ハワイ・ライフ&カルチャー(3):ハワイアン・ウクレレができるまで
ハワイアン・ウクレレができるまで
〜製造過程で知る、音色の価値〜
ハワイで生まれ育まれた、かわいくて気軽で、それでいて奥が深い素敵な楽器、ウクレレ。あの心地よい音色を奏でるウクレレはどのようにして生まれるのか――。奥深い魅力に興味が湧いて、製造過程を知るべく、人気ブランドの工房を訪問してみた。そこで見た、繊細な工程をつぶさに紹介しよう。(取材:Nui)
▽シリーズ
◆ハワイ・ライフ&カルチャー:ウクレレのルーツと音色の秘密(2008/07/17)
◆ハワイ体験レポート(27)−発祥地で楽しむウクレレの祭典(2008/07/31)
代表的なメーカー、コアロハ・ウクレレの工場へ
日系のオオカミ・ファミリーが経営している「コアロハ」といえば、今や「カマカ」と並ぶハワイを代表するウクレレ・メーカーだ。その工房では、職人たちの手によってコアの木から高品質のウクレレが日々生み出されている。それでは、ホノルルを走る観光ワイキキ・トロリーの停留所でもあり、観光名所になりつつあるコアロハ・ウクレレ工房にお邪魔しよう。
▽貴重なコアの木材
工房内を案内してくれるのはマネージャーのブライアンさん。「まずはウクレレの素材となるコアの木材をお見せしましょう。この工房に入ってくるのはハワイで取れたコアの木を切り出し、よく乾燥させた質の良い木材です」
この木材が、あの乾いた軽やかな音色を奏でるコア・ウクレレになるのだ!
「コアの木の中にはトラ目の模様が入ったカーリー・コアと呼ばれるものがまれにあります。とくにこのような細かい模様の入ったカーリー・コアは数千本から1万本に1本しかない貴重な木です。硬度も強く、木目が美しいことから、珍重されています」
▽パーツの削り出し
「ウクレレ作りの最初の難関は、木材からウクレレの各パーツを削り出す作業です。ボディ部の天板、底板、サイドのカーブ板、そしてネックとヘッド部、さらに付属する小さなパーツのすべてをここから削り出します。この作業は、工房責任者のポールがすべて一人で担当する、重要なプロセスです」
木材の選び出し、各パーツの削り出しを担当するのは若き職人ポールさん。彼はコアロハ・オーナーであるオオカミ・ファミリーの次男である。音色の良さ、ルックスの美しさは、すべてこの段階で左右されると言っても過言ではないそうだ。
▽ボディの組み立て
「パーツの切り出しの次はボディ・セクションです。削り出した板をウクレレのボディの形に組み立てます。まず、ウクレレ本体サイドのカーブしている部分に使う板を曲げる作業です。この機械を使って板を少しずつゆっくりと曲げていきます。この作業の前に板を熱湯に20分つけてやわらかくしておきます。これで硬いコアの板も作業しやすくなります」
「板を曲げる作業が終わったら、ウクレレ・ボディの型枠にはめ込み乾燥させます」
型枠から外すと、見事にウクレレ・ボディのラインができている。
「この状態から天板と底板を貼り付けてボディ部を組み立てます。まずはサウンド・ホールのある天板を下にしてボディを乗せ接着します。続いて、補強材の添え木を接着します。サウンド・ホールのすぐ下の板枠は、コアロハ・ウクレレだけが持つユニ・ブレイスというオリジナル補強材です。コアロハ・ウクレレが簡単に割れない秘密はこのユニ・ブレイスなのです」
「天板、底板、補強材を接着したらウクレレ・ボディ部の組み立て完了です。ではここでコアロハ・ウクレレがどれくらい丈夫なのか、デモンストレーションをして見せましょう」と、言ってボディを床に置き、おもむろに足を乗せるブライアンさん。「ほらね、上に乗っても大丈夫でしょう」
どこか不安な気持ちで見守っていたが、実際にはとても丈夫なことがわかる。ただし、くれぐれも真似をしないこと。
▽全体の組み立て
「ボディ部が完成したら全体の組み立てです。ネックのパーツを接着して、さらにブリッジ、フレットボードを付けたらウクレレの形が出来上がり。しかし、この次のプロセスも非常に重要で、時間もかかる作業が待っています。それが、サンディングと研磨仕上げです。サンディング・マシーンや紙やすりを使って、全体の形を整え、きれいに磨き上げます。ひとつのスクラッチ(傷)も残らないように、注意深く細かい作業が行われます」
