トップインタビュー:アメリカン航空太平洋地区副社長のテオ・パナジオトゥリアス氏
過去に引きずられず新しいビジネスを
ハブ・トゥ・ハブ戦略の推進−羽田国際化による成田のハブ機能の影響も注視
アメリカン航空(AA)太平洋地区副社長のテオ・パナジオトゥリアス氏は5月2日、成田/シカゴ線の就航10周年を受け、成田/シカゴ線のハブ・トゥ・ハブ戦略が好調に進んでいるとの認識を示した。AAが展開する成田発の5路線、名古屋、大阪の運航便の考え方、日本市場で航空自由化が徐々に進む中での対応など、幅広い観点から今後の旅客需要に影響するところを聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎)
−5月2日に成田/シカゴ線が10周年を迎えた。この10年を振り返るとともに今後の展望を、お聞かせください
テオ・パナジオトゥリアス氏(以下、敬称略) 10年間の運航は成功を意味する。シカゴはアメリカで国際線として2番目に大きなハブ空港であり、この路線は重要だ。日本発の場合、シカゴ以遠ではアメリカ中西部への充実したネットワークがある。中西部は日本企業の工場があり、企業が本社を置く拠点としても重要性が高く、ビジネス需要が期待できる。レジャーでも、カナダ方面のハブ空港として使いやすいスケジュール、路線を持つ。また、シカゴから全米へのネットワークは、日本発アメリカ行きだけの一方通行ではなく、アメリカ発アジア行きの需要にも対応している。
成田/シカゴ線を含む日本、中国の路線は2007年と比べ、2008年は良い状況にある。4月、5月と需要は上向きにあり、今夏は現在の予約状況からすると堅調に推移するだろう。懸念材料は、サブプライム問題を契機とする景気の減速感だ。特に、金融業は航空需要に直接的な影響を与えているが、日本は中西部への出張需要に加え、日本企業の積極的な投資姿勢、とりわけラテンアメリカへ拡張する動向を見ると、成田/シカゴ線のハブ・トゥ・ハブ戦略がさらに活きてくると考えている。
成田/シカゴ線は4社が乗り入れる競争の激しい路線だ。しかし、需要があるからこそ、これだけの会社が運航をしている路線とも言える。シカゴには全米から、成田は日本をはじめアジア各地からのそれぞれ需要を集めることができる。その中で、ワンワールドメンバーの日本航空(JL)にはシカゴ以遠のAAのネットワークを提供できるし、成田以遠はJLのネットワークがある。このハブ・トゥ・ハブ戦略は、路線の利益を確保すること、高い搭乗率を維持することが重要であるが、多くの選択肢と、各社の競争で切磋琢磨した高品質のサービスを提供することで、航空会社と顧客が互いにメリットを得る「ウィン=ウィン」の関係となることが重要だ。
−御社は成田発着便のアメリカ路線で4路線、1日5便を運航している。現在の推移についてお聞かせください
パナジオトゥリアス 現在、成田路線はシカゴ線のほか、ダラス/フォートワース線、ニューヨーク線、ロサンゼルス線を運航している。このうち、ダラス/フォートワース線はシカゴ線と同様に、ハブ・トゥ・ハブ戦略で複数の選択肢を旅客に提供している。ダラスはシカゴよりも中南米への路線を多く提供しており、この路線はシカゴ線と同様の需要の推移、業績を残している。
その一方で、ニューヨーク線、ロサンゼルス線は「ポイント・トゥ・ポイント」戦略の路線だ。ハブ・トゥ・ハブと比べ需要が上下する幅は大きいものの、ニューヨークやロサンゼルスは、北米でもっとも人気のある旅行先で、中核の路線である。ニューヨーク線はアメリカの航空会社として、成田/JFK線を運航する唯一の会社であり、日本市場に大きな影響力がある。ロサンゼルス線は運航当初の予想を上回る業績を残しており、目標を達成している。
−日本市場での目標、また、今後の路線展開と営業施策の方向性は
パナジオトゥリアス 日本の消費者、特にレジャーではこれまでと異なる新しいデスティネーションを探している。例えば、ハワイはショッピングやビーチで楽しむところから、現在は歴史や文化的な体験や洗練されたリゾート滞在など、新しい楽しみ方に変化している。つまり、日本での戦略は「Alternative Destination(オルタナティブ・デスティネーション:代替する旅行先)」を確立していくことだ。
