現地レポート:ラスベガス 標高マイナス86メートルの大地、デス・バレー
標高マイナス86メートルの大地、デス・バレー
−ラスベガスからの小旅行デスティネーション
目の前に広大な渓谷が見えてくる。大地は塩の結晶で覆われて白く輝き、彼方に見える山には一本の木も見えない。不思議な圧力を感じるのは、ここが海面より低いマイナスの標高の場所だからだ。カリフォルニア州とネバダ州の州境に沿って広がるデス・バレー国立公園は、ラスベガスからの日帰り、もしくは一泊の小旅行のデスティネーションとしてアクセスが良い。ラスベガスを基点に、アメリカ南西部の大自然を体感するツアーに理想的なデスティネーションだ。(取材:宮田麻未 写真:神尾明朗、取材協力:ラスベガス観光局、ネバダ州政府観光局、大韓航空)
北米で最も暑い大地
そびえ立つ岩壁の中腹に「Sea Level」(海抜ゼロ)と書かれた大きな標識が見える。海抜マイナス86メートルの地点に立っているのだと気がついたとたん、空気が急に重く感じられてくる。手に持っていたペットボトルが気圧の変化でへこんでしまっている。
振り向けば、真っ白な塩の原の中に、トロリとした銀色の水をたたえた水溜まりのようなものが見える。「バッドウォーター」と呼ばれるこの小さな池は塩分が非常に濃く、飲めるような水ではない。太陽は真冬でもギラギラと輝いている。ここは米国で最も乾燥し、最も暑い地点だ。1913年の7月10日、気温が摂氏56.7度まで上がったこともある。これは、北米では最高気温、記録に残されているものでは世界でも2番目の高気温だ。ちなみに、現在までの世界最高気温はイラクのバスラで1921年に記録された58.8度だという。
デス・バレー国立公園は、長野県とほぼ同じ広さ(約1万3500平方キロメートル)。公園へのアクセスルートは複数あるが、ラスベガスからの日帰りツアーの場合、観光の中心になるバッドウォーター地区は州道15号線から127号線を経由して約3時間。乾燥した山岳地帯を通り抜け、アメリカ南西部の雄大な景観を楽しみながらドライブする。デス・バレーは冬の観光地として人気があるが、ドイツ人観光客は「灼熱のドライヒート体験」として、あえて夏に訪れる人もいる。今回のドライブでもそうしたドイツ人に遭遇したほど。年間の半分近くは日中の温度が30度を超えるため、季節にかかわらず、できるだけ早朝にラスベガスを出発したいところだ。
ダンテズ・ビューからの眺望をセールスポイントに
写真やテレビなどで、デス・バレーの風景を何度も見たことがある人でも、初めて高台からこの広大な谷間を見渡した時の感動は特別だ。「死の谷」という名がふさわしいと感じると同時に、その美しさに激しく心を揺さぶられるだろう。
少人数でのツアーなら、デス・バレー・ジャンクションから190号線を通って公園に入るように日程を組むのがおすすめだ。往復1時間ほどの寄り道になるが、まずダンテズ・ビューから谷間全体を見渡してみよう。ここに通じる枝道は車の長さ制限(最高7.7メートル)があるため、大型バスでは入れないので要注意。
標高1370メートルのダンテズ・ビューからの眺めは、文字通りダンテの「神曲」に描かれた地獄のように荒涼とした大渓谷だ。真下にはバッドウォーターが輝き、白い塩の原の向こうにはパナミント山脈の2500メートルを超える山々が連なっている。天気の良い日なら、北に向かって伸びている渓谷の奥の方まで見渡せる。
190号線に戻ると、渓谷に入る前にもう一ヶ所、サブリスキー・ポイントと呼ばれる展望エリアがある。約1千万年前、ここが巨大な湖の底だった時に堆積した土砂が浸食され、斜面に不思議な形の「造形」が刻み込まれた。深緑、灰色がかった緑、黄土色、茶色、赤と、堆積した土砂の層が、まるで絵を描いたように色の帯になって続いている。デス・バレーで宿泊する日程なら、落日のころにここへ戻ると良いだろう。太陽の光を受けて、斜面が赤みをおびた金色に輝き、浸食部分が複雑な影を作る様子は、世界中のカメラマンを魅了しつづけている。
