ハワイ対談(1)、相互理解が本来の魅力を掘り起こす
“感じる”ハワイめざして−観光局、旅行会社、航空会社が一体で
ハワイへの日本人訪問者数は年間、約130万人。ハワイ訪問者の約7割が満足しているという調査があるが、このうち日本人は半数以下にとどまり、航空座席との兼ね合いで訪問者数の増加が大きく望めない中、満足度を高めることが必須だ。ハワイ州観光局(HTJ)は今年のプロモーションで、従来の「Discover Aloha」に「からだで、こころで、もっと感じるハワイ So Much More Hawaii」を加え、新たなマーケティングを展開する。ハワイでの過ごし方を新たに提案し、旅行商品の企画、販売につなげてもらい、消費者のハワイ滞在での満足度を高めるねらいだ。HTJの一倉隆氏、日本航空の青木剛氏、ホノルルマラソンをはじめ数々のハワイツアーを手配してきたシャイニングツアーの佐藤博氏に、消費者が満足度の高い滞在をしてもらうための方策を、それぞれの立場で語ってもらった。
参加者:HTJディレクター 一倉隆氏(写真右)
日本航空 国際営業部 企画 マネージャー 青木剛氏(写真左)
シャイニングツアー 代表取締役 佐藤博氏(写真中)
聞き手:弊誌編集長 鈴木次郎
−2008年の「So much more Hawaii」は、どのようなことを目的とし、消費者に何を伝えるか、その狙いをご説明ください
一倉隆氏(以下、敬称略) ハワイ州が実施した調査を見ると、この4年間活動してきた中でハワイの多様な側面を紹介することが出来ている。また、当初から「差別化を図る」という点は、変化が表れていると思う。ただし、受け入れ側のハワイが、日本からの旅行者が求めるものを理解し、企画や受け入れをしているかに課題があるように感じる。
「So much more Hawaii」は、旅行商品をつくる大手のホールセラーを中心に、付加価値の高いハワイを伝えていきたいという声を受けてはじまっている。このため、2008年は日本の消費者、業界人にハワイでの具体的な過ごし方を理解してもらい、一方、ハワイでは日本からの旅行者のニーズを認識してもらい、旅行者の満足度を高めたい。つまり「So much more Hawaii」は、これまで展開してきた「Discover Aloha」の延長線上にあり、具体的にハワイでどのように時間を過ごしてもらうかを提案していくことだ。特に2008年と2009年は、航空座席の供給が非常に難しい局面にあり、ハワイ州の立場から経済波及効果を重視する施策として、多くの方に訪問していただくと同時に、レンタカーやゴルフなどこれまでとは
違う楽しみ方をし、滞在日数をもう少し増やしていただく
ことで消費金額の増加に繋げることが課題だ。
―近年のハワイへの訪問者数の減少、伸び悩みは航空会社の座席に端を発したものと思います。そのあたりを含め、日本航空(JL)はどのように対応されていくか、お教えください
青木剛氏(以下、敬称略) JLの供給座席数は、2005年下期から変更なく、安定している。当時、不採算路線といわれた地方発のホノルル線を運休したが、それ以降の定期便は安定した供給を続けている。今後も2010年、2011年ごろまで中期的に変更の予定はない。逆に機材の更新を進め、ハード面の充実を図っていきたい。
地方/ホノルル間は運休したが、その需要は重要だと認識しており、地方発の直行チャーター便の運航や、羽田の深夜枠を使ったチャーター便を展開している。地方発でジャンボ機を埋めることは難しく、地方から羽田空港で乗り継いでいただきたい。特に、ウェブを中心に地方発羽田乗り継ぎ商品が好調であり、こうした需要を掘り起こしたい。
保有する大型機で最も座席数の多い機材を、ホノルル線に投入していく。サービスは、これまでグアム線とハワイ線で実施してきた「リゾッチャ」キャンペーンをリニューアルする。ホノルル線は出発が深夜の時間帯で、搭乗前に食事をする方が多い。搭乗後、ドリンクサービス、機内食、機内販売と続き、ようやく休んだ2時間から3時間後に朝食となり、機内でゆっくりと過ごせていない現状がある。食事の内容を検討しているが、2008年中に出来るものからサービスを変更していく。
―旅行会社の立場から課題の指摘、あるいは提案などがありますか
佐藤博氏(以下、敬称略) ハワイに限らず、リピーターが多いデスティネーションは、特化したツアーに尽きる。量販店が新聞などに商品を掲載しても、リピーターはその旅行会社のリピーターにはならない。65歳以上のターゲットに、まさに今、ブームのフラやマラソンなどをもっと深く扱うことで、人数、単価の上昇に繋がるのではないか。