「ここまでのプロセスを経て、厳しい検査を通ったものだけが最後の段階であるラッカー塗りを待ちます。残念ながらスプレーでラッカーを塗る部屋には入っていただくことはできないのですが、おそらくこれが最も時間のかかる最後の作業です。ラッカー・スプレーを12層も吹くんです。さらに1層ごとに乾かしてはサンディング・セクションに戻り、研磨をして、再びラッカー吹き作業をする、ということを繰り返します。これによって音の響きが良く、見た目にも美しいウクレレのボディが生み出されるのです」
大まかにコアロハ・ウクレレができるまでを、ブライアンさんの丁寧なガイドで知ることができた。コアロハ・ウクレレの製作工程は細かく分けると、なんと300工程もあるそうだ。そして、一本の木材からウクレレが完成するまでにかかる時間は約5日間。職人1人1人がそれぞれの工程を黙々と、そして心を込めて作業している姿がとても印象的であった。このようにハワイの人々が手作りで作っていることを知ると、ますます興味がわいてくる。コアロハ・ウクレレの工房は観光客も訪問できるので、現地ならではの体験としてお勧めしたい。
・コアロハ・ウクレレ
住所:744 Kohou St., Honolulu
TEL:(808)847-4911
営業:月曜日から金曜日9:00-17:00 定休日:土曜日、日曜日、祝日
行き方:ワイキキ・トロリー、レッドライン利用
HP:http://www.koaloha.com
▽関連記事
◆ハワイ体験レポート−その5 「コアロハ・ウクレレ」の工場見学ワークショップ(2008/01/25)
ハーブ・オータ・ジュニアのプライベート・レッスン
ウクレレを始めたら、いずれハワイでハワイアン・ウクレレを購入し、レッスンを受けたいというのが日本のウクレレ・ファンの共通の思いではないだろうか。そのレッスンを有名ミュージシャンから直接受けられるものだったら、どんなに嬉しいことだろう。そんな願いを可能にしてくれるのが、ハーブ・オータ・ジュニアが提供するプライベート・ウクレレ・レッスンだ。
ハーブ・オータ・ジュニアといえば、あの大御所ウクレレ・プレイヤー、オータサンの息子で、自身のソロや、他のミュージシャンとのコラボレーション・アルバムなど多くのCDをリリースし、独自のスタイルを世に示している癒し系サウンドの実力派だ。その彼から直接習えるプライベート・レッスンは、ワイキキ内のホテルへ出張もしてくれる。料金は1時間80米ドル(約8700円)。
どんな曲を習いたいのか、どんなテクニックを教えてほしいのか、など具体的なリクエストにも応えてくれる。ビギナーから上級者まで、どんなレベルでも一生懸命学ぶ気持ちさえあればハーブ・オータ・ジュニア氏が丁寧に教えてくれるのだ。
・レッスンの問合わせ先
メール:chihiro@mediaetc.net
〜製造過程で知る、音色の価値〜
ハワイで生まれ育まれた、かわいくて気軽で、それでいて奥が深い素敵な楽器、ウクレレ。あの心地よい音色を奏でるウクレレはどのようにして生まれるのか――。奥深い魅力に興味が湧いて、製造過程を知るべく、人気ブランドの工房を訪問してみた。そこで見た、繊細な工程をつぶさに紹介しよう。(取材:Nui)
▽シリーズ
◆ハワイ・ライフ&カルチャー:ウクレレのルーツと音色の秘密(2008/07/17)
◆ハワイ体験レポート(27)−発祥地で楽しむウクレレの祭典(2008/07/31)
代表的なメーカー、コアロハ・ウクレレの工場へ
日系のオオカミ・ファミリーが経営している「コアロハ」といえば、今や「カマカ」と並ぶハワイを代表するウクレレ・メーカーだ。その工房では、職人たちの手によってコアの木から高品質のウクレレが日々生み出されている。それでは、ホノルルを走る観光ワイキキ・トロリーの停留所でもあり、観光名所になりつつあるコアロハ・ウクレレ工房にお邪魔しよう。
▽貴重なコアの木材
工房内を案内してくれるのはマネージャーのブライアンさん。「まずはウクレレの素材となるコアの木材をお見せしましょう。この工房に入ってくるのはハワイで取れたコアの木を切り出し、よく乾燥させた質の良い木材です」
この木材が、あの乾いた軽やかな音色を奏でるコア・ウクレレになるのだ!
