トップインタビュー:インストアメディア(旧トラベルカフェ)取締役副社長 後藤一之氏
国内から海外、カフェから空間利用のプロモーションへ
トラベルカフェの発想が海外に
同じテーマや内装の店舗は一つとしてなく、日本で32店舗(昨年10月末現在)を展開するトラベルカフェ。東京・六本木のニュージーランド、あるいは飯田橋のフィリピンなど、国や地方自治体に特化、または協力し、旅行意欲を喚起している。また、旅行に留まらず、アーキテクトカフェなど、建築などの空間をプロデュース・活用した宣伝活動を行う店舗など、業務内容の拡大も遂げた。昨年12月中旬には、海外初出店となる店舗をフィリピンでオープンしたインストアメディア社(旧トラベルカフェ)取締役副社長の後藤一之氏に、今後のビジョンなどを聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎 構成:秦野絵里香)
−トラベルカフェは様々なテーマで展開し、旅行会社や観光局と取り組むものなど幅広い。こうした展開の理由を教えてください。
後藤一之氏(以下、敬称略 後藤) 旅行はモノではなく、五感に訴える商品。観光だけでなく、文化や芸術、ファッションなど多くの要素が詰まっているはずです。そうした疑似体験ができ、様々なインフォメーションも受け取れる、そんな場所を作りたいという思いがありました。カフェであれば、旅行に行った人もそうでない人も、寛ぎながら会話ができます。雑誌やカタログ、インターネットだけでは得ることのできない、実際に体験した人の情報を受け取れる場としても活用できます。
その一方、一般的なカフェは一見して、何があるのか分からない。それであるならば、テーマを持った店舗の方がお客様は目的を持って来店しやすい。また、テーマを持つことで様々な業種とタイアップの可能性を探ることができ、店舗展開がしやすくなります。私たちはそうした考えを元に認知度を高め、その繰り返しで店舗を増やしてきました。今は、旅という枠から広がり、空間自体をプロデュースし、プロモーションを行うようになりました。
−海外初出店となるフィリピンでの出店の理由と、今後、どのように展開していくのかをお聞かせ下さい
後藤 日本人の持つフィリピンのイメージはセブ島をはじめとしたビーチリゾートは良く知られています。でも、それが全てではありません。例えば、美味しいコーヒーが生産されていることは知られていない。食やライフスタイルを感じることも旅に関連すると考えていますので、まだ知らないフィリピンの魅力を伝えるには、体験してもらうことが最高のプロモーションにつながります。フィリピン観光省も「本当のフィリピン」のイメージが伝わる新しいプロモーション方法を模索しており、そんな私たちの想いを伝えたところ、観光だけのプロジェクトにしておくのはもったいない、国全体のイメージアップを図ろうと、フィリピンの行政機関が連携して始動することになったのです。
店舗は、フィリピンの生活スタイルを紹介できる空間作りを徹底しました。家具や照明、コーヒー豆まで全てフィリピンのものを使用。例えば、家具もインテリアもフィリピンのデザイナーに依頼し、30年ほど前は輸出品として取扱が多いコーヒー豆は現在、下火になっていますが、農業省の協力で非常にいいものが入手できました。日本のフィリピン・トラベルカフェと異なり、フィリピンの店舗はフィリピンの企業とのジョイントベンチャー、「フィリピン・ジャパン・コーヒー・コーポレーション」としてを設立。ここから世界展開できるようなマーケティングを行っていきます(編集部注:フィリピン側と日本側でそれぞれ出資。社長には後藤氏が就任)。
−海外進出を視野に入れたビジネス展開で、フィリピンの新店舗はどんな位置付けになりますか
