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現地レポート:アメリカ フライ&ドライブで巡る、カリフォルニア内陸の旅

  • 2008年9月19日
フライ&ドライブで巡る、カリフォルニア内陸の旅
サンフランシスコからロサンゼルスへ


新しい海外旅行のスタイルとして、日本旅行業協会(JATA)はフライ&ドライブの普及に力を入れている。その格好のデスティネーションが、アメリカ。添乗員付きツアーの減少とFIT化が進み、観光を目的とする渡航者が相対的に減少するなか、ドライブ旅行という新しい魅力を打ち出し、活性化をはかる考えだ。特にデスティネーションとしてのカリフォルニアは開発され尽くした感があるが、レンタカーで巡ると新しい発見、出会いが待ち受けていた。ドライブ旅行の魅力と、そこに旅行会社の介在するチャンスとしては何があるか。JATAが実施したカリフォルニア州のフライ&ドライブ研修旅行に同行し、その可能性をレポートする。(取材:竹井智、取材協力:日本旅行業協会、カリフォルニア州観光局、ロサンゼルス観光局、サンフランシスコ観光局)


腕ならしを兼ねて、サンフランシスコ郊外へドライブ

 今回のルートは、サンフランシスコがスタート。州道99号線のフリーウェイを南下しながら、ツアーのハイライトであるヨセミテ国立公園をはじめとする観光地に立ち寄りつつ、ロサンゼルスをめざす。

 慣れない土地なのでカーナビもレンタルし、3人ずつ4台のレンタカーに分乗。ハンドルを握ると、方向指示器とワイパーのスイッチが日本の右ハンドルの車とは逆にあり、誰もが一度は方向指示のつもりでうっかりワイパーを作動させる誤操作をする。少し緊張しつつもこれまで何度も訪れているサンフランシスコの街並みを自分で運転してみると、距離感がぐっと近づいたような新鮮な印象を受けた。まるで、この街に暮らしているような感じだ。

 腕慣らしを兼ねて訪れた最初の目的地は、ダウンタウンからゴールデンゲートブリッジを渡ったところにあるミュアウッズ国定公園。ここは550エーカーにおよぶセコイア杉などの保護地域で、樹齢1000年以上の杉や高さ76メートル以上の杉をはじめ、ホールテールフィン(スギナの仲間)と呼ばれる世界最古の草が生育する。

 このミュアウッズ国定公園が位置するマリン・カウンティーは、サンフランシスコからわずか30分程度。しかし、その面積の80%に手付かずの自然が残り、見どころが多い。週末ともなると、サンフランシスコから大勢の観光客が押し寄せるという。特に人気が高い過ごし方はハイキングとマウンテンバイクで、無理をしないハイキングならフライ&ドライブに格好のアクティビティになるだろう。




宿泊は混雑を避け、普通の街でアメリカの素顔に触れる

 ヨセミテ国立公園への道中では、サンフランシスコ東部に広がるワイン・カントリーエリア「トリバレー地区」にある1883年創業の「ウェンテ・ワイナリー」で、オーガニックな食材のヘルシー料理を堪能。このほかにも、道路に立つアイスクリームの屋台や郊外の素朴なショップを見かけると、ついつい立ち寄りたくなる。こんな楽しみはドライブならではのものだ。このころになると、右側通行の運転にも慣れ、自信がついてくる。

 ヨセミテ国立公園内では、トレーラーに乗って園内を巡るツアーに参加したが、せっかくのフライ&ドライブなのだから、レンタカーで巡った方がいいだろう。1日では到底回りきれないほど広大な公園を、行きたい場所に自分のペースで訪れることができる。また、ヨセミテでの宿泊はツアーの場合、公園内にあるいくつかの宿泊施設を利用することが多いが、ハイシーズンは人気があるホテルの場合、レストランの利用にもウェイティングが生じることもあるほど混み合う。

 そこで今回はあえて園内での宿泊を避け、ヨセミテの入り口にあたる街、マーセドに連泊した。パッケージツアーはもちろん、FITでも訪れないような観光的に何もない街だ。そんなマーセドに宿泊した理由は、フライ&ドライブの旅には無理のないスケジュールとゆったりとした休息が必要だから。しかも、フライ&ドライブらしい体験にも出会える。夕食時にレストランの前でなんともなしに通りを見ていると、20代の若者たちから声をかけられた。とりとめのない話をしただけなのだが、ごく普通のアメリカ人の若者がどんなことに興味を持ち、どんな暮らしをしているか、その片鱗に触れることができたのは楽しかった。小さな街で素顔のアメリカに出会う楽しみも、フライ&ドライブならではだろう。




