ハワイ体験レポートその15−ノースショアでロハスなウォーキング
ノースショアでロハスなウォーキング
〜ワイメア渓谷オーデュボン・センター〜
ダイヤモンドヘッドをはじめ、オアフ島にはウォーキングを楽しみながら、ハワイの奥深い自然に触れられるトレイルがたくさんある。そのなかでも、 “ロハス”や“スピリチュアル”のキーワードにぴったりな場所として注目されているのが、ノースショアのワイメア渓谷だ。このエリアには、6000種近い植物が世界中から集められており、ポリネシアの植物のコレクションでは世界一。絶滅に瀕しているハワイの自生種なども見ることができる。また、古代ハワイの人々の遺跡なども残されており、今も聖なる場所として大切にされている。一緒にウォーキングをした旅行会社の社員も「ハワイの人々の歴史や文化に直接出会えたような気持ちになる。花のきれいな季節にまた来てみたい」と好感触であった。
(取材:宮田麻未 写真:神尾明朗)
生まれ変わったワイメア渓谷
ワイメア渓谷オーデュボン・センターは、北米最大の環境保護団体であるオーデュボン協会と提携することによって、大きく変化した。以前の「ワイメア・フォール・パーク」時代は滝壺へ飛び込むプロダイバーの見せ物をはじめ、四輪バギーや乗馬、フラダンスの実演など、自然派の遊園地という趣きが強かった。しかし現在は、ワイメア渓谷の貴重な自然環境の保護に主眼がおかれ、遊園地的な要素はなくなっている。
ワイメア渓谷の自然を守ろうと、植物園化が始まったのは1973年。ハワイ諸島やポリネシア全域から珍しい植物が集められた。今では、まるで自生種のように繁茂している。整備された庭園型の植物園とは違い、自然に溶け込んだ感じが“ロハス”と言えるだろう。公園内には約6キロメートルの遊歩道が造られ、途中にはハイビスカスの交配種を集めたエリアや、ハワイの自生種、薬草園など、それぞれのテーマに沿った35のエリアに分かれている。また、道は山沿い、川沿いと変化に富んでおり、子どもからシニアまで、幅広い年代の散策にはぴったりだ。
主要な植物にはオーデュボン協会が監修した解説板が付けられており、通称や学名、原産地など詳しい説明などが記されている。ガーデニングや野草に興味がある人も、充実した散策が楽しめるだろう。
▽オーデュボン協会 http:// www.audubon.org
渓谷に残る歴史的、文化的遺跡たち
ワイメア渓谷のユニークさは、自然だけではない。この周辺には2000年以上前から、人が住んでいたと考えられており、12世紀以降はノースショアの中心として、とりわけ祭祀面で重要な役割を果たしてきたという。オーデュボン協会は、こうした歴史的、文化的背景にも十分な配慮をしつつ、植物園としての役割も充実させていこうとしているのだ。
ワイメア渓谷は、もともと“カフナの渓谷”と呼ばれていた。カフナとは古代ハワイの神官のこと。この神官の家が代々土地を相続し、まもってきたのだ。そのため、この渓谷や周辺の山々には宗教的な遺跡がたくさん残されており、その大部分は今も“現役”。ハワイの人々の祭祀を司る場所として大切にされている。例えばエントランスの西側の駐車場の横にある「ハレ・オ・ロノ・ヘイアウ」。ヘイアウは古代の神殿跡のことで、ここではさまざまな祭祀が行なわれていた。いわゆるパワースポットと呼ばれる場所なので、不思議な“気”が流れているような気もしてくる。ヘイアウの多くは、ハワイにキリスト教が入って来たとき“邪教の場”として破戒されてしまったので、建物が残っているところは少ないが、今でも信仰の場であることには変わりはなく、残された石組みなどに捧物が置かれているのを見かけることもある。