ハイキングで「死の谷」に生きる動植物に出会う
デス・バレーは「死の谷」と呼ばれてはいるが、ファーニス・クリークのように豊な水のわき出る泉もあり、ビックホーン・シープから鹿、コヨーテなど50種もの野生動物、350種の野鳥、そして36種類の爬虫類が生息している。年間の降雨量は50ミリ以下だが、雨が降った直後に砂漠のあちこちに咲く野草の幻想的な美しさは息をのむほど。公園内にある比較的距離の短いハイキング・トレイルを使い、ハイキングをかねた自然観察やバードウォッチングを日程に組み込むのも一案。また、国立公園のレンジャーによる公園の自然や地理の解説や歴史ツアーなどのプログラムも興味深い。事前に予約すれば、ツアーグループのためにアレンジすることもできる。
このうち、ハイキングを日程に入れるツアーなら、サブリスキー・ポイントからゴールデン・キャニオンへ向けてトレイルがあるので、ここから歩き始めることもできる。190号線沿いのゴールデン・キャニオン・トレイル入り口の駐車場にバスを回しておけば、下りと平坦な道のみのハイキングで、およそ2時間の行程。ただし、山を下る部分はかなり歩きにくい。このゴールデン・キャニオン・トレイルは、190号線の入り口から平坦な部分だけ(往復約1時間)歩くことも可能。浸食された狭い谷間の底を歩くと、崖の上から差し込む光がまさに「黄金の谷」と呼ばれるにふさわしい神秘的な雰囲気だ。
−ラスベガスからの小旅行デスティネーション
目の前に広大な渓谷が見えてくる。大地は塩の結晶で覆われて白く輝き、彼方に見える山には一本の木も見えない。不思議な圧力を感じるのは、ここが海面より低いマイナスの標高の場所だからだ。カリフォルニア州とネバダ州の州境に沿って広がるデス・バレー国立公園は、ラスベガスからの日帰り、もしくは一泊の小旅行のデスティネーションとしてアクセスが良い。ラスベガスを基点に、アメリカ南西部の大自然を体感するツアーに理想的なデスティネーションだ。(取材:宮田麻未 写真:神尾明朗、取材協力:ラスベガス観光局、ネバダ州政府観光局、大韓航空)
北米で最も暑い大地
そびえ立つ岩壁の中腹に「Sea Level」(海抜ゼロ)と書かれた大きな標識が見える。海抜マイナス86メートルの地点に立っているのだと気がついたとたん、空気が急に重く感じられてくる。手に持っていたペットボトルが気圧の変化でへこんでしまっている。
振り向けば、真っ白な塩の原の中に、トロリとした銀色の水をたたえた水溜まりのようなものが見える。「バッドウォーター」と呼ばれるこの小さな池は塩分が非常に濃く、飲めるような水ではない。太陽は真冬でもギラギラと輝いている。ここは米国で最も乾燥し、最も暑い地点だ。1913年の7月10日、気温が摂氏56.7度まで上がったこともある。これは、北米では最高気温、記録に残されているものでは世界でも2番目の高気温だ。ちなみに、現在までの世界最高気温はイラクのバスラで1921年に記録された58.8度だという。
デス・バレー国立公園は、長野県とほぼ同じ広さ(約1万3500平方キロメートル)。公園へのアクセスルートは複数あるが、ラスベガスからの日帰りツアーの場合、観光の中心になるバッドウォーター地区は州道15号線から127号線を経由して約3時間。乾燥した山岳地帯を通り抜け、アメリカ南西部の雄大な景観を楽しみながらドライブする。デス・バレーは冬の観光地として人気があるが、ドイツ人観光客は「灼熱のドライヒート体験」として、あえて夏に訪れる人もいる。今回のドライブでもそうしたドイツ人に遭遇したほど。年間の半分近くは日中の温度が30度を超えるため、季節にかかわらず、できるだけ早朝にラスベガスを出発したいところだ。
ダンテズ・ビューからの眺望をセールスポイントに
写真やテレビなどで、デス・バレーの風景を何度も見たことがある人でも、初めて高台からこの広大な谷間を見渡した時の感動は特別だ。「死の谷」という名がふさわしいと感じると同時に、その美しさに激しく心を揺さぶられるだろう。
