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夏商戦、異状あり ガソリン価格高騰 業界の対抗策は

 夏の観光シーズンを前に、レギュラーガソリンの価格はついに1リットル180円台に突入(7月7日時点)。高騰は家計を直撃、消費者が車の利用を控える傾向は顕著になりつつある。こうなると観光関係者にとっても大打撃だ。この苦境を打破するべく、宿泊施設や旅行会社は給油券プレゼントやガソリン料金還元といったサービスの設定で対抗しようとしている。次々と登場する「ガソリン価格高騰対策プラン」を紹介する。


旅館ホテル

 旅館ホテルは夏場、マイカーでの家族旅行が重要な集客源。ガソリン高による宿泊客減を避けようと給油券付きプランなどを設定するところが増えている。

 兵庫県有馬温泉の有馬御苑は6月23日から、「夏のマイカー旅行応援プラン」を始めた。8月31日まで、1室3人以上で宿泊するグループに、3000円分のガソリンプリペイドカードをプレゼントする。

 同館は「ガソリン代高騰の影響からか周囲の交通量が減っているように思います。有馬は電車でも来られるところですが、マイカー利用のお客様の一助になればと設定しました。特に往復できる距離の方には便利ではないでしょうか。すでに利用があり、ありがたいとの声をいただいています」と話す。

 長崎県雲仙温泉は、近隣に鉄道がないことからアクセスはマイカーが主流とあって、対策は活発だ。

 九州ホテルは8月30日まで、車1台につきレギュラーガソリン5リットル券をプレゼントするプランを設定した。ホテル東洋館も同様のプランで、連泊の場合も1泊につき1枚のガソリンチケットが付く。

 九州ホテルでは「バスを利用して来られる方も多いですが、やはりマイカー。プランへの問い合わせも入っており、底上げにつながれば」と話している。

 新潟県瀬波温泉の大観荘せなみの湯は、マイカー利用の宿泊客にレギュラーガソリン5リットル券1枚を贈り、ガソリン代を還元。7月27日から8月24日まで(8月13日から16日は除く)。岡山県湯郷温泉の季譜の里は8月31日まで(休前日と盆期間除く)、自館HPから申し込めばガソリン10リットル券をプレゼントする。

 佐賀県嬉野温泉の和多屋別荘と、香川県こんぴら温泉の琴平グランドホテル紅梅亭、鳥取県三朝温泉の依山楼岩崎などは7月末までの実施。

 和多屋別荘は、ガソリン値上がり分を返還するという変わり種のキャンペーンを展開している。値上がり額と移動距離、燃費から還元額を換算、福岡からの宿泊客には1000円をキャッシュバックするといった具合だ。琴平グランドホテル紅梅亭は宿泊日によってガソリン5リットルか10リットル券を、依山楼岩崎はガソリン10リットル券をサービスする。

 観光施設でも千葉県鴨川市の鴨川シーワールドが8月31日まで、大人2人以上のグループを対象にガソリン5リットル券をプレゼントするプランを設定している。


旅行会社

 一方、旅行会社もプランやキャンペーンを展開し、旅行需要の低減に待ったをかける。

 JTBは、夏の国内旅行申し込み喚起策として「ファミリー旅行応援キャンペーン」を9月30日まで展開している。指定のエースJTB商品を申し込んだ人にガソリン代の支払いが可能な「QUOカード」1000円分を進呈する。

 JTB首都圏や法人東京、トラベランドなどが参画。関東近郊1都11県の商品を対象に、QUOカードを先着1万3000組に配布する。

 JTB広報室は「ガソリン高騰など物価高で暗いムードを払拭したいと企画しました。マイカー旅行をしたいという声は強く、国内旅行需要は今のところ低下していないと見ています。体験プランなども含め、いかに利便性を高め、このご時世にも旅行に行ってよかったと思えるような満足度を高める企画ができるかどうかがカギでしょう」と国内旅行需要の冷え込み回避に自信を示す。

 KNTは、4月から栃木県・那須塩原の商品でガソリンチケット付きプランを販売するなど、いち早くこの問題に着手。6月27日からは静岡県伊東温泉や群馬県・北軽井沢などホテル5軒の宿泊客を対象に、ガソリン20リットル券付きプランの販売を始め、関東近郊を中心に旅行需要の喚起を進めている。

 一風変わっているのが日本旅行。マイカーのナンバープレートの下2桁の合算数で割引率が決まるというプランで、伊豆地方を対象に実施していた。販売はすでに終了しており今後の実施は未定だが、企画の面白さは好評で、日本旅行広報室は「対象地域の拡大や、秋口の実施も検討したいと考えています」と話している。

 ガソリン高に、旅館ホテルや旅行会社は各種サービスで太刀打ちする。高騰は今後も続くと予想され、業界は旅行需要喚起に一層の対応を迫られそうだ。


情報提供:トラベルニュース社