運賃」)を提示することに関し、トラベルビジョンは外国航空会社、旅行会社を対象に10月23日に緊急アンケートを実施した。欧米、アジアなど航空会社13社、ホールセール、メディア系など旅行会社6社から回答を得た。
今回のNHの決定について、回答した旅行会社6社ともに肯定的に捉えている。「大変重い決断だったと思う。このANAの決断が主流となっていくことを期待してやまない」という意見が代表的だろう。その一方で、航空会社は肯定的に捉える回答が3社、「分からない・答えられない」の回答が8社となった。ただ、「分からない・答えられない」でも「日本の航空会社として社会的責任を果たした」と前向きの評価もあるが、「(自社での導入は)現実的に難しい」や「状況を分析している」など、各社には微妙な温度差があるようだ。
旅行会社で「新IT運賃」の提供を航空会社に正式に打診しているのは4社、希望を含めると5社。これに対し、航空会社側は旅行会社から「新IT運賃」の提供を打診されているかの問いに、8社が「ある」とし、「分からない・答えられない」が3社、1社は「旅行会社の方々の様々なご意見・ご心配をすべて解決する単一の答えが存在しないため、様々なご意見を頂いている」との回答となった。中には、正式な打診を「2社から受けている」という回答もあった。
旅行会社が打診をしているものの、前向きな回答を得ている例は少なく、現段階で「前向きな回答はない」というのが主流のようだ。航空会社の回答もこれに呼応しており、「いくつかの選択肢を検討している」とのコメント以外は、「日本航空(JL)の動きを待つ」が3社、「白紙・検討していない」が1社、「本社が決定する」が2社で、「導入しない方向」の回答も1社あった。ただし、回答がない場合でも、検討している姿勢を示す会社もある。
▽市場価格への鋭敏な対応が課題
航空会社が検討しながらも、旅行会社への回答が遅れている理由には、現在は燃油価格が下落するものの、燃油サーチャージの決定するプロセスと変動幅の激しさがあげられる。旅行会社は、現在の燃油サーチャージ額は付加運賃のレベルを「超えている」と全てが回答したが、航空会社は「超えていない」や「分からない・答えられない」が大勢。一般論として、航空会社の一部で「超えている」との認識を示すものの、答えは単純でない。特に、「シーズナリティにより価格変動がある旅行価格と、フェアカテゴリー、シーズナリティにより大きく異なる航空運賃との単純比較はできない」という意見をはじめ、「航空会社、路線別などさまざまな観点で、燃油サーチャージ額そのものも違う」など、全般的に上昇したことは認めつつ、本体運賃と付加運賃の基準が違う中での評価、検討ではないとの考えが強い。
それに対し、旅行会社側のコメントは「燃油代は運賃の一部」や、販売現場で消費者に対面することから「一部では旅行商品より燃油の方が高いという、およそ消費者には理解できそうもない商品販売が現実におこっており、付加のレベルを超えている」との回答があった。航空会社は自社の損益に直接影響する視点、旅行会社は損益よりも販売側に重点を置いた意見が多く、その隔たりは強い。
また、現在の原油価格、あるいは複数の航空会社からアンケートで指摘を受けたが「ジェット燃料価格」で見ても、それらの激しい値動きに燃油サーチャージは鋭敏に反応ができない。現在の燃油サーチャージ額の決定について、申請前の3ヶ月間の平均価格で決定する仕組みを指摘する意見、本社判断の影響、さらに航空会社の燃油をヘッジした場合にまで言及された。航空会社のこうした状況に理解を示す旅行会社もあり、「短期間に原油価格が上下に振れている中で、燃油サーチャージの見直しが現実のスピードにあわせられなかった。今の段階では(市況価格と)やや乖離していると思う」とのコメントも寄せられた。さらに、下落する局面では、航空会社も旅行会社も戦略的に総額表示ではなく、3ヶ月ごとに申請する現在の仕組みを利用したいという意見もあった。
なお、トラベルビジョンでは引き続きアンケートの回答を得た会社が増加次第、現状をレポートする。
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◆全日空、新IT運賃の導入を決定−日本航空は一部で調整、外航は様子見か(2008/10/23)
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旅行会社で「新IT運賃」の提供を航空会社に正式に打診しているのは4社、希望を含めると5社。これに対し、航空会社側は旅行会社から「新IT運賃」の提供を打診されているかの問いに、8社が「ある」とし、「分からない・答えられない」が3社、1社は「旅行会社の方々の様々なご意見・ご心配をすべて解決する単一の答えが存在しないため、様々なご意見を頂いている」との回答となった。中には、正式な打診を「2社から受けている」という回答もあった。
旅行会社が打診をしているものの、前向きな回答を得ている例は少なく、現段階で「前向きな回答はない」というのが主流のようだ。航空会社の回答もこれに呼応しており、「いくつかの選択肢を検討している」とのコメント以外は、「日本航空(JL)の動きを待つ」が3社、「白紙・検討していない」が1社、「本社が決定する」が2社で、「導入しない方向」の回答も1社あった。ただし、回答がない場合でも、検討している姿勢を示す会社もある。
▽市場価格への鋭敏な対応が課題
航空会社が検討しながらも、旅行会社への回答が遅れている理由には、現在は燃油価格が下落するものの、燃油サーチャージの決定するプロセスと変動幅の激しさがあげられる。旅行会社は、現在の燃油サーチャージ額は付加運賃のレベルを「超えている」と全てが回答したが、航空会社は「超えていない」や「分からない・答えられない」が大勢。一般論として、航空会社の一部で「超えている」との認識を示すものの、答えは単純でない。特に、「シーズナリティにより価格変動がある旅行価格と、フェアカテゴリー、シーズナリティにより大きく異なる航空運賃との単純比較はできない」という意見をはじめ、「航空会社、路線別などさまざまな観点で、燃油サーチャージ額そのものも違う」など、全般的に上昇したことは認めつつ、本体運賃と付加運賃の基準が違う中での評価、検討ではないとの考えが強い。
それに対し、旅行会社側のコメントは「燃油代は運賃の一部」や、販売現場で消費者に対面することから「一部では旅行商品より燃油の方が高いという、およそ消費者には理解できそうもない商品販売が現実におこっており、付加のレベルを超えている」との回答があった。航空会社は自社の損益に直接影響する視点、旅行会社は損益よりも販売側に重点を置いた意見が多く、その隔たりは強い。
また、現在の原油価格、あるいは複数の航空会社からアンケートで指摘を受けたが「ジェット燃料価格」で見ても、それらの激しい値動きに燃油サーチャージは鋭敏に反応ができない。現在の燃油サーチャージ額の決定について、申請前の3ヶ月間の平均価格で決定する仕組みを指摘する意見、本社判断の影響、さらに航空会社の燃油をヘッジした場合にまで言及された。航空会社のこうした状況に理解を示す旅行会社もあり、「短期間に原油価格が上下に振れている中で、燃油サーチャージの見直しが現実のスピードにあわせられなかった。今の段階では(市況価格と)やや乖離していると思う」とのコメントも寄せられた。さらに、下落する局面では、航空会社も旅行会社も戦略的に総額表示ではなく、3ヶ月ごとに申請する現在の仕組みを利用したいという意見もあった。
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