その1つを、カンクンで取り組んでいる。日本市場に受け入れられることをめざし、デスティネーションと協同で取り組みをしている。カンクンはハリケーンの襲来で大きな被害を受け、その復興に際して、日本市場のニーズに応じたサービスレベルに高めるようトレーニングをしている。この考えは、航空会社同士の競争より、デスティネーション競争に勝つことをめざした活動だ。航空会社は単なる旅客の運送だけでなく、デスティネーションへの交通量を増やすことにより、航空需要はおのずと高まるという視点を持っている。このため、日本からカンクンへの路線を強化する目標を強く意識しており、カリブ地域、リマやペルーのエコツーリズム開発も重視している。
運賃の価格は重要な要素のひとつだが、消費者が選択する上で価値も重要と考えており、今後は価値を高めることが重要だ。航空会社が提供するサービスの価値に加え、人を運ぶ運輸業を超え、旅行を中心として人の人生に重要な価値を提供している仕事である点を強く意識をしていく。
−大阪、名古屋の路線は運休をしている。復便に向けた条件はあるか
パナジオトゥリアス 名古屋/シカゴ線はハリケーン「カトリーナ」後の原油高騰が影響した。当時は原油価格が65ドルであったが、今はその2倍であり、航空業界の環境が大きく変化している。ただ、中部国際空港の施設、考え方など学んだ点は多かった。空港の設備、接続性の点を高く評価をしており、現在もそれは変わらない。長期的に見れば、国際空港として大きな期待がある。しかし、理論上は良いものであっても、市場はこれを受け入れる準備ができていなかった。
関西国際空港についても、中部国際空港と同様のことが言える。また、関西線は価格が安いと指摘する意見が散見されるが、法人需要が就航後も成田を利用し続けた点が最も大きなインパクトだった。今でも大阪発の旅客は、関西空港ではなく、成田経由を利用しており、これが伸びている。課題は顧客の行動、消費動向にあり、「正しい/間違い」の判断を下すものではなく、人の趣向に起因するものだ。航空会社としては、これまで以上の情報やサービス、価値を提供しなければ変化を誘引できないし、実行しても人々が行動を変えるかわからない。
現在、対処できる方策として、アライアンスの強化があるだろう。例えば、中部にJL便とどのように接続するかが課題だ。成田空港でも同様で、現在はAAと JLは同一のターミナルになり、接続も良いが、成田を含めた日本でのオペレーションの成功には、接続利便性の高さと効率性が最も重要になるだろう。
−日本発国際航空運賃の下限撤廃、さらに政府の航空自由化についてお考えをお聞かせください。
パナジオトゥリアス 下限撤廃の施策は、消費者に価格の選択肢を提供でき、良い施策だ。弊社にとっても、ロードファクターが低い場合は、積極的に価格を下げて需要を喚起できる。ただし、下限撤廃の施策は十分ではないと思う。例えば、国土交通省に対し、価格を申請する必要があり、「申請作業」のプロセスがなぜ必要かが理解できない。申請作業は管理コストが発生し、運賃に転嫁しなければならない。方向性として、官僚制をできるだけ排除し、申請コストの削減、短期間の運賃申請による消費者のニーズに応じられる体制として欲しい。
成田、羽田の国際化は、どのような決定であれ、日本の航空会社とアメリカの航空会社が同様の競争環境にあることが重要だ。アメリカの航空会社が日本と同様の環境にないとすれば、消費者にとってメリットは少ない。羽田空港の国際化は、AAとして表明できるほど情報はないが、利便性は理解している。その一方、羽田国際化による成田のハブ機能への影響を、これまでよりも明確に検討する必要がある。
AAは空港ラウンジを開設しており、AA以外にも多くの航空会社が成田空港へ投資をしている。成田はアジアの中核であるハブ空港であるからこそ、選択肢を多く提供できるという点で就航をしている。羽田の国際化は多くの選択肢があるという成田の利点を奪うのか、さらに成田だけでなく日本全体の輸送力への影響という点を明示し、検討をすべきだ。結果として、日本全体が輸送力の低下という事態を招くことは避けなければならない。
−アメリカでは航空会社の運航停止、統合が活発化している。現況をどのように見ているか
パナジオトゥリアス 今は、供給座席数が多すぎ、統廃合につながっていると見ている。もちろん、景気の減速、燃料費の高騰も一つの要因だが、少ない搭乗者に対して供給量が多いという環境に適合していく動きだ。この動きは当然、供給量が減っていくことになる。