航空券とホテルをインターネットで予約し、ハワイに行くことは誰でも出来る。旅行会社として何が違うかは、特化した商品と介在する人。旅行会社自身が下見に行くことで様々な情報を仕入れることができ、それを盛り込んで案内できる。例えばフラなら、3月のメリー・モナーク・フェスティバル、4月のホノルルフェスティバルなど、知名度の高いイベントも多い。これらに絡めたツアーは人気が高いが、下見の際にフラやウクレレで歌われる場所やいわれとなっている発祥地を紹介することで満足度が上がる。
ただ、ホテルや航空券の値段が高すぎる。もちろん、燃油サーチャージの関係もあるが、今はさまざまなマイナスの相乗効果が出ている。旅行業界、あるいはハワイの取引において旅行会社、航空会社、ホテル、観光局の間にパートナーシップが必要ではないだろうか。15年前、20年前はこうしたパートナーシップがあり、送客数が増えたのではないか。
一倉 ハワイへの訪問者数は弱含みだが、スターゲイジングや溶岩ウォークなどSITといわれる特化したツアーに関しては、ハワイ側でも非常に良いという話を聞く。今、佐藤さんがお話されたように、消費者の求める目的をどこまで反映し、商品企画していくかが最も大きいのではないか。
実は、観光局で行なう業界向けのセミナーで、過去数年にハワイを訪れた人を聞くと、残念ながら非常に少ない。近年では取扱うデスティネーションが多い上に経費削減の傾向もあり、特に若い人は海外に行ける経験が少ないのだろう。効率化のために分業も増えて、添乗で行く機会もあまりないかもしれない。
JLが主催した昨年のファムツアーでは、地方のリテーラーの8割以上がハワイは初めてという。これでも大手の旅行会社なら航空座席を確保して、ホテルのアロットを確保し、スケルトン・タイプの商品を作ることができるかもしれないが、これだけでは満足されない。そこで「So much more Hawaii」で、インターネットで多くの情報を得ている消費者の上を行くものをめざしていく。
佐藤 「So much more Hawaii」の考え方は、さまざまな形態の旅行にもあてはまる。近頃、注目されるロングステイにも応用が効く。アジアやハワイがうってつけの訪問地で、ハワイの場合、物価は結構高いが、安全やおいしい空気、スポーツなど、やることは多い。55歳から60歳くらいの夫婦を対象に1ヶ月間、レンタカーと一軒家を借りるという商品を売りたいが、実際には1週間滞在すると何をしていいか分からなくなる。1週間、1ヶ月、3ヶ月という商品を作っているが、滞在の初めのころは良いが、早く帰りたいとなる。こうした現実を踏まえると、2週間くらいが現実的だろう。
今、マウイのロングステイ企画を考えている。マウイオニオンの栽培をコアにしたものが出来ないか、などアイデアはある。農場に話し、1年間、スペースを買い、植え付けと刈り取りしてそれを食べる話まで進めた。毎年8月上旬ごろ、カアナパリでマウイオニオンの品評会が行なわれているので、そこに出品する、というハイライトまで企画がまとまっているが、何週間の滞在にするかという話で止まってしまう。そこでの問題は、どのように時間を過ごすか、あるいは金額的な問題など、企画そのものはおもしろいという人は沢山いるが、商品化の段階でハードルが高い。大型企画、量販店ではできないことを小さな企業では取扱っていく。
一倉 そうした企画は、リピーターの囲い込みに間違いなくつながる。コーヒーであれば種を蒔いて、何年後かに再び訪れるというサイクルが出来上がる。
―航空会社にとっては小さいマーケットを育て、大きなリピーターにつなげる取り組みにつながると思います。今後、どうようなサポートをお考えか、あるいは既にある取り組みについて、お教えください。
青木 ハワイではこれまで、幅広い客層に対して「ハワイに行ってみようよ」というイメージだけの訴えかけだった。これを一歩踏み込んだ、例えば現地の過ごし方を航空会社なりに消費者に提案していきたいと考え、2年前から「スポーツ&スマイル」というキャンペーンを行なっている。体を動かしながら、サイクリングやテニスなど様々なアクティビティがあることを紹介している。日本航空では、バリや沖縄をはじめ様々な観光路線を運航しており、それぞれのデスティネーションに固有の良さがある。各路線同士がお客様の取り合いをするのではなく、ハワイであれば、脈々と続く歴史や文化の良さを消費者に十二分に訴えきれてなかったという反省から、新しいものを見つけるより、既にあるものの良さをしっかり伝えていきたいと考えている。
