現地レポート:新しい海外教育旅行「修学旅行+語学研修」に同行取材
海外教育旅行に新しい需要の兆し
ケアンズでの「修学旅行+語学研修」に同行取材
佼成学園女子高等高校(東京都)は今年、修学旅行と語学研修を組み合わせた新しい形の教育旅行を実施した。昨年までは語学研修は海外、修学旅行は国内と、別の時期に別の行き先で実施していたが、今年は修学旅行を初めて海外に変更し、その後、語学研修の参加者は現地に残って語学研修をするというスケジュールにした。この新しい教育旅行のメリットと成功の秘訣を現地に同行し、関係者に取材した。(取材協力:オーストラリア政府観光局、クイーンズランド州観光公社、取材:戸谷美津子)
費用、スケジュール面でメリット多い
「修学旅行+語学研修」が実施された背景について、オーストラリア政府観光局(TA)日本地区トレードマーケティング部長の岩田達朗氏は、「保護者の経済的負担の軽減と修学旅行の繁忙期回避という要望に対応した結果」、と説明する。費用の面では、修学旅行と語学研修を同時に実施すると、往復1回分の航空運賃が不要になる。燃油サーチャージの値上りが続き、総額費用が増加するなか、保護者にとって大きなメリットだ。佼成学園女子高等高校では1988年以来、希望者を対象に夏休みを利用した2週間から3週間の語学研修を、ニュージーランドで実施していた。しかし、過去2年は希望者が1ケタに落ち込み、実施を見送った。今回の語学研修に、修学旅行の参加者150名のうち20名が参加したのは、費用に割安感があったことが理由の1つと考えられる。
また、スケジュールの点では、近年の修学旅行で体験・交流型のプログラムが重視されているが、修学旅行は11月に実施されることが多いため、現地交流を希望する場合は受け入れる学校やホームステイ先が不足気味になる。この状況を避けたいという要望が、学校や旅行会社から寄せられていた。夏休みの語学研修にあわせて修学旅行を実施することで、必然的に時期をずらすことになり、課題の解決につながる。
さらに、語学研修に参加する生徒にとっては、修学旅行が現地生活のウォーミングアップになる。修学旅行での体験プログラムや自由時間の散策で、外国人と接することや街の雰囲気にも慣れてくる。さらに修学旅行中の1泊のホームステイ体験で、語学研修での4週間のホームステイにも抵抗なく生活に溶け込みやすくなり、語学研修の時間を全力で過ごすことができるだろう。
保護者、学校にメリットを享受し、希望が高まれば、今後の教育旅行に「修学旅行+語学研修」の例が増えてくるだろう。今回の教育旅行を担当した近畿日本ツーリスト(KNT)東京第3教育旅行支社の※松野忠之氏は「修学旅行+語学研修」について、修学旅行が学校単位での同一方面への旅行から旅行中のクラス別や班別行動の増加、さらに同じ学校でも複数の方面に分けて実施するなど多様化していることを引き合いに、「今回は方面に限
らず、現地での滞在期間の多様化」と、時流にあっ
た当然の変化であると受けとめる。
※松野氏の「まつ」の漢字は本来、木ヘンにハの下に口
早めの準備と徹底したコミュニケーションが成功の秘訣
今回の試みに対し、KNT松野氏は「新しい教育旅行を実施した先取り感を評価する」という。その一方で、「保険の適用期間や持参する外貨、持ち物など、すべてに2種類の案内が必要。事務手続きは煩雑になり、修学旅行や語学研修を単独でするよりも手間は10倍かかる」というのが、実務に対する実感だ。
学校への説明会は昨年10月から実施。しかし、同校にとって初のスタイルの教育旅行であったため、予想以上のコミュニケーションが必要となり、当初のスケジュール通りに進まなかった。同校の井上まゆみ教諭は「教育旅行を成功させるには、教師全員の共通理解と協力が欠かせない」と強調。学校側のねらいや目的、事情をよく話しあった上で、実施までの準備として必要なことを組み立て、バックアップすることを求める。確かに手間がかかるが、深部まで旅行会社側の配慮があることで学校側にとって心強いものになり、成功する教育旅行につながるだろう。