こうした状況下で、統合はあくまで一つの方法論だ。複数の会社の統合は2つの労働組合の合意を必要とし、透明性を確保しながら進めることは苦労の多いことだろう。規制当局の承認を得るプロセスも、難易度が高まる。ただ、あらゆる業界において、統廃合は自然のこととされるが、航空業界では「うまくいかない」との話もあり、これは議論の分かれるところ。AAも過去にはTWAとの統合も経験しており、このプロセスが難しいものであることは経験をしている。ただし、統合という選択肢は今後もない、というわけではない。
ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が発表している AAとコンチネンタル航空(CO)と3社のアライアンスは協議を始めているところだが、コメントできることは何もない。ただし、3社で取り組めば、法人需要、レジャー需要ともに利益を生む環境となるだろう。大西洋、太平洋ともに先ほども指摘したとおり、供給量が多く、価格、スケジュールの効率化をはかる必要があるが、規制当局の認可が必要になる。実際、この協議の方向性は全くわからない、というのが現時点の考えだ。
−旅行会社はコミッションへの関心が高い。考え方を明確に教えて欲しい。
パナジオトゥリアス そもそも、コミッションはパートナーである旅行会社の流通を可能にするものだ。旅行会社は非常に重要で、売っていただくものはわれわれのプロダクトであり、パートナーは商品に対して正しい理解と判断をしていく必要がある。コミッションは何を意味するかは航空会社によって違うが、AAは現状をきちんと理解してもらえるように(旅行会社に)話をし、透明性を確保していく。
ただし、コミッションは、市場においてビジネスがどのように進んでいるかが関係する。これは航空会社だけでなく、旅行会社もどのようなビジネスの体系にあるかが問題で、それを注視している。つまり、航空、旅行のそれぞれの企業がお客様が何を求めているか明確にしなければならない。また10年前とは変化しており、取引形態が変化していれば、再考する必要がある。コミッションを上げても、下げてもきちんと正面から説明し、パートナーの賛同を得る必要があり、ビジネスを成功に導くためには過去に引きずられず、チャレンジとして立ち向かう必要がある。
ありがとうございました。
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ハブ・トゥ・ハブ戦略の推進−羽田国際化による成田のハブ機能の影響も注視
アメリカン航空(AA)太平洋地区副社長のテオ・パナジオトゥリアス氏は5月2日、成田/シカゴ線の就航10周年を受け、成田/シカゴ線のハブ・トゥ・ハブ戦略が好調に進んでいるとの認識を示した。AAが展開する成田発の5路線、名古屋、大阪の運航便の考え方、日本市場で航空自由化が徐々に進む中での対応など、幅広い観点から今後の旅客需要に影響するところを聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎)
−5月2日に成田/シカゴ線が10周年を迎えた。この10年を振り返るとともに今後の展望を、お聞かせください
テオ・パナジオトゥリアス氏(以下、敬称略) 10年間の運航は成功を意味する。シカゴはアメリカで国際線として2番目に大きなハブ空港であり、この路線は重要だ。日本発の場合、シカゴ以遠ではアメリカ中西部への充実したネットワークがある。中西部は日本企業の工場があり、企業が本社を置く拠点としても重要性が高く、ビジネス需要が期待できる。レジャーでも、カナダ方面のハブ空港として使いやすいスケジュール、路線を持つ。また、シカゴから全米へのネットワークは、日本発アメリカ行きだけの一方通行ではなく、アメリカ発アジア行きの需要にも対応している。
成田/シカゴ線を含む日本、中国の路線は2007年と比べ、2008年は良い状況にある。4月、5月と需要は上向きにあり、今夏は現在の予約状況からすると堅調に推移するだろう。懸念材料は、サブプライム問題を契機とする景気の減速感だ。特に、金融業は航空需要に直接的な影響を与えているが、日本は中西部への出張需要に加え、日本企業の積極的な投資姿勢、とりわけラテンアメリカへ拡張する動向を見ると、成田/シカゴ線のハブ・トゥ・ハブ戦略がさらに活きてくると考えている。