明日は引き続き3人に、今後の具体的な方策として、様々なアイデアを語っていただきます
ハワイへの日本人訪問者数は年間、約130万人。ハワイ訪問者の約7割が満足しているという調査があるが、このうち日本人は半数以下にとどまり、航空座席との兼ね合いで訪問者数の増加が大きく望めない中、満足度を高めることが必須だ。ハワイ州観光局(HTJ)は今年のプロモーションで、従来の「Discover Aloha」に「からだで、こころで、もっと感じるハワイ So Much More Hawaii」を加え、新たなマーケティングを展開する。ハワイでの過ごし方を新たに提案し、旅行商品の企画、販売につなげてもらい、消費者のハワイ滞在での満足度を高めるねらいだ。HTJの一倉隆氏、日本航空の青木剛氏、ホノルルマラソンをはじめ数々のハワイツアーを手配してきたシャイニングツアーの佐藤博氏に、消費者が満足度の高い滞在をしてもらうための方策を、それぞれの立場で語ってもらった。
参加者:HTJディレクター 一倉隆氏(写真右)
日本航空 国際営業部 企画 マネージャー 青木剛氏(写真左)
シャイニングツアー 代表取締役 佐藤博氏(写真中)
聞き手:弊誌編集長 鈴木次郎
−2008年の「So much more Hawaii」は、どのようなことを目的とし、消費者に何を伝えるか、その狙いをご説明ください
一倉隆氏(以下、敬称略) ハワイ州が実施した調査を見ると、この4年間活動してきた中でハワイの多様な側面を紹介することが出来ている。また、当初から「差別化を図る」という点は、変化が表れていると思う。ただし、受け入れ側のハワイが、日本からの旅行者が求めるものを理解し、企画や受け入れをしているかに課題があるように感じる。
「So much more Hawaii」は、旅行商品をつくる大手のホールセラーを中心に、付加価値の高いハワイを伝えていきたいという声を受けてはじまっている。このため、2008年は日本の消費者、業界人にハワイでの具体的な過ごし方を理解してもらい、一方、ハワイでは日本からの旅行者のニーズを認識してもらい、旅行者の満足度を高めたい。つまり「So much more Hawaii」は、これまで展開してきた「Discover Aloha」の延長線上にあり、具体的にハワイでどのように時間を過ごしてもらうかを提案していくことだ。特に2008年と2009年は、航空座席の供給が非常に難しい局面にあり、ハワイ州の立場から経済波及効果を重視する施策として、多くの方に訪問していただくと同時に、レンタカーやゴルフなどこれまでとは
違う楽しみ方をし、滞在日数をもう少し増やしていただく
ことで消費金額の増加に繋げることが課題だ。
―近年のハワイへの訪問者数の減少、伸び悩みは航空会社の座席に端を発したものと思います。そのあたりを含め、日本航空(JL)はどのように対応されていくか、お教えください
青木剛氏(以下、敬称略) JLの供給座席数は、2005年下期から変更なく、安定している。当時、不採算路線といわれた地方発のホノルル線を運休したが、それ以降の定期便は安定した供給を続けている。今後も2010年、2011年ごろまで中期的に変更の予定はない。逆に機材の更新を進め、ハード面の充実を図っていきたい。
地方/ホノルル間は運休したが、その需要は重要だと認識しており、地方発の直行チャーター便の運航や、羽田の深夜枠を使ったチャーター便を展開している。地方発でジャンボ機を埋めることは難しく、地方から羽田空港で乗り継いでいただきたい。特に、ウェブを中心に地方発羽田乗り継ぎ商品が好調であり、こうした需要を掘り起こしたい。
保有する大型機で最も座席数の多い機材を、ホノルル線に投入していく。サービスは、これまでグアム線とハワイ線で実施してきた「リゾッチャ」キャンペーンをリニューアルする。ホノルル線は出発が深夜の時間帯で、搭乗前に食事をする方が多い。搭乗後、ドリンクサービス、機内食、機内販売と続き、ようやく休んだ2時間から3時間後に朝食となり、機内でゆっくりと過ごせていない現状がある。食事の内容を検討しているが、2008年中に出来るものからサービスを変更していく。
―旅行会社の立場から課題の指摘、あるいは提案などがありますか
佐藤博氏(以下、敬称略) ハワイに限らず、リピーターが多いデスティネーションは、特化したツアーに尽きる。量販店が新聞などに商品を掲載しても、リピーターはその旅行会社のリピーターにはならない。65歳以上のターゲットに、まさに今、ブームのフラやマラソンなどをもっと深く扱うことで、人数、単価の上昇に繋がるのではないか。