後藤 フィリピン店のスタッフは、旅行や文化、コーヒーなどの特産品をはじめ、フィリピンに関するあらゆる事について53日間の講座を設け、しっかりと研修を行います。こうした研修期間は、現地スタッフの知識を高め、丁寧なサービスができる人材を育成するねらいもあります。こうした場で得たノウハウをまとめ、日本に留まらず、国際的なサービスのスタンダードも確立していきたい。フィリピンでのトラベルカフェが世界に展開していくフィリピン・トラベルカフェのトレーニングセンターのような役割を担い、世界へ展開していく店舗を指揮するようになってほしいですね。
−フィリピンでの展開が今後、日本でどのように活かせるでしょうか
後藤 今回のフィリピンでの店舗は日本の方式を多く取り入れていますが、やはり、展開する国にあわせて改善していかなければ、良い店舗はできません。フィリピンでは、アメリカのコンサルタント会社も入り、国際的なサービスやマニュアルを作っています。こうしたノウハウを今度は逆に日本に持ち帰り、プロモーション方法も含めて日本でのビジネスに活かしていけるでしょう。他国での考え、やり方が反映され、世界に通じるマーケティングが展開できるのではないでしょうか。
また、以前から「日本のトラベルカフェ」を開店したいという思いがあります。例えば、鉄道の切符を販売したり、旅行手配のカウンターを設置するのも良いのでは。お役所と違い、遅い時間でも対応でき、利用者にとっても便利なものになるのではないでしょうか。観光客の求める様々な情報がひとつの場所で手に入るようになれば、旅行業界の活性化に繋がるはず。旅行会社や航空会社の単体では難しいので、観光局のような団体なら全てをまとめてできる。訪日外国人向けのワンストップインフォメーションとしても活用できますね。
−最後にこれからの旅行業界はどのように変化していくとお考えですか
後藤 多くの旅行会社は、価格だけで競争していては生き残っていけないでしょう。またパッケージツアーだけでまかなっていくことも、特殊なデスティネーションに限られてくるのではないでしょうか。旅をモノとして売るのではなく、お客様の要望や希望を受け取って、コンサルティングしていくことが大切だと思います。そんな場所も活用していただきたいと思います。
−ありがとうございました
トラベルカフェの発想が海外に
同じテーマや内装の店舗は一つとしてなく、日本で32店舗(昨年10月末現在)を展開するトラベルカフェ。東京・六本木のニュージーランド、あるいは飯田橋のフィリピンなど、国や地方自治体に特化、または協力し、旅行意欲を喚起している。また、旅行に留まらず、アーキテクトカフェなど、建築などの空間をプロデュース・活用した宣伝活動を行う店舗など、業務内容の拡大も遂げた。昨年12月中旬には、海外初出店となる店舗をフィリピンでオープンしたインストアメディア社(旧トラベルカフェ)取締役副社長の後藤一之氏に、今後のビジョンなどを聞いた。(聞き手:編集長 鈴木次郎 構成:秦野絵里香)
−トラベルカフェは様々なテーマで展開し、旅行会社や観光局と取り組むものなど幅広い。こうした展開の理由を教えてください。
後藤一之氏(以下、敬称略 後藤) 旅行はモノではなく、五感に訴える商品。観光だけでなく、文化や芸術、ファッションなど多くの要素が詰まっているはずです。そうした疑似体験ができ、様々なインフォメーションも受け取れる、そんな場所を作りたいという思いがありました。カフェであれば、旅行に行った人もそうでない人も、寛ぎながら会話ができます。雑誌やカタログ、インターネットだけでは得ることのできない、実際に体験した人の情報を受け取れる場としても活用できます。
その一方、一般的なカフェは一見して、何があるのか分からない。それであるならば、テーマを持った店舗の方がお客様は目的を持って来店しやすい。また、テーマを持つことで様々な業種とタイアップの可能性を探ることができ、店舗展開がしやすくなります。私たちはそうした考えを元に認知度を高め、その繰り返しで店舗を増やしてきました。今は、旅という枠から広がり、空間自体をプロデュースし、プロモーションを行うようになりました。