成田/シカゴ線は4社が乗り入れる競争の激しい路線だ。しかし、需要があるからこそ、これだけの会社が運航をしている路線とも言える。シカゴには全米から、成田は日本をはじめアジア各地からのそれぞれ需要を集めることができる。その中で、ワンワールドメンバーの日本航空(JL)にはシカゴ以遠のAAのネットワークを提供できるし、成田以遠はJLのネットワークがある。このハブ・トゥ・ハブ戦略は、路線の利益を確保すること、高い搭乗率を維持することが重要であるが、多くの選択肢と、各社の競争で切磋琢磨した高品質のサービスを提供することで、航空会社と顧客が互いにメリットを得る「ウィン=ウィン」の関係となることが重要だ。
−御社は成田発着便のアメリカ路線で4路線、1日5便を運航している。現在の推移についてお聞かせください
パナジオトゥリアス 現在、成田路線はシカゴ線のほか、ダラス/フォートワース線、ニューヨーク線、ロサンゼルス線を運航している。このうち、ダラス/フォートワース線はシカゴ線と同様に、ハブ・トゥ・ハブ戦略で複数の選択肢を旅客に提供している。ダラスはシカゴよりも中南米への路線を多く提供しており、この路線はシカゴ線と同様の需要の推移、業績を残している。
その一方で、ニューヨーク線、ロサンゼルス線は「ポイント・トゥ・ポイント」戦略の路線だ。ハブ・トゥ・ハブと比べ需要が上下する幅は大きいものの、ニューヨークやロサンゼルスは、北米でもっとも人気のある旅行先で、中核の路線である。ニューヨーク線はアメリカの航空会社として、成田/JFK線を運航する唯一の会社であり、日本市場に大きな影響力がある。ロサンゼルス線は運航当初の予想を上回る業績を残しており、目標を達成している。
−日本市場での目標、また、今後の路線展開と営業施策の方向性は
パナジオトゥリアス 日本の消費者、特にレジャーではこれまでと異なる新しいデスティネーションを探している。例えば、ハワイはショッピングやビーチで楽しむところから、現在は歴史や文化的な体験や洗練されたリゾート滞在など、新しい楽しみ方に変化している。つまり、日本での戦略は「Alternative Destination(オルタナティブ・デスティネーション:代替する旅行先)」を確立していくことだ。
その1つを、カンクンで取り組んでいる。日本市場に受け入れられることをめざし、デスティネーションと協同で取り組みをしている。カンクンはハリケーンの襲来で大きな被害を受け、その復興に際して、日本市場のニーズに応じたサービスレベルに高めるようトレーニングをしている。この考えは、航空会社同士の競争より、デスティネーション競争に勝つことをめざした活動だ。航空会社は単なる旅客の運送だけでなく、デスティネーションへの交通量を増やすことにより、航空需要はおのずと高まるという視点を持っている。このため、日本からカンクンへの路線を強化する目標を強く意識しており、カリブ地域、リマやペルーのエコツーリズム開発も重視している。
運賃の価格は重要な要素のひとつだが、消費者が選択する上で価値も重要と考えており、今後は価値を高めることが重要だ。航空会社が提供するサービスの価値に加え、人を運ぶ運輸業を超え、旅行を中心として人の人生に重要な価値を提供している仕事である点を強く意識をしていく。
−大阪、名古屋の路線は運休をしている。復便に向けた条件はあるか
パナジオトゥリアス 名古屋/シカゴ線はハリケーン「カトリーナ」後の原油高騰が影響した。当時は原油価格が65ドルであったが、今はその2倍であり、航空業界の環境が大きく変化している。ただ、中部国際空港の施設、考え方など学んだ点は多かった。空港の設備、接続性の点を高く評価をしており、現在もそれは変わらない。長期的に見れば、国際空港として大きな期待がある。しかし、理論上は良いものであっても、市場はこれを受け入れる準備ができていなかった。
関西国際空港についても、中部国際空港と同様のことが言える。また、関西線は価格が安いと指摘する意見が散見されるが、法人需要が就航後も成田を利用し続けた点が最も大きなインパクトだった。今でも大阪発の旅客は、関西空港ではなく、成田経由を利用しており、これが伸びている。課題は顧客の行動、消費動向にあり、「正しい/間違い」の判断を下すものではなく、人の趣向に起因するものだ。航空会社としては、これまで以上の情報やサービス、価値を提供しなければ変化を誘引できないし、実行しても人々が行動を変えるかわからない。
現在、対処できる方策として、アライアンスの強化があるだろう。例えば、中部にJL便とどのように接続するかが課題だ。成田空港でも同様で、現在はAAと JLは同一のターミナルになり、接続も良いが、成田を含めた日本でのオペレーションの成功には、接続利便性の高さと効率性が最も重要になるだろう。
−日本発国際航空運賃の下限撤廃、さらに政府の航空自由化についてお考えをお聞かせください。
パナジオトゥリアス 下限撤廃の施策は、消費者に価格の選択肢を提供でき、良い施策だ。弊社にとっても、ロードファクターが低い場合は、積極的に価格を下げて需要を喚起できる。ただし、下限撤廃の施策は十分ではないと思う。例えば、国土交通省に対し、価格を申請する必要があり、「申請作業」のプロセスがなぜ必要かが理解できない。申請作業は管理コストが発生し、運賃に転嫁しなければならない。方向性として、官僚制をできるだけ排除し、申請コストの削減、短期間の運賃申請による消費者のニーズに応じられる体制として欲しい。
成田、羽田の国際化は、どのような決定であれ、日本の航空会社とアメリカの航空会社が同様の競争環境にあることが重要だ。アメリカの航空会社が日本と同様の環境にないとすれば、消費者にとってメリットは少ない。羽田空港の国際化は、AAとして表明できるほど情報はないが、利便性は理解している。その一方、羽田国際化による成田のハブ機能への影響を、これまでよりも明確に検討する必要がある。
AAは空港ラウンジを開設しており、AA以外にも多くの航空会社が成田空港へ投資をしている。成田はアジアの中核であるハブ空港であるからこそ、選択肢を多く提供できるという点で就航をしている。羽田の国際化は多くの選択肢があるという成田の利点を奪うのか、さらに成田だけでなく日本全体の輸送力への影響という点を明示し、検討をすべきだ。結果として、日本全体が輸送力の低下という事態を招くことは避けなければならない。
−アメリカでは航空会社の運航停止、統合が活発化している。現況をどのように見ているか
パナジオトゥリアス 今は、供給座席数が多すぎ、統廃合につながっていると見ている。もちろん、景気の減速、燃料費の高騰も一つの要因だが、少ない搭乗者に対して供給量が多いという環境に適合していく動きだ。この動きは当然、供給量が減っていくことになる。
こうした状況下で、統合はあくまで一つの方法論だ。複数の会社の統合は2つの労働組合の合意を必要とし、透明性を確保しながら進めることは苦労の多いことだろう。規制当局の承認を得るプロセスも、難易度が高まる。ただ、あらゆる業界において、統廃合は自然のこととされるが、航空業界では「うまくいかない」との話もあり、これは議論の分かれるところ。AAも過去にはTWAとの統合も経験しており、このプロセスが難しいものであることは経験をしている。ただし、統合という選択肢は今後もない、というわけではない。
ブリティッシュ・エアウェイズ(BA)が発表している AAとコンチネンタル航空(CO)と3社のアライアンスは協議を始めているところだが、コメントできることは何もない。ただし、3社で取り組めば、法人需要、レジャー需要ともに利益を生む環境となるだろう。大西洋、太平洋ともに先ほども指摘したとおり、供給量が多く、価格、スケジュールの効率化をはかる必要があるが、規制当局の認可が必要になる。実際、この協議の方向性は全くわからない、というのが現時点の考えだ。
−旅行会社はコミッションへの関心が高い。考え方を明確に教えて欲しい。
パナジオトゥリアス そもそも、コミッションはパートナーである旅行会社の流通を可能にするものだ。旅行会社は非常に重要で、売っていただくものはわれわれのプロダクトであり、パートナーは商品に対して正しい理解と判断をしていく必要がある。コミッションは何を意味するかは航空会社によって違うが、AAは現状をきちんと理解してもらえるように(旅行会社に)話をし、透明性を確保していく。
ただし、コミッションは、市場においてビジネスがどのように進んでいるかが関係する。これは航空会社だけでなく、旅行会社もどのようなビジネスの体系にあるかが問題で、それを注視している。つまり、航空、旅行のそれぞれの企業がお客様が何を求めているか明確にしなければならない。また10年前とは変化しており、取引形態が変化していれば、再考する必要がある。コミッションを上げても、下げてもきちんと正面から説明し、パートナーの賛同を得る必要があり、ビジネスを成功に導くためには過去に引きずられず、チャレンジとして立ち向かう必要がある。
ありがとうございました。
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