航空券とホテルをインターネットで予約し、ハワイに行くことは誰でも出来る。旅行会社として何が違うかは、特化した商品と介在する人。旅行会社自身が下見に行くことで様々な情報を仕入れることができ、それを盛り込んで案内できる。例えばフラなら、3月のメリー・モナーク・フェスティバル、4月のホノルルフェスティバルなど、知名度の高いイベントも多い。これらに絡めたツアーは人気が高いが、下見の際にフラやウクレレで歌われる場所やいわれとなっている発祥地を紹介することで満足度が上がる。
ただ、ホテルや航空券の値段が高すぎる。もちろん、燃油サーチャージの関係もあるが、今はさまざまなマイナスの相乗効果が出ている。旅行業界、あるいはハワイの取引において旅行会社、航空会社、ホテル、観光局の間にパートナーシップが必要ではないだろうか。15年前、20年前はこうしたパートナーシップがあり、送客数が増えたのではないか。
一倉 ハワイへの訪問者数は弱含みだが、スターゲイジングや溶岩ウォークなどSITといわれる特化したツアーに関しては、ハワイ側でも非常に良いという話を聞く。今、佐藤さんがお話されたように、消費者の求める目的をどこまで反映し、商品企画していくかが最も大きいのではないか。
実は、観光局で行なう業界向けのセミナーで、過去数年にハワイを訪れた人を聞くと、残念ながら非常に少ない。近年では取扱うデスティネーションが多い上に経費削減の傾向もあり、特に若い人は海外に行ける経験が少ないのだろう。効率化のために分業も増えて、添乗で行く機会もあまりないかもしれない。
JLが主催した昨年のファムツアーでは、地方のリテーラーの8割以上がハワイは初めてという。これでも大手の旅行会社なら航空座席を確保して、ホテルのアロットを確保し、スケルトン・タイプの商品を作ることができるかもしれないが、これだけでは満足されない。そこで「So much more Hawaii」で、インターネットで多くの情報を得ている消費者の上を行くものをめざしていく。
佐藤 「So much more Hawaii」の考え方は、さまざまな形態の旅行にもあてはまる。近頃、注目されるロングステイにも応用が効く。アジアやハワイがうってつけの訪問地で、ハワイの場合、物価は結構高いが、安全やおいしい空気、スポーツなど、やることは多い。55歳から60歳くらいの夫婦を対象に1ヶ月間、レンタカーと一軒家を借りるという商品を売りたいが、実際には1週間滞在すると何をしていいか分からなくなる。1週間、1ヶ月、3ヶ月という商品を作っているが、滞在の初めのころは良いが、早く帰りたいとなる。こうした現実を踏まえると、2週間くらいが現実的だろう。
今、マウイのロングステイ企画を考えている。マウイオニオンの栽培をコアにしたものが出来ないか、などアイデアはある。農場に話し、1年間、スペースを買い、植え付けと刈り取りしてそれを食べる話まで進めた。毎年8月上旬ごろ、カアナパリでマウイオニオンの品評会が行なわれているので、そこに出品する、というハイライトまで企画がまとまっているが、何週間の滞在にするかという話で止まってしまう。そこでの問題は、どのように時間を過ごすか、あるいは金額的な問題など、企画そのものはおもしろいという人は沢山いるが、商品化の段階でハードルが高い。大型企画、量販店ではできないことを小さな企業では取扱っていく。
一倉 そうした企画は、リピーターの囲い込みに間違いなくつながる。コーヒーであれば種を蒔いて、何年後かに再び訪れるというサイクルが出来上がる。
―航空会社にとっては小さいマーケットを育て、大きなリピーターにつなげる取り組みにつながると思います。今後、どうようなサポートをお考えか、あるいは既にある取り組みについて、お教えください。
青木 ハワイではこれまで、幅広い客層に対して「ハワイに行ってみようよ」というイメージだけの訴えかけだった。これを一歩踏み込んだ、例えば現地の過ごし方を航空会社なりに消費者に提案していきたいと考え、2年前から「スポーツ&スマイル」というキャンペーンを行なっている。体を動かしながら、サイクリングやテニスなど様々なアクティビティがあることを紹介している。日本航空では、バリや沖縄をはじめ様々な観光路線を運航しており、それぞれのデスティネーションに固有の良さがある。各路線同士がお客様の取り合いをするのではなく、ハワイであれば、脈々と続く歴史や文化の良さを消費者に十二分に訴えきれてなかったという反省から、新しいものを見つけるより、既にあるものの良さをしっかり伝えていきたいと考えている。
明日は引き続き3人に、今後の具体的な方策として、様々なアイデアを語っていただきます