「コアの木の中にはトラ目の模様が入ったカーリー・コアと呼ばれるものがまれにあります。とくにこのような細かい模様の入ったカーリー・コアは数千本から1万本に1本しかない貴重な木です。硬度も強く、木目が美しいことから、珍重されています」
▽パーツの削り出し
「ウクレレ作りの最初の難関は、木材からウクレレの各パーツを削り出す作業です。ボディ部の天板、底板、サイドのカーブ板、そしてネックとヘッド部、さらに付属する小さなパーツのすべてをここから削り出します。この作業は、工房責任者のポールがすべて一人で担当する、重要なプロセスです」
木材の選び出し、各パーツの削り出しを担当するのは若き職人ポールさん。彼はコアロハ・オーナーであるオオカミ・ファミリーの次男である。音色の良さ、ルックスの美しさは、すべてこの段階で左右されると言っても過言ではないそうだ。
▽ボディの組み立て
「パーツの切り出しの次はボディ・セクションです。削り出した板をウクレレのボディの形に組み立てます。まず、ウクレレ本体サイドのカーブしている部分に使う板を曲げる作業です。この機械を使って板を少しずつゆっくりと曲げていきます。この作業の前に板を熱湯に20分つけてやわらかくしておきます。これで硬いコアの板も作業しやすくなります」
「板を曲げる作業が終わったら、ウクレレ・ボディの型枠にはめ込み乾燥させます」
型枠から外すと、見事にウクレレ・ボディのラインができている。
「この状態から天板と底板を貼り付けてボディ部を組み立てます。まずはサウンド・ホールのある天板を下にしてボディを乗せ接着します。続いて、補強材の添え木を接着します。サウンド・ホールのすぐ下の板枠は、コアロハ・ウクレレだけが持つユニ・ブレイスというオリジナル補強材です。コアロハ・ウクレレが簡単に割れない秘密はこのユニ・ブレイスなのです」
「天板、底板、補強材を接着したらウクレレ・ボディ部の組み立て完了です。ではここでコアロハ・ウクレレがどれくらい丈夫なのか、デモンストレーションをして見せましょう」と、言ってボディを床に置き、おもむろに足を乗せるブライアンさん。「ほらね、上に乗っても大丈夫でしょう」
どこか不安な気持ちで見守っていたが、実際にはとても丈夫なことがわかる。ただし、くれぐれも真似をしないこと。
▽全体の組み立て
「ボディ部が完成したら全体の組み立てです。ネックのパーツを接着して、さらにブリッジ、フレットボードを付けたらウクレレの形が出来上がり。しかし、この次のプロセスも非常に重要で、時間もかかる作業が待っています。それが、サンディングと研磨仕上げです。サンディング・マシーンや紙やすりを使って、全体の形を整え、きれいに磨き上げます。ひとつのスクラッチ(傷)も残らないように、注意深く細かい作業が行われます」
「ここまでのプロセスを経て、厳しい検査を通ったものだけが最後の段階であるラッカー塗りを待ちます。残念ながらスプレーでラッカーを塗る部屋には入っていただくことはできないのですが、おそらくこれが最も時間のかかる最後の作業です。ラッカー・スプレーを12層も吹くんです。さらに1層ごとに乾かしてはサンディング・セクションに戻り、研磨をして、再びラッカー吹き作業をする、ということを繰り返します。これによって音の響きが良く、見た目にも美しいウクレレのボディが生み出されるのです」
大まかにコアロハ・ウクレレができるまでを、ブライアンさんの丁寧なガイドで知ることができた。コアロハ・ウクレレの製作工程は細かく分けると、なんと300工程もあるそうだ。そして、一本の木材からウクレレが完成するまでにかかる時間は約5日間。職人1人1人がそれぞれの工程を黙々と、そして心を込めて作業している姿がとても印象的であった。このようにハワイの人々が手作りで作っていることを知ると、ますます興味がわいてくる。コアロハ・ウクレレの工房は観光客も訪問できるので、現地ならではの体験としてお勧めしたい。
・コアロハ・ウクレレ
住所:744 Kohou St., Honolulu
TEL:(808)847-4911
営業:月曜日から金曜日9:00-17:00 定休日:土曜日、日曜日、祝日
行き方:ワイキキ・トロリー、レッドライン利用
HP:http://www.koaloha.com
▽関連記事
◆ハワイ体験レポート−その5 「コアロハ・ウクレレ」の工場見学ワークショップ(2008/01/25)