レンタカーだからこそ味わえる醍醐味

 ヨセミテのあとはいよいよ、ロサンゼルスへ向かった。ざっと280マイル(約440キロメートル)、ノンストップだと5時間弱のドライブだ。3人で交代しながら運転すると、大して疲れを感じなかった。やはり道路が走りやすいのだ。紅一点の参加だったウェブトラベルのパートナー本部トラベル・コンサルタントの小河聡子さんが「市街地以外は楽に運転できた」というように、フリーウェイの走行は非常に運転しやすく、例えば「ヨセミテには何番の出口で降りる」という表示が、出口付近のみならず、早い段階で出てくる。また、標識が見やすく、出口そのものもわかりやすい。

 また、途中では休憩を兼ねて、車がないと立ち寄れないような、小さな観光スポットを訪れた。そのひとつが、セコイア国立公園にほど近いスクワーバレーにある「スクワーバレー・ハーブガーデン」だ。元教師のローズマリーさんが庭に植えたハーブを利用して、その効能の説明やオリジナルのハーブオイルづくりなどを教えてくれる。売店ショップでは各種ハーブ製品を販売しており、お土産にぴったりだ。

 この辺りはグレープフルーツをはじめとする果物の産地でもあり、道路沿いには小さな売店が点在している。いずれも地元の人が商売しているのだろう。こういう売店に立ち寄り、もぎたてを味わいながら世間話をしてみるのも楽しいもの。実はここで、フライ&ドライブならではの出来事があった。道路脇の広場にクルマを止め、後続車を待っていたときのこと。通りすがりのクルマから、「大丈夫か?」と、声をかけられた。広大なアメリカでは、見渡す限り人家のない場所がある。そういう場所では助けあっていかなければ暮らしが成り立たない。このドライバーは、我々がトラブルで立ち往生しているのではないかと気遣ってくれたようだ。旅先でのこういうふれ合いは非常に気持ちが良く、今回の旅行で印象深い思い出の1つとなった。




不安感の解消が重要、旅行会社の腕の見せどころに

 夕方、無事にロサンゼルスへ到着。翌日は市内のサンセット・ブルーバードやハリウッド・サイン、チャイニーズ・シアターなどの観光地、ベニスやサンタモニカといったビーチにも足を運んだ。郊外とは異なり、市内は交通量が多いため運転には気を遣うが、ドライブ旅行も5日目となれば慣れてくる。しかし、旅行は都市部からスタートするわけで、フライ&ドライブを普及し、現地で本当に楽しんでもらえるためには、海外でのドライブに対する不安感をいかに解消するかがポイントになるだろう。

 研修旅行に参加したアイエシイ・トラベルつくば学園都市支店・法人営業の須田邦裕さんからは「長距離を行く場合、到着初日は現地で宿泊し、ゆっくり休んだ後に出発してはどうか」と、体調管理と安全に配慮したコメントが聞かれた。伸和エージェンシーの常務取締役東京本部長の浜本正克氏は「運転に慣れるまでの1日から2日間、現地ガイドが同乗し、市内観光をしながら実地で現地の交通ルールや運転マナーを講習するシステムを提案してみたい。講習後は自信が付き、より安全にドライブが楽しめるようになるだろう」と、新しいアイディアをのぞかせる。マーケットとして団塊の世代を想定すれば、マンパワーとして2万円から3万円程度の料金アップは問題にならないだろう。

 また、アールアンドシーツアーズの本社営業部営業チームの大内裕紀氏も、「アメリカでのドライブは、団塊の世代にとって、青春を取り戻すことのできる魅力的な旅だ。普及のためには、インフォメーションを充実させる必要を感じた」と、可能性とともに課題を指摘。カーナビや交通ルールなど、事前の情報を伝える重要性は、多くの参加者が指摘していた。

 たとえば、交差点での右左折。正面の信号が赤でも、アメリカでは交通の流れに注意して右折することが可能だ。しかし日本人は、どうしても青になるまで待ってしまうし、左折時には、反対車線へ進入しないよう気をつけなければならない。こうした基本についてもきちんと解説し、慣れておく必要がある。さらに、交通マナーも知っておく必要がある。アメリカでは交通弱者保護の精神が日本以上に浸透しており、交差点を横断しようとする歩行者がいれば、必ず車が立ち止まる。この点は旅行者に重々、アドバイスしたい。

 ちなみに今回、サンフランシスコ空港のレンタカーカウンターで、車を借りた。その際、持参したバウチャーを見せたが、日本で予約したクラスの車は出払っていて1台もなく、手続きに手間取った。結局は事前に予約したクラスの車に乗ることができたが、こうした事態を避けるためには事前説明や問題解決のためのQ&A作成には力を入れておきたい。安全に、安心して、気持ちよく運転できるサポートをすることが、旅行会社が手配するフライ&ドライブの強みとなるだろう。