KNT松野氏は今後、「修学旅行+語学研修」の教育旅行について、「学校のニーズがあれば対応していく」との考えだ。事務手続きなどの煩雑さは繰り返し実施するにつれて解決するとし、今後の展開に期待を寄せる。また、TAの岩田氏は「旅行会社は学校からの要求に対し、見積もりの提示に終始してしまいがちだが、新しいタイプの教育旅行を積極的に提案して欲しい」と、旅行会社にとって価格以外の競争力につながることもアピールする。
対象校、実施に向けたポイント
佼成学園女子高等学校は中高一貫教育の私立校。英語を含む国際教育に力を入れており、語学研修や英語での技能教科の実施、英検に向けて全校生徒で勉強する「英検祭り」などのユニークな試みのほか、1年から2年の間に1年間、ニュージーランドへ長期留学をする「特進留学コース」がある。英語に関心の高い生徒が多いが、長期留学は経済的な理由や理系の進路選択者には1年間の日本不在はデメリットになるため、興味があっても実施できない場合がある。今回の教育旅行はこうした生徒にとって、「ミニ留学」を実現する格好の機会となり、満足度が高かった。これらの点を考えるとターゲットは、総体的な費用としては高額になるため、私立校が有力。英語や国際教育に力を入れ、新しい試みに柔軟に取り組める独自の教育方針の学校といえるだろう。
実施時期は長期休暇の前に実施することになるが、語学研修の期間を長く取るなら夏休み前がよいだろう。ただし、日本の夏休み前は北半球の英語圏の場合、受け入れ校も夏休みとなってしまう。実は今回の教育旅行は、ケアンズで名門として知られる「トリニティ・アングリカン・スクール」が受け入れ校となり、語学学校ではなく、地元の生徒が通う現地の学校に通い、生徒との交流はもちろん、現地の学校生活を肌で体験できることもポイントとなっている。こうした点を考慮すると、「修学旅行+語学研修」は南半球で、教育旅行に必要な素材や充実した受け入れ態勢を整えるデスティネーションが最適のように思える。
ケアンズでの「修学旅行+語学研修」に同行取材
佼成学園女子高等高校(東京都)は今年、修学旅行と語学研修を組み合わせた新しい形の教育旅行を実施した。昨年までは語学研修は海外、修学旅行は国内と、別の時期に別の行き先で実施していたが、今年は修学旅行を初めて海外に変更し、その後、語学研修の参加者は現地に残って語学研修をするというスケジュールにした。この新しい教育旅行のメリットと成功の秘訣を現地に同行し、関係者に取材した。(取材協力:オーストラリア政府観光局、クイーンズランド州観光公社、取材:戸谷美津子)
費用、スケジュール面でメリット多い
「修学旅行+語学研修」が実施された背景について、オーストラリア政府観光局(TA)日本地区トレードマーケティング部長の岩田達朗氏は、「保護者の経済的負担の軽減と修学旅行の繁忙期回避という要望に対応した結果」、と説明する。費用の面では、修学旅行と語学研修を同時に実施すると、往復1回分の航空運賃が不要になる。燃油サーチャージの値上りが続き、総額費用が増加するなか、保護者にとって大きなメリットだ。佼成学園女子高等高校では1988年以来、希望者を対象に夏休みを利用した2週間から3週間の語学研修を、ニュージーランドで実施していた。しかし、過去2年は希望者が1ケタに落ち込み、実施を見送った。今回の語学研修に、修学旅行の参加者150名のうち20名が参加したのは、費用に割安感があったことが理由の1つと考えられる。
また、スケジュールの点では、近年の修学旅行で体験・交流型のプログラムが重視されているが、修学旅行は11月に実施されることが多いため、現地交流を希望する場合は受け入れる学校やホームステイ先が不足気味になる。この状況を避けたいという要望が、学校や旅行会社から寄せられていた。夏休みの語学研修にあわせて修学旅行を実施することで、必然的に時期をずらすことになり、課題の解決につながる。