このほか、ワイメア渓谷には、川魚を呼び寄せるために漁の神様を象徴して造った石「クウラ・ストーン」や、伝統的なハワイ人の集落を発掘跡に再現した「カウハレ」など、ハワイ人の歴史と信仰を物語る遺跡があり、“女性と男性の住居は別に造られていた”という当時の習俗を説明した案内も立てられている。また、ハワイ人は非常に洗練された農耕技術を持っていたことでも知られ、1779年にハワイ諸島を探検したクック船長も、ワイメア渓谷を見た日の航海日記に「川の周辺は良く耕されており、景色も非常に美しく、まるで絵を見るようだ」と記している。当時は潅漑(かんがい)施設や棚田を利用したタロイモ畑などが豊かに広がり、比較的大きな集落があったのだろう。こうした史実もからめれば、知的好奇心の旺盛なシニア向けエコツアーや、
女性向けのロハスな旅の素材としてアピールできるだろう。
女神の姿が浮かび上がる、神秘の滝
ワイメア渓谷の一番奥には、高さ約12メートルのワイメア滝がある。この滝は、流れ落ちる水の水量によって、崖に横向きの女性の姿が現れると言われており、公園の中でも特に強い「パワースポット」と言われている。
滝壺には濃い緑色の水がたたえられており、少し冷たいけれど、清冽な肌触りが心地よい。付近にはライフガードがおり、許可を受ければ滝壺で泳ぐことができる。滝壺の近くには簡単な更衣所などもあり、渓谷内でも安心して着替えることが可能。滝の落下地点まで泳ぐ気持ちの良さは、他ではなかなか味わえないもの。ビーチでくつろぐのとはまた違った思い出になることだろう。
なお、センター内にはファーストフードのカウンターの他、ダイニング・パビリオンがあり、350名までのケータリングもできる。ツアーグループの朝食やランチ、ナチュラル派のウエディングなどにも利用できそうだ。フラや伝統的な音楽の演奏、ワークショップなどの手配も可能。エコツアーやロハスな旅という視点からワイメア渓谷を捉えると、ノースショアへのオプショナル・ツアーや個人旅行の日程に、新しい側面が開けるだろう。
〜ワイメア渓谷オーデュボン・センター〜
ダイヤモンドヘッドをはじめ、オアフ島にはウォーキングを楽しみながら、ハワイの奥深い自然に触れられるトレイルがたくさんある。そのなかでも、 “ロハス”や“スピリチュアル”のキーワードにぴったりな場所として注目されているのが、ノースショアのワイメア渓谷だ。このエリアには、6000種近い植物が世界中から集められており、ポリネシアの植物のコレクションでは世界一。絶滅に瀕しているハワイの自生種なども見ることができる。また、古代ハワイの人々の遺跡なども残されており、今も聖なる場所として大切にされている。一緒にウォーキングをした旅行会社の社員も「ハワイの人々の歴史や文化に直接出会えたような気持ちになる。花のきれいな季節にまた来てみたい」と好感触であった。
(取材:宮田麻未 写真:神尾明朗)
生まれ変わったワイメア渓谷
ワイメア渓谷オーデュボン・センターは、北米最大の環境保護団体であるオーデュボン協会と提携することによって、大きく変化した。以前の「ワイメア・フォール・パーク」時代は滝壺へ飛び込むプロダイバーの見せ物をはじめ、四輪バギーや乗馬、フラダンスの実演など、自然派の遊園地という趣きが強かった。しかし現在は、ワイメア渓谷の貴重な自然環境の保護に主眼がおかれ、遊園地的な要素はなくなっている。
ワイメア渓谷の自然を守ろうと、植物園化が始まったのは1973年。ハワイ諸島やポリネシア全域から珍しい植物が集められた。今では、まるで自生種のように繁茂している。整備された庭園型の植物園とは違い、自然に溶け込んだ感じが“ロハス”と言えるだろう。公園内には約6キロメートルの遊歩道が造られ、途中にはハイビスカスの交配種を集めたエリアや、ハワイの自生種、薬草園など、それぞれのテーマに沿った35のエリアに分かれている。また、道は山沿い、川沿いと変化に富んでおり、子どもからシニアまで、幅広い年代の散策にはぴったりだ。