−海外初出店となるフィリピンでの出店の理由と、今後、どのように展開していくのかをお聞かせ下さい
後藤 日本人の持つフィリピンのイメージはセブ島をはじめとしたビーチリゾートは良く知られています。でも、それが全てではありません。例えば、美味しいコーヒーが生産されていることは知られていない。食やライフスタイルを感じることも旅に関連すると考えていますので、まだ知らないフィリピンの魅力を伝えるには、体験してもらうことが最高のプロモーションにつながります。フィリピン観光省も「本当のフィリピン」のイメージが伝わる新しいプロモーション方法を模索しており、そんな私たちの想いを伝えたところ、観光だけのプロジェクトにしておくのはもったいない、国全体のイメージアップを図ろうと、フィリピンの行政機関が連携して始動することになったのです。
店舗は、フィリピンの生活スタイルを紹介できる空間作りを徹底しました。家具や照明、コーヒー豆まで全てフィリピンのものを使用。例えば、家具もインテリアもフィリピンのデザイナーに依頼し、30年ほど前は輸出品として取扱が多いコーヒー豆は現在、下火になっていますが、農業省の協力で非常にいいものが入手できました。日本のフィリピン・トラベルカフェと異なり、フィリピンの店舗はフィリピンの企業とのジョイントベンチャー、「フィリピン・ジャパン・コーヒー・コーポレーション」としてを設立。ここから世界展開できるようなマーケティングを行っていきます(編集部注:フィリピン側と日本側でそれぞれ出資。社長には後藤氏が就任)。
−海外進出を視野に入れたビジネス展開で、フィリピンの新店舗はどんな位置付けになりますか
後藤 フィリピン店のスタッフは、旅行や文化、コーヒーなどの特産品をはじめ、フィリピンに関するあらゆる事について53日間の講座を設け、しっかりと研修を行います。こうした研修期間は、現地スタッフの知識を高め、丁寧なサービスができる人材を育成するねらいもあります。こうした場で得たノウハウをまとめ、日本に留まらず、国際的なサービスのスタンダードも確立していきたい。フィリピンでのトラベルカフェが世界に展開していくフィリピン・トラベルカフェのトレーニングセンターのような役割を担い、世界へ展開していく店舗を指揮するようになってほしいですね。
−フィリピンでの展開が今後、日本でどのように活かせるでしょうか
後藤 今回のフィリピンでの店舗は日本の方式を多く取り入れていますが、やはり、展開する国にあわせて改善していかなければ、良い店舗はできません。フィリピンでは、アメリカのコンサルタント会社も入り、国際的なサービスやマニュアルを作っています。こうしたノウハウを今度は逆に日本に持ち帰り、プロモーション方法も含めて日本でのビジネスに活かしていけるでしょう。他国での考え、やり方が反映され、世界に通じるマーケティングが展開できるのではないでしょうか。
また、以前から「日本のトラベルカフェ」を開店したいという思いがあります。例えば、鉄道の切符を販売したり、旅行手配のカウンターを設置するのも良いのでは。お役所と違い、遅い時間でも対応でき、利用者にとっても便利なものになるのではないでしょうか。観光客の求める様々な情報がひとつの場所で手に入るようになれば、旅行業界の活性化に繋がるはず。旅行会社や航空会社の単体では難しいので、観光局のような団体なら全てをまとめてできる。訪日外国人向けのワンストップインフォメーションとしても活用できますね。
−最後にこれからの旅行業界はどのように変化していくとお考えですか
後藤 多くの旅行会社は、価格だけで競争していては生き残っていけないでしょう。またパッケージツアーだけでまかなっていくことも、特殊なデスティネーションに限られてくるのではないでしょうか。旅をモノとして売るのではなく、お客様の要望や希望を受け取って、コンサルティングしていくことが大切だと思います。そんな場所も活用していただきたいと思います。
−ありがとうございました