少人数でのツアーなら、デス・バレー・ジャンクションから190号線を通って公園に入るように日程を組むのがおすすめだ。往復1時間ほどの寄り道になるが、まずダンテズ・ビューから谷間全体を見渡してみよう。ここに通じる枝道は車の長さ制限(最高7.7メートル)があるため、大型バスでは入れないので要注意。
標高1370メートルのダンテズ・ビューからの眺めは、文字通りダンテの「神曲」に描かれた地獄のように荒涼とした大渓谷だ。真下にはバッドウォーターが輝き、白い塩の原の向こうにはパナミント山脈の2500メートルを超える山々が連なっている。天気の良い日なら、北に向かって伸びている渓谷の奥の方まで見渡せる。
190号線に戻ると、渓谷に入る前にもう一ヶ所、サブリスキー・ポイントと呼ばれる展望エリアがある。約1千万年前、ここが巨大な湖の底だった時に堆積した土砂が浸食され、斜面に不思議な形の「造形」が刻み込まれた。深緑、灰色がかった緑、黄土色、茶色、赤と、堆積した土砂の層が、まるで絵を描いたように色の帯になって続いている。デス・バレーで宿泊する日程なら、落日のころにここへ戻ると良いだろう。太陽の光を受けて、斜面が赤みをおびた金色に輝き、浸食部分が複雑な影を作る様子は、世界中のカメラマンを魅了しつづけている。
ハイキングで「死の谷」に生きる動植物に出会う
デス・バレーは「死の谷」と呼ばれてはいるが、ファーニス・クリークのように豊な水のわき出る泉もあり、ビックホーン・シープから鹿、コヨーテなど50種もの野生動物、350種の野鳥、そして36種類の爬虫類が生息している。年間の降雨量は50ミリ以下だが、雨が降った直後に砂漠のあちこちに咲く野草の幻想的な美しさは息をのむほど。公園内にある比較的距離の短いハイキング・トレイルを使い、ハイキングをかねた自然観察やバードウォッチングを日程に組み込むのも一案。また、国立公園のレンジャーによる公園の自然や地理の解説や歴史ツアーなどのプログラムも興味深い。事前に予約すれば、ツアーグループのためにアレンジすることもできる。
このうち、ハイキングを日程に入れるツアーなら、サブリスキー・ポイントからゴールデン・キャニオンへ向けてトレイルがあるので、ここから歩き始めることもできる。190号線沿いのゴールデン・キャニオン・トレイル入り口の駐車場にバスを回しておけば、下りと平坦な道のみのハイキングで、およそ2時間の行程。ただし、山を下る部分はかなり歩きにくい。このゴールデン・キャニオン・トレイルは、190号線の入り口から平坦な部分だけ(往復約1時間)歩くことも可能。浸食された狭い谷間の底を歩くと、崖の上から差し込む光がまさに「黄金の谷」と呼ばれるにふさわしい神秘的な雰囲気だ。
デス・バレーのオアシスで憩う至福のリゾート
―ファーニス・クリーク
デス・バレーは地下に水系が広がっており、泉を利用
したオアシスのようなリゾート「ファーニス・クリーク」
がある。周辺は、地下から湧き出す水温30度の泉で潤さ
れた美しい緑地帯が広がり、パームツリーの並木が涼し
げな影を作っている。18ホールの本格的ゴルフ場まであ
るので、海抜マイナス50メートル以下の砂漠でプレーす
る貴重な体験もできる。
ハリウッドのスター達の隠れ家ホテル
「ファーニス・クリーク・イン」
ファーニス・クリーク・インが誕生した1920年代のア
メリカは、第一次大戦の特需景気に沸き、ハリウッドの
スターや資産家の人々は、「見たこともないような場所
への旅」という新しい娯楽を楽しんでいた時代。泉から
わき出る水をたっぷり使うゴージャスなプール、大きな
暖炉のあるロビー、エレガントな客室。この贅沢なホテ
ルは、避寒のための高級リゾートとしてのデス・バレー
の誕生でもあった。
リノベーションの手は入っているが、創業から80年を経てもファーニス・クリーク・