さらに、語学研修に参加する生徒にとっては、修学旅行が現地生活のウォーミングアップになる。修学旅行での体験プログラムや自由時間の散策で、外国人と接することや街の雰囲気にも慣れてくる。さらに修学旅行中の1泊のホームステイ体験で、語学研修での4週間のホームステイにも抵抗なく生活に溶け込みやすくなり、語学研修の時間を全力で過ごすことができるだろう。
保護者、学校にメリットを享受し、希望が高まれば、今後の教育旅行に「修学旅行+語学研修」の例が増えてくるだろう。今回の教育旅行を担当した近畿日本ツーリスト(KNT)東京第3教育旅行支社の※松野忠之氏は「修学旅行+語学研修」について、修学旅行が学校単位での同一方面への旅行から旅行中のクラス別や班別行動の増加、さらに同じ学校でも複数の方面に分けて実施するなど多様化していることを引き合いに、「今回は方面に限
らず、現地での滞在期間の多様化」と、時流にあっ
た当然の変化であると受けとめる。
※松野氏の「まつ」の漢字は本来、木ヘンにハの下に口
早めの準備と徹底したコミュニケーションが成功の秘訣
今回の試みに対し、KNT松野氏は「新しい教育旅行を実施した先取り感を評価する」という。その一方で、「保険の適用期間や持参する外貨、持ち物など、すべてに2種類の案内が必要。事務手続きは煩雑になり、修学旅行や語学研修を単独でするよりも手間は10倍かかる」というのが、実務に対する実感だ。
学校への説明会は昨年10月から実施。しかし、同校にとって初のスタイルの教育旅行であったため、予想以上のコミュニケーションが必要となり、当初のスケジュール通りに進まなかった。同校の井上まゆみ教諭は「教育旅行を成功させるには、教師全員の共通理解と協力が欠かせない」と強調。学校側のねらいや目的、事情をよく話しあった上で、実施までの準備として必要なことを組み立て、バックアップすることを求める。確かに手間がかかるが、深部まで旅行会社側の配慮があることで学校側にとって心強いものになり、成功する教育旅行につながるだろう。
KNT松野氏は今後、「修学旅行+語学研修」の教育旅行について、「学校のニーズがあれば対応していく」との考えだ。事務手続きなどの煩雑さは繰り返し実施するにつれて解決するとし、今後の展開に期待を寄せる。また、TAの岩田氏は「旅行会社は学校からの要求に対し、見積もりの提示に終始してしまいがちだが、新しいタイプの教育旅行を積極的に提案して欲しい」と、旅行会社にとって価格以外の競争力につながることもアピールする。
対象校、実施に向けたポイント
佼成学園女子高等学校は中高一貫教育の私立校。英語を含む国際教育に力を入れており、語学研修や英語での技能教科の実施、英検に向けて全校生徒で勉強する「英検祭り」などのユニークな試みのほか、1年から2年の間に1年間、ニュージーランドへ長期留学をする「特進留学コース」がある。英語に関心の高い生徒が多いが、長期留学は経済的な理由や理系の進路選択者には1年間の日本不在はデメリットになるため、興味があっても実施できない場合がある。今回の教育旅行はこうした生徒にとって、「ミニ留学」を実現する格好の機会となり、満足度が高かった。これらの点を考えるとターゲットは、総体的な費用としては高額になるため、私立校が有力。英語や国際教育に力を入れ、新しい試みに柔軟に取り組める独自の教育方針の学校といえるだろう。
実施時期は長期休暇の前に実施することになるが、語学研修の期間を長く取るなら夏休み前がよいだろう。ただし、日本の夏休み前は北半球の英語圏の場合、受け入れ校も夏休みとなってしまう。実は今回の教育旅行は、ケアンズで名門として知られる「トリニティ・アングリカン・スクール」が受け入れ校となり、語学学校ではなく、地元の生徒が通う現地の学校に通い、生徒との交流はもちろん、現地の学校生活を肌で体験できることもポイントとなっている。こうした点を考慮すると、「修学旅行+語学研修」は南半球で、教育旅行に必要な素材や充実した受け入れ態勢を整えるデスティネーションが最適のように思える。