ハーブ・オータ・ジュニアのプライベート・レッスン
ウクレレを始めたら、いずれハワイでハワイアン・ウクレレを購入し、レッスンを受けたいというのが日本のウクレレ・ファンの共通の思いではないだろうか。そのレッスンを有名ミュージシャンから直接受けられるものだったら、どんなに嬉しいことだろう。そんな願いを可能にしてくれるのが、ハーブ・オータ・ジュニアが提供するプライベート・ウクレレ・レッスンだ。
ハーブ・オータ・ジュニアといえば、あの大御所ウクレレ・プレイヤー、オータサンの息子で、自身のソロや、他のミュージシャンとのコラボレーション・アルバムなど多くのCDをリリースし、独自のスタイルを世に示している癒し系サウンドの実力派だ。その彼から直接習えるプライベート・レッスンは、ワイキキ内のホテルへ出張もしてくれる。料金は1時間80米ドル(約8700円)。
どんな曲を習いたいのか、どんなテクニックを教えてほしいのか、など具体的なリクエストにも応えてくれる。ビギナーから上級者まで、どんなレベルでも一生懸命学ぶ気持ちさえあればハーブ・オータ・ジュニア氏が丁寧に教えてくれるのだ。
・レッスンの問合わせ先
メール:chihiro@mediaetc.net
ハワイアン・ウクレレを購入できるスポット
貴重で高価なコアの木でできたハワイアン・ウクレレは、日本でも愛好家に人気が高
く、価格も割高。ハワイ旅行の際に買うのがお得なのは言うまでもない。ワイキキ周辺
でウクレレを購入できるスポットを紹介しよう。
Ukulele Puapua
ワイキキにあるパシフィック・ビーチ・ホテルの1階にショッ
プを構える。ハワイ産ウクレレを扱う専門店で、種類も豊富
に取り揃えている。取り扱いメーカーは、コアロハ、コオラ
ウ、カニレア、イイヴィ、ケリイ、Gストリングなど。まった
くの初心者には無料ウクレレ・レッスンも用意。扱い方、コ
ードの押さえ方など基本的なことを親切に教えてくれる。日
本語スタッフも常駐しているので安心だ。
住所:2490 Kalakaua Ave Honolulu, HI
TEL:(808)924-2266
Bob's Ukulele
ワイキキのショッピング・モール、ロイヤル・ハワイアン・
センターA館2階にオープンしたばかりのウクレレ専門店。カ
マカ、コアロハなどのハワイ製ウクレレのほかに、カラ、ラ
ニカイなどのお手頃価格もの在庫多数。
住所:2552 Kalakaua Avenue Honolulu, HI
TEL:(808)922-4292
Island Guitars
ショッピング・モール、ワードウェア・ハウスの2階のギター・ショップ。ウクレレ・
コーナーにはカラ、フルークなどのリーズナブル・ウクレレから、カマカ、コアロハな
どのハワイアン・ウクレレまで各種を陳列。さらにこのショップではビンテージ・ウク
レレ、40年、50年物のマーチン・ウクレレやカマカ・ウクレレなど貴重なウクレレも扱
っているので通には嬉しい。
住所:1050 Ala Moana Blvd, Honolulu, HI
TEL:(808) 591-2910
Good Guys Music and Sound
ワイキキから徒歩圏内のカパフル通りにある楽器店。ギター
を中心に、新品、中古品を扱う。ウクレレ・コーナーには、
カマカやカラが並ぶ。
住所:619 Kapahulu Avenue Honolulu, HI 96816
TEL:(808)732-4663
Harry's Music Store
カイムキ地区にある昔ながらのローカル楽器店。ウクレレも扱うが在庫はそれほど多く
はない。入荷時期にはカマカやコアロハが並ぶ。ビンテージもののマーチン・ウクレレ
が並んでいることもある。
住所:3457 Waialae Ave Honolulu, HI
TEL:(808)735-2866
The Ukulele House
ワイキキ・ショッピング・プラザ1階にあるお店。無料レッスンも実施している。
住所:2250 Kalakaua Ave Honolulu, HI
TEL:(808)923-8587
The Hawaiian Ukulele Company
アロハタワー・マーケットプレイスにあるお店。
住所:Aloha Tower Drive Honolulu, HI
TEL:(808)536-3228