インの風格は少しも変わっていない。ロナルド・レーガンから、アンソニー・クィンや
ピーター・フォンダなど、お気に入りのホテルとして今も数多くのリピーターを迎えて
いる。営業は10月中旬から5月中旬まで。客室数が66と少なく、早めの予約が必要だ。
日帰りツアーの場合でも、デス・バレーと山々を見渡せるレストランで、アフタヌーン
ティやサンデーブランチを楽しみたい。
▽ファーニス・クリーク・イン
http://www.furnacecreekresort.com
ウエスタン気分なら「ファーニス・クリーク・ランチ」
ファーニス・クリーク・ランチは、1880年代にはじま
った牧場がリゾート・ホテルに発展したもの。今も開拓
時代の雰囲気が残され、ウエスタン映画のシーンに溶け
込んでしまったような気がする。客室は広い敷地に分散
し、全224室はシンプルで余裕のある設計で、家族連れで
も使い勝手が良い。大型バスを使うグループでも利用で
きる。レストランはステーキなどの肉料理のメニューが
中心で、ここでもウエスタン気分がいっぱいだ。
ほとんどの宿泊客は連泊してデス・バレーの観光はも
ちろん、ゴルフや乗馬、テニスコートなどのアクティビ
ティを楽しんでいる。なかでも、一番の魅力はプールだ
ろう。1日400万リットルというが湧き出す泉から直接プ
ールに流れ込んでくる水は、心地よい温かさでサラサラ
とした肌触り。また、夜には澄み切った漆黒の空にまる
で宝石を撒き散らしたような星が輝く。チェックイン時
に、「プールは10時までオープンしていますから、ぜひ
泳ぎにいらしてください」とフロントのスタッフがわざ
わざ付け加えたのは、この素晴らしい星空の下で泳ぐ楽
しさを味わって欲しかったからのようだ。
▽ファーニス・クリーク・ランチ
http://www.furnacecreekresort.com
ラスベガスへのアクセスに大韓航空を利用−サービス・乗継とも快適に
日本からラスベガスへは大韓航空(KE)を利用するこ
ともできる。東京発の場合、成田/ロサンゼルス線の
KE001/002便を利用し、ロサンゼルスでコードシェアを
するノースウエスト航空(NW)をはじめ、乗り継ぎ便と
接続した利用ができる。特に、乗継時間は利用便によっ
て、2時間から3時間ほど。また、東京以外の地方都市発
の場合はソウル・仁川国際空港を経由することも選択肢
のひとつだ。
東京発の場合は、9月29日以降はロサンゼルスに8時40
分着のスケジュール。このKE001便は成田発ロサンゼル
ス行きの便のうち、最も早く到着する。このため、各航
空会社が到着して入国審査場が込み合う前にイミグレー
ションの手続きを済ませることが出来る。
機内食は国際機内食協会(ITCA)のマーキュリー賞で、
最優秀機内食賞(マーキュリー・ゴールド・アワード)
を受賞した「ビビンバ」など韓国料理をはじめ、おかゆ
など日本人も好むメニューも用意している。言葉の面で
も、KE001/002便には日本人乗務員が搭乗しているほか、
韓国人客室乗務員も基本的な日本語の会話ができ、サー
ビス面では日本人にあったきめ細かな対応をしてくれる。
このロサンゼルス線を利用してラスベガスへ行く場合、
下期からビジネスクラス正規割引運賃として「プレステ
ージクラス・パスカル」を新設。平日の場合、成田発は
44万円、それ以外の都市は名古屋・新潟発では47万円か
らで設定しており、有効期間は6ヶ月、購入は出発当日
まで可能。また、エコノミークラスのペックス運賃では、
来年3月1日にKEが創立40周年を迎えることから、この下
期の最安値として3月1日から4日間、40周年にちなんで
ウェブのみの販売となる「ウェブ・パスカル1M」で4万
円からで設定している。なお、運賃は燃油サーチャージ、
航空保険料などを除き、政府認可を要する。
▽大韓航空ホームページ
http://www.koreanair.com/
▽大韓航空 成田/ロサンゼルス線スケジュール(9月29日以降)