主要な植物にはオーデュボン協会が監修した解説板が付けられており、通称や学名、原産地など詳しい説明などが記されている。ガーデニングや野草に興味がある人も、充実した散策が楽しめるだろう。
▽オーデュボン協会 http:// www.audubon.org
渓谷に残る歴史的、文化的遺跡たち
ワイメア渓谷のユニークさは、自然だけではない。この周辺には2000年以上前から、人が住んでいたと考えられており、12世紀以降はノースショアの中心として、とりわけ祭祀面で重要な役割を果たしてきたという。オーデュボン協会は、こうした歴史的、文化的背景にも十分な配慮をしつつ、植物園としての役割も充実させていこうとしているのだ。
ワイメア渓谷は、もともと“カフナの渓谷”と呼ばれていた。カフナとは古代ハワイの神官のこと。この神官の家が代々土地を相続し、まもってきたのだ。そのため、この渓谷や周辺の山々には宗教的な遺跡がたくさん残されており、その大部分は今も“現役”。ハワイの人々の祭祀を司る場所として大切にされている。例えばエントランスの西側の駐車場の横にある「ハレ・オ・ロノ・ヘイアウ」。ヘイアウは古代の神殿跡のことで、ここではさまざまな祭祀が行なわれていた。いわゆるパワースポットと呼ばれる場所なので、不思議な“気”が流れているような気もしてくる。ヘイアウの多くは、ハワイにキリスト教が入って来たとき“邪教の場”として破戒されてしまったので、建物が残っているところは少ないが、今でも信仰の場であることには変わりはなく、残された石組みなどに捧物が置かれているのを見かけることもある。
このほか、ワイメア渓谷には、川魚を呼び寄せるために漁の神様を象徴して造った石「クウラ・ストーン」や、伝統的なハワイ人の集落を発掘跡に再現した「カウハレ」など、ハワイ人の歴史と信仰を物語る遺跡があり、“女性と男性の住居は別に造られていた”という当時の習俗を説明した案内も立てられている。また、ハワイ人は非常に洗練された農耕技術を持っていたことでも知られ、1779年にハワイ諸島を探検したクック船長も、ワイメア渓谷を見た日の航海日記に「川の周辺は良く耕されており、景色も非常に美しく、まるで絵を見るようだ」と記している。当時は潅漑(かんがい)施設や棚田を利用したタロイモ畑などが豊かに広がり、比較的大きな集落があったのだろう。こうした史実もからめれば、知的好奇心の旺盛なシニア向けエコツアーや、
女性向けのロハスな旅の素材としてアピールできるだろう。
女神の姿が浮かび上がる、神秘の滝
ワイメア渓谷の一番奥には、高さ約12メートルのワイメア滝がある。この滝は、流れ落ちる水の水量によって、崖に横向きの女性の姿が現れると言われており、公園の中でも特に強い「パワースポット」と言われている。
滝壺には濃い緑色の水がたたえられており、少し冷たいけれど、清冽な肌触りが心地よい。付近にはライフガードがおり、許可を受ければ滝壺で泳ぐことができる。滝壺の近くには簡単な更衣所などもあり、渓谷内でも安心して着替えることが可能。滝の落下地点まで泳ぐ気持ちの良さは、他ではなかなか味わえないもの。ビーチでくつろぐのとはまた違った思い出になることだろう。
なお、センター内にはファーストフードのカウンターの他、ダイニング・パビリオンがあり、350名までのケータリングもできる。ツアーグループの朝食やランチ、ナチュラル派のウエディングなどにも利用できそうだ。フラや伝統的な音楽の演奏、ワークショップなどの手配も可能。エコツアーやロハスな旅という視点からワイメア渓谷を捉えると、ノースショアへのオプショナル・ツアーや個人旅行の日程に、新しい側面